ときどき、正体がつかめない女性が売春地帯にいる。シンガポールの売春地帯ゲイランにいた中国大陸から来たひとりの女性は、まさに正体のつかめない得体の知れないものを持っていた。
1キロ先でも男が全員振り返るような派手なファッション。大きな胸。不思議なセックス・テクニック。
言葉すら通じないのに、ポン引きを介さないで売春ビジネスに一匹狼で飛び込める度胸。その上、詐欺のテクニックも知っているが、詐欺師ではない女性……。
素人ではないが、かと言って売春ビジネスで生きてきた女性でもない。
こんな、熱く危ういものを感じさせる女性がいて、いまだに正体が分からないまま、鮮烈に彼女の記憶が残っている。まさに「つむじ風」のような女性だった。
シンガポールが誇る売春地帯ゲイランが他の地域の売春地帯と違うのは、そこに立つ女たちの人種が多岐に渡っているということだろう。
タイ人の売春女性、インドネシア人の売春女性、スリランカ人の売春女性、マレー人の売春女性が一堂に介してそれぞれの区域に立つ様は、なるほどこの国が多民族国家と言われるだけのことはあると……
(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア』。本編に収録できなかった「はぐれコンテンツ」を掲載。電子書籍にて全文をお読み下さい)
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