ブラックアジア書籍

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◆「よくなかったら、おカネはいらないわ」と言ったリンダ

売春する女性が男を誘う言葉は「彼女は淫乱だ」と世間を錯覚させるに充分なほど直接的かつ刺激的だ。 「ボンボン・グッド。ニャムニャム・グッド」「チキチキ・グッド。サービス・グッド」 タイ・カンボジア・ベトナムではセックスのことを「ボンボン」と言うと通じる。マレーシア・インドネシアでは「チキチキ」という。 いずれにしても「わたしのセックスはいいわよ」というフレーズだ。一種の常套句と化しており、直接的なわ […]

◆白人が好きだと言って、やがてドイツ人と結婚したディラン

断片的にしか思い出せない女性がいる。覚えていることのひとつひとつは鮮明なのだが、虫食いのように途中の記憶が消えていて、全体像がつかめない。 しかし、忘れがたい。 ディランという男性名を持つパッポンで知り合った「女性」は、まさにそんな想い出のひとつだった。断片しか覚えていないが、その断片が強烈なので、その部分だけで永遠に忘れない。 人間の記憶とは本当に不思議なものだ。 何が記憶に残り、何が記憶に残ら […]

アンナは、なぜ「コンドームを使わないで」と言ったのか?

シーリング・ファンをじっと見つめる癖のある、静かな女性と知り合った。彼女の名前はアンナと言った。サバン・ビーチで出会った女性だった。 サバン・ビーチには五つほどゴーゴーバーがある。回遊するサメのように毎日バーを巡り歩いていると、そのうちにどこに行っても知り合いだらけになる。バーのいくつかは外国人オーナーが経営している。 しかし、だからと言って特に何か違うわけでもなく、どこにでもあるごく一般的なゴー […]

ミンドロ島プエルトガレラには、「裏の顔」が存在している

ある年の五月二十三日、乗客七十名を乗せたフェリーが転覆して十二人の乗客が死亡したが、その中には五十七歳の日本人も含まれていた。 彼らはバタンガスを出発して、ミンドロ島のプエルトガレラに向かっていた。 フィリピンのミンドロ島は小さくて美しい島だ。マニラからも近く、半日もあればそこに辿《たど》り着くことができるので、アジアの都会に倦《う》んだらそこでじっと時間をつぶすことができる。 海はそれなりに美し […]

◆まぶたに描いた目。卑猥な踊り。奇妙で予測不能のインド女性

インドをさまようようになると、さまざまな人間に会い、さまざまな光景に遭遇する。ストリート・ピンプ。道に立つ原色の売春女性。彼女たちの子供。彼女たちの客。屋台で働く男。身体の一部が変形した奇形者。麻薬中毒患者。そして性的な倒錯者ヒジュラ……。 その誰もが良くも悪くも非現実的で、滑稽で、圧倒的な存在感がある。 インドではどんな存在があってもおかしくない。だから、とても不思議な化粧をして、まったく予期し […]

ファミリーを持ちたいと願って叶わなかったサバン・ビーチのサリー

サバン・ビーチはとても美しいところで、小高い山に登って遠景を見ると紺碧《こんぺき》の海が広がっていて思わず息を飲む。 私はこの光景が好きで、プエルトガレラにいるときは、たまに山に登ってはひとりで海を見つめていた。心地良い風の中で、ミネラルウォーターをあおって自然を満喫する。 山に飽きるとビーチ沿いを歩く。 サバン・ビーチは野良犬と子供たちが大勢いて、子供たちは船が本土からやってくると泳いで船まで辿 […]

◆彼らに付きまとわれたら最後、地獄の底まで追いかけられる

食うに食えない、命がけの男たちの切羽詰まった血走った目。必死の表情。そして逃げても逃げても追いかけてくるゾンビのような執念深さ。それはストリート・ピンプの姿だ。 ストーカーに追い詰められている女性が世の中にはいる。彼女は、監視され、どこまでも執拗に後を付けられ、プライバシーにまでのぞき込まれる。 そんな女性の精神状態を男も体験したければ、インド・ムンバイのカマティプラに行けばいい。きっと同じ恐怖を […]

レイテ島から来たマイカの寝顔を見つめながら思ったこと

売春地帯『サバン・ビーチ』では何人もの女性と知り合った。 すべてゴーゴーバーの女たちだが、彼女たちはフィリピンのありとあらゆる場所からやってきていて、中には「レイテ島から来た」という女性もいた。 レイテ島と言えば日本では太平洋戦争で日本軍とアメリカ軍が激戦を繰り広げて多くの日本兵が餓死したという「歴史の島」であるが、レイテから来た女性は過去よりも今を生きるのに必死で、過去の戦争についてはほとんど何 […]

◆未成熟な性器が壊されないよう、神に祈るしかないアンジェラ

インド・コルカタの売春窟ソナガシはコルカタ最大の売春地帯であり、エイズや性病の蔓延する汚染地帯でもある。アンジェラという女性が、このソナガシの中ほどの建物の三階に、息を殺すようにひっそりと生きていた。 彼女のいたこの売春窟は、異様な雰囲気が漂っている場所だった。部屋には窓が一切なく、完全に密閉されていた。階段のわきでガスコンロから大量の火を放出させながらひとりの男が何か食べ物を作っている。 薄暗闇 […]

