◆「よくなかったら、おカネはいらないわ」と言ったリンダ

◆「よくなかったら、おカネはいらないわ」と言ったリンダ

売春する女性が男を誘う言葉は「彼女は淫乱だ」と世間を錯覚させるに充分なほど直接的かつ刺激的だ。

「ボンボン・グッド。ニャムニャム・グッド」
「チキチキ・グッド。サービス・グッド」

タイ・カンボジア・ベトナムではセックスのことを「ボンボン」と言うと通じる。マレーシア・インドネシアでは「チキチキ」という。

いずれにしても「わたしのセックスはいいわよ」というフレーズだ。一種の常套句と化しており、直接的なわりにはあまり意味がない。

しかし、自信がなければ到底口に出せない誘いの言葉をつぶやく女性がいた。

“No good, No money!”
(よくなかったら、おカネはいらないわ)

インドネシア・カリムン島の売春村で、彼女は男を待ち構えるようにして立っていた。そして、そう言ったのだった。

“No good, No money!”
(よくなかったら、おカネはいらないわ)

それはスタイルに自信があるだけではなく、セックスにも自信があることを意味していた。

東南アジアの売春地帯を放浪していると、「ノー○○、ノー○○」というセンテンスを聞くことがよくある。

「ノー・コンドーム、ノー・セックス」

タイ・パッポンの女性がよく使う言葉だし、シンガポールでも聞いた。「コンドームをしないなら、セックスもしないわよ」ということだ。

有名なのは”No Money, No Honey”(ノー・マネー、ノー・ハネー)だろう。単語は一文字違うだけであり、しかも韻を踏んでいる。

あまりのインパクトに売春地帯をレポートした本の題名にも、このセンテンスを使ったジャーナリストもいるほどだ。しかもふたりいて、一方はシンガポールを扱い、一方はインドネシアを扱った別々の本である。

「ノーマネー・ノーハネー」というのは、直訳すれば「お金がないなら、蜜もない」となる。意訳すれば「お金の切れ目が縁の切れ目」という意味になる。

売春に明け暮れる女性の心情を、これほど端的に現した言葉も珍しい。

しかし、”No good, No money!”(よくなかったら、おカネはいらないわ)と言った女性は、後にも先にもひとりしかいない。本当に驚いた…

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インドネシア編』にて、全文をお読み下さい)

ブラックアジア・インドネシア編
『ブラックアジア・インドネシア編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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