「今、町田の南口側が再開発もあって広い土地が更地になっています。もう、傾城さんが書いている『町田青線地帯/グッドナイト・アイリーン』の雰囲気はまったくありません」
このようなメールをもらった。何でも、以前から建物の取り壊しなどがずっと続いていて、あの南口ラブホテル密集地区のいかがわしさも半減してしまったのだという。ラブホテルも取り壊されてしまったのか尋ねると、「まだありますが、もう立ちんぼもいないし、だめになりつつあります」ということだった。
それを聞いたのは、2024年3月頃のはじめ頃だったのだが、ずっと気になっていたので、時間が空いたらどこかでふたたび町田に行ってみようと思っていた。今日、やっといろんな仕事が落ち着いたし、天気もいいので、久々に町田を訪れた。
ちょうどゴールデンウィークのまっただ中でもあり、街は満員電車並みに人がいたのだが、私は彼らには目もくれないですぐにJR南口を降りた。その瞬間、私の知っている「いつもの町田」になった。
南口はラブホテル街のある方向で、北口がショッピング街になって多くの人を惹きつけているのに比べて、はっきりいって見捨てられているような様相となっている。南口からは遠くにラブホテルの看板も見えてそれほど何かが変わったようには見えなかった。
というよりも、まったく以前と何も変わっていないように思えた。
南口から少し歩いて左に折れると、いつもの鹿島橋が見えてきた。真っ赤な外壁のラブホテル『アイリーン・ドナン』もそのままひっそりと残っている。この日は、このホテルで何かあったらしくて、ホテルの入口に警察官が出入りしており、橋のわきに救急車が一台停められていた。
事件であれば、もっと警察官も緊迫しているし、パトカーも来ているのだが、救急車一台だけなので、利用客の誰かが気分が悪くなって救急車を呼んだ感じなのだろう。
そういうのを見つめながら、鹿島橋を渡るとホテル・ウィズも、ホテル・ミンクも、ホテル・リングマイベルも、ホテル・ワンドゥも、そのまま残されていた。しかし……。