ブラックアジア書籍

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カンボジアの置屋。「置屋」とは一体どういう場所なのか?

カンボジア編昔、日本では売春宿の建物を「置屋(おきや)」と呼んでいた。現在では、もう置屋という言葉をあまり聞かなくなってしまったが、それは置屋の存在そのものが目につかなくなってしまったからである。 しかし、まだ経済が発展途上にある国では置屋が健在だ。タイでは地方に行けばソンと呼ばれる置屋が必ずある。 フィリピンでもカーサと呼ばれる置屋が溢れているし、インドネシアもインドも置屋があちこちに点在してい […]

◆冷気茶室。男の天国、女の地獄と呼ばれた、バンコクの魔窟

タイの首都バンコクにあるヤワラー(Yaowarat)はチャイナタウンである。このエリアは「魔窟《まくつ》」と呼ばれるに相応しい場所だ。 迷路のように入り組んだ道にひしめく細々とした店、古ぼけて骨董品のようになった建物。金行・食堂・ペット屋・雑貨屋・米屋・葬儀屋が乱雑に、脈絡無く店を開いており、それぞれが強烈なニオイを発している場所……。 ここには「旅社」と呼ばれる安宿も多く、昔は場末の売春宿も林立 […]

◆セックス・マシーン。バンドン生まれのセックス・マシーン

彼女の名前はヘリナと言った。インドネシア・ジャワ人である。まるで優雅な黒豹のようだった。 軽く波打ったショートカット・ヘアはその野性的な表情によく似合っていた。無駄な贅肉など一切ついていないスリムな身体にぴっちりと張りついた黒の衣服は彼女の美しさを際立たせていた。 インドネシア・ビンタン島の、カラオケ屋を模した売春宿「サンライズ」にぶらりと入って、青やピンクに灯された蛍光灯の下に15人ほどの女性た […]

サイバーン。あなたが好き。だからこの写真をあなたに……

カンボジア編シアヌークヴィルのプントッマイで、ひとりの陽気な娘と会った。 若々しく弾けるような肌に、顔中が口になってしまいそうな大きなビッグ・スマイル、そして猫の目の色のようにころころと変わる表情としぐさが忘れられない。彼女の名はサイバーンと言った。 夜中10時過ぎ、ピンクの街灯が灯った売春ストリートを、いつものように、ふらふらと歩いていた。置屋の前を歩くたびに女性たちが喚声を上げて声をかけてくる […]

バイバイ・トゥ。置き去りにしてきた彼女を思って慟哭する

カンボジア編カンボジアには雨期と乾期がある。二月は乾期だ。ちょうど涼季から暑季に切り替わり、身が焦がれるような灼熱の太陽が大地を照らす。 カンボジアの大地を覆っている紅土は、猛スピードを上げて突っ走る車やモトバイクに煽られて舞い散り、白い服はすぐに茶色く染まってしまう。 道路わきに生える草木は茶色の粉塵が積もって、その重みで葉は垂れ下がっている。ほとんどの葉が紅土の茶に塗りつぶされているので、一見 […]

◆売春村のアニー。熱帯の匂いを濃密に漂わせた、売春村の夜

インドネシア・ジャカルタから遠く離れた離島に降り立った。そして、真夜中になると島の中心部にモトバイクを飛ばしてもらった。一本のどこまでも続く舗装道路をバイクは順調に走る。他に走っているバイクなど一台もない。 「真夜中は危険だ」とバイクの運転手は顔をしかめるのだが、真夜中にさまようハイエナはこの時間が本番だ。危険だと言われても困ってしまう。危険を承知で夜の街に出かけ、強盗に襲われたら、それまでと観念 […]

ゲイラン・ストリート。シンガポール政府が用意した罪の街

アジアの貿易国家シンガポールは、リー・クワンユー元首相が作り出した熱帯の実験国家だ。 この卓越した政治家は、マレーシアから独立した後、多様な国民をまとめるために、あるいは国民の大多数を占める中国人の中華色を薄めるために英語を公用語として採用した。 ハイテク化を進め、クリーン&グリーン政策で、おおよそ熱帯の国とは思えないほど清潔な環境を作り上げた。 しかし、逆にそれが国民の極端な監視を生み出した。 […]

クレイジー・ホース。オーチャード・タワーの女たちと英語

ゲイラン・ストリートがシンガポールにおける置屋街の代表だとしたら、オーチャード・タワーは売春ディスコ群の代表になる。そして中でもクレイジー・ホースは現在のオーチャード・タワーのディスコの中ではダントツの人気を得ている。 真夜中にオーチャード・タワーへ出入りする女性たちは99パーセント売春女性たちだ。当然、クレイジー・ホースに出入りする女性もまたそうだ。 店内には英語が飛び交い、彼女たちは英語の渦の […]