ウィナ。大人の顔に子供の身体がついているように見えた

もし彼女と同じ境遇だったとき、耐えられるだろうか、と考えることがよくある。 ウィナのときもそうだった。来る日も来る日も、夜になると、熱帯のどんよりと湿った空気の中で立ち続け、道ゆく男たちの好奇の目にさらされ続けなければならない。 体調が悪くても関係ない。休ませてくれない。飼い殺しだ。 自分が肉体を張って稼いだ金なのに、オーナーに大半を搾取される。オーナーは全身入れ墨のヤクザで、管理するのは人を人と […]

◆なぜハビーは性行為の進行はこうだと頑なに思い込んだか?

性行為の「一連の動き」を厳格に決めている女性がいたとしたら、あなたはどう思うだろうか。 最初は、騎乗位、次は正常位、動きのスピードはこれくらい、と決められていて、それから外れると殴られる。まるで流れ作業のように進行させられ、それから外れることは絶対に許されない。 それが「唯一絶対の性行為」だと思い込んだ女性がこの世にいる。しかも彼女の中ではそれが「常識」で、とにかくそれ以外の進行は許されないと頑な […]

エドサの出来事。事件を引き起こしそうな男は、確かにいる

フィリピンでは、一年間に必ず五人から六人ほどの日本人が殺される。殺される日本人というのはだいたい傾向がある。 真っ先に上げられる特徴は「日本人の中年男性が被害者」であることだろう。 そして、この被害者というのが普通の日本人ではないことが多い。だいたい三つに分類される。暴力団関係者、ドラッグ関係者、フィリピン女性と関わる者だ。 要するに、夜の世界をうろうろするような男が、フィリピンで殺されたり、事件 […]

ダイアナ。「わたし、とてもいやらしいのよ」と言う女性

久しぶりにアンヘレスの退廃に満ちたバー『トレジャー・アイランド』に行った。中に入ると何人かの顔見知りがいたが、誰にも声をかけず、奥に入ったところの空いている席に適当に座った。 相変わらずこのバーの中は大混雑している。その中にまぎれていると、妙な居心地の良さを感じた。ここはアンヘレスでもっとも堕落した人間が集まる場所であり、だからこそ堕ちてしまった人間には自然と足が向く場所でもある。 ママサンをして […]

◆フォークランド通り。現地の男も恐れる荒くれの女たちの巣

世の中には行ってもいい売春地帯と行ってはいけない売春地帯がある。インド圏の売春地帯は行ってはいけない売春地帯の筆頭である。インドは、どこも地獄だ。 女性の50%はエイズ。場所によっては80%がエイズ。淋病、梅毒、尖圭コンジローマ、パピローマ・ウイルスは蔓延し、人身売買で無理やり連れてこられた女たちがたくさんいる。 部屋にはシャワーもない。プライパシーもない。建物の中にひったくりがいる。そして、ボス […]

黒い肌のルビー。一目惚れ、意気投合、一気呵成に結婚話

まずいことになったとルビーを見てつくづく思った。一番まずいのは、彼女に一目惚れしてしまって、怒濤《どとう》のようなスピードで結婚の話まで進んでしまったことだった。 一目惚れ、意気投合、相思相愛、一気呵成《いっきかせい》の結婚話。おおよそ、あってはならない展開が目の前で進んでいた。 本当は、ここで優柔不断であることが一番問題をこじらすのは分かっている。ルビーから、離れて、二度と会わない選択をしなけれ […]

◆道徳心のない人間ですら怖じ気づく。カリグハット売春地帯

インドはとてもハードできつい国だ。それは貧困のレベルが想像を超えているからだ。他の国で隠されていたものは、インドでは何もかも剥き出しである。 そして、そこで生きる人たちの荒廃は、先進国から来た人間の常識すら破壊してしまう。最初から常識は通用しないし、夢にも思わないような不条理な展開がいきなりやって、絶句したまま口もきけなくなる。 インド・コルカタのカリグハットは、本当にひどかった。広大に広がるスラ […]

◆スコール。闇の中で、水没する恐怖と共に一夜を過ごす季節

アジアの雨期は、身体を壊した人間にはとても辛い。昔は豪雨に当たろうが、泥の中に転がり落ちようが、まったく意に介さなかった。今はそうではない。 傘をさして歩くのもつらいし、道が薄い川のようになって排水溝に落ちていく中を歩くのはもっとつらい。濡れるのも嫌がるようになった。 あれほど雨期の売春地帯の想い出があって、多くの国で雨期を楽しんできたのに、今はスコールがやってくる前の湿った臭いを嗅ぐだけで、もう […]

