◆未成熟な性器が壊されないよう、神に祈るしかないアンジェラ

◆未成熟な性器が壊されないよう、神に祈るしかないアンジェラ

インド・コルカタの売春窟ソナガシはコルカタ最大の売春地帯であり、エイズや性病の蔓延する汚染地帯でもある。アンジェラという女性が、このソナガシの中ほどの建物の三階に、息を殺すようにひっそりと生きていた。

彼女のいたこの売春窟は、異様な雰囲気が漂っている場所だった。部屋には窓が一切なく、完全に密閉されていた。階段のわきでガスコンロから大量の火を放出させながらひとりの男が何か食べ物を作っている。

薄暗闇の中で、めらめらと燃える火が悪魔的で、階段を上がりながら奥へ奥へと入り込むと、もしかしたらもう二度とここから出られないのではないかという心配に駆られた。

そんな空間の中で、得体の知れない男女が薄暗い室内におびただしく座り込んでいる。女たちは影の中に佇んでいて、美しいというよりも恐ろしかった。男たちは売春窟に入り込む客をじっと凝視して身動きすらしない。

三階まで上がると、そこは急に広い空間になった。

家具は何もない。古くなり、ところどころが歯抜けになったフローリングの床、コンクリートが剥き出しになった天井、蝋燭の火、床に直に座り込んでじっとしている男たちの姿。

そんなものが骨董品のように空間を占拠している。太い柱が目立ち、その柱が落とす濃い影が、本当に気味が悪い。

奥では男とふざけあっている若い女性がいたが、彼女の時おり立てる笑い声は甲高く耳障りだった。しばらく立っていると、ひとりのマフィア風の男が何も言わずに立ち上がり、奥から女たちを10人ほど連れて来た。

全体が薄暗いので、女たちはみんなくすんでいるような印象がある。ネパーリーも何人かいたが、中心はインド人だった。案の定、全員が申し合わせたかのように、ふてくされた顔をして立っている。

インドでは女性が媚びを売らない売春宿も多い。ここもそうだった。

そんな中で、ひとりの小柄で華奢な身体をした女性が、男の目を避けるように立っているのに気がついた……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インド・バングラデシュ編』にて、全文をお読み下さい)

『ブラックアジア・インド・バングラデシュ編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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