◆シティ。はじめて堕ちる彼女の心の中には何があるのだろう

はじめての性体験は、誰でも強烈な印象として脳裏に刻まれているはずだ。それは人によって素晴らしかったり、あるいは惨めなものだったりする。 真夜中の退廃した世界で生きる女性は、初体験とは別に、もうひとつの体験をしなければならない。それは、売春ビジネスでの初体験だ。 愛ではなく、金で自分の身体を売る。結婚のあとの性体験は祝福されるが、売春での性体験は社会から批判される。 売春ビジネスに堕ちた女性は、それ […]

◆チカがずっといてくれるのなら、この島で暮らせると思った

インドネシア・リアウ諸島のある島で、港町からずっと外れた山奥の村に沈没したとき、見えて来たのは激しい荒淫の嵐が通り過ぎて、今は静かに生きるだけの年を経た女性だった。 彼女たちは、外国人に対しても温かく包み込んでくれるように接してくれる。 彼女の暮らすリズムがただれた時間をつぶす自分のリズムとよく合っているので、一緒にいると本当に落ち着く。 彼女は軽く沐浴(マンディ)をして髪が濡れたまま売春村の入口 […]

アンヘレスの幽霊が出るホテル。部屋の片隅で震える裸の女

フィリピンのアンヘレスで、モリーンと呼ばれていた女と知り合った。 ダンサーにふさわしく、長身で足の長い女性だった。店の用意した白のカウボーイ・ブーツをはいてステージに立つと、数いるダンサーの中でも彼女は一際目立った。踊り終わった彼女がステージから降りてきたとき、他の女性と話をしていた。 しかし、モリーンは強引に割り込んできて隣に座り、強引なアイ・コンタクトをしてくるのだった。 水着姿の彼女の身体は […]

アンヘレス。米軍基地が発祥の退廃したフィリピン売春地帯

タイとフィリピンは、夜をさまよい歩く男にとって、兄弟国だと言ってもいいくらいよく似ている。 バンコクにはパッポンがあるように、マニラにはパサイがある。バンコクにナナ・プラザがあるように、フィリピンにはエドサ・コンプレックスがある。そして、バンコクにテルメがあるように、マニラにはLAカフェがある。 また、タイには米軍が作り上げた歓楽街パタヤがあるが、フィリピンに目を向けると、そっくり同じ雰囲気の街が […]

大陸から来たピァオ。華人の目を釘付けにする熱い身体

ときどき、正体がつかめない女性が売春地帯にいる。シンガポールの売春地帯ゲイランにいた中国大陸から来たひとりの女性は、まさに正体のつかめない得体の知れないものを持っていた。 1キロ先でも男が全員振り返るような派手なファッション。大きな胸。不思議なセックス・テクニック。 言葉すら通じないのに、ポン引きを介さないで売春ビジネスに一匹狼で飛び込める度胸。その上、詐欺のテクニックも知っているが、詐欺師ではな […]

◆鉄格子の奥の売春宿。突如として、女性を殴るオーナー

インド・ムンバイの売春地帯では売春宿のことをときどき、ケージ(鳥かご)と呼ぶ人もいる。女性たちがそこに閉じ込められていて、鉄格子で締め切られ、入口には用心棒が立って逃げられないようになっている。 なぜ逃げられないようにしているのか。それは、女性たちを人身売買で連れてきているからである。言うことを聞かない女性を、閉じ込め、密室の中で虐待するのである。 牙を抜かれ、女たちが運命に押しつぶされて逃げるこ […]

LAカフェ。男は、売春地帯にいる女性の80%が見えない

マニラ・エルミタ地区。ここは、かつて隆盛を誇った歓楽街、マビニ通りとデル・ピラール通りを擁していたところだ。 しかし、一九九二年にマニラ市長に当選したアルフレッド・リムが、歓楽街の浄化政策を開始、有無を言わせぬ強引さで風俗店を閉鎖させた。リム市長は脅迫や抗議をまったく意に介さず、意固地なまでの厳格さでマビニ通りを「大掃除」していった。 そして、風俗店とドラッグの売人《ディーラー》を荒っぽく叩き出し […]

フィリピンへの道。2005年3月15日、絆が断ち切られていた

「フィリピンの女というのは、ひまわりだね」と私に言った男がいる。 日本人女性と違って、ひまわりのように|燦々《さんさん》と明るいという意味だ。いつも太陽を向いて明るく大きな花をつけているような、そんなイメージがするフィリピン女性を愛する日本人は多い。 底抜けの明るさ、自由奔放な振る舞い、信心深く家族思いな性格……。 フィリピンは、一九九〇年代にフィリピンパブが勃興する前から日本人の男たちとの関係も […]

◆現地妻。シンガポーリアンの現地妻だったヨシという名の女性

「現地妻」という女性の生き方がある。男は本土で妻や子供を持っている。それを分かった上で、男が現地に来たときだけ「妻」になる。 同じ国で、同じ国籍同士であれば、それは「愛人」なのだが、国が違えば「現地妻」になる。海外出張している日本人の男も、結構な数の男が「現地妻」を持っている。 タイでもインドネシアでも中国でもマレーシアでも、どこでもそうだ。一流企業の男も、中小企業の男も関係ない。みんな妻には素知 […]

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