リシータ。ゲイランに立っていた魅惑的なスリランカの女性

ゲイラン・ストリートのLor20を入ると、すぐに右側に折れる小路がある。食堂「三友斉」の裏に当たり、夜中に行くと外灯のない小路は闇に吸い込まれるように暗い。 小路に入る入口も奥もインド系の男たちで溢れ、人種の違うアジア系が入って行くと全員がよそ者を見るような目つきでこちらを注視する。 アジア系が主のゲイランでもこの小路だけはインド系が多数を占めており、それ以外の人間が「よそ者」になるのだ。 構わず […]

◆パッポンのマイ。なぜ自分はここまで堕ちたのかと、涙した

二十歳《はたち》の頃、何気なくタイへ旅行に行った。はじめての海外旅行でひとり旅だった。見るもの聞くものが何もかも珍しく、旅に有頂天になった。 南国の太陽や文化や食事は慣れれば慣れるほど心地良いものとなってきた。最初は健全な旅行をしていたが、ある日バンコクのパッポンに足を踏み入れた。パッポンはアジアでもっとも有名な歓楽街である。 タイに行ったのなら、ここを訪れないと片手落ちだと思ったのだ。ただ半裸で […]

◆饒舌でドラマチックなノイ。彼女は涙を流してそれを話した

ノイという女性がバンコクのオープンバーがいた。 スクンビットのナナ駅からアソークに歩いていく途中のオープンバーにいた小柄な女性だった。彼女は今まで知り合ったタイ女性の中で、もっとも英語が流暢だと言っても過言ではないほど素晴らしい英語を話した。 フィリピン女性ならこれくらいの英語を話してもおかしくないが、彼女は正真正銘のタイ女性だ。しかも、その英語は独学で勉強した英語だと言った。 タイ訛りは感じさせ […]

マイはベトナムに帰った。バスルームで頭を振っていたマイ

ベトナム語で「マイ」は「梅」という意味になる。ベトナム人の女の子でマイという名前をつけられる娘は多いようで、ベトナム社会に関われば、あちこちで「マイ」と知り合うはずだ。 印象深かったマイは2000年当時スワイパーの15番館に在籍していた娘だ。彼女の優しさが好きだった。 マイと知り合ったのがいつだったのか、あまり覚えていない。最初はスワイパーの多くの女性に混じっていて目にとまらなかったからだ。 いつ […]

◆キル・ベイビー 。彼女は妊娠と性病とエイズの恐怖に泣いた

悲劇は突然やってくる。前触れなどまったくない。この日もそうだった。 まだ堕落の街が堕落を剥き出しにしていた一九九九年頃、健在だったライブ・バーに寄ってみようと考えた。かつてはライブ・バーも、その頃は行かなくなっていた。しかしどういうわけか、その日は無性に寄ってみたくなった。 パッポンのハードコアと言えば、二階のライブ・バーになる。一階のゴーゴーバーが決してバタフライ(ビキニの下)を脱ぐことはない。 […]

スワイパー。カンボジア人の憎悪の中で存続した闇の売春村

カンボジア編プノンペンから延々と11キロ、国道5号線をウドン方面に北上する。 ムスリム(イスラム教徒)の寺院を左手に、クメール人の高床式の粗末な家を右手に見ながら、さらに奥へ奥へと突き進んで行くと、今はもう古びて色あせてしまった「コンドームを使いましょう」という看板が見える。 それを左折すると、そこは「スワイパー」と呼ばれる村である。 ここは「不浄の聖地」だ。地獄に堕ちるのは避けられそうにないほど […]

桜花(SAKURA)。何もできない素人女性が見せてくれた決意

カンボジア編セックスに言葉は要らない。交渉も指で数字を差し示したら、大抵は通じてしまう。どこの国でもそうだ。 そして、どこを巡っても、特に現地の言葉を真剣に覚える必要はさらさらない。そのほとんどは少々の英語のみで場を乗り切ることができている。 言葉など道具のひとつにしか過ぎないから、適当に使えればいいだけで、必要な言葉は自然に覚えるし、それ以上のものは現地に根を貼りたい人間だけが覚えればいい。 夜 […]

63ストリートの妖怪。闇の中で、意味もなく笑い続ける女性

カンボジア編真夜中のプノンペン。売春地帯63ストリートを外れてふらふらと闇夜の中を歩いていると、薄暗がりからひとりの男がゆっくりとやってきて腕をつかんできた。 振り返ると、男は無表情なまま”Bombom?”(セックスか?)と聞いてくる。 返事しないで男の背後の置屋を眺めた。黒いフィルターを貼ったガラス戸が入口になっている。 このあたりでは有名な「來來」などと同じような店構え […]

チャイナタウンの楊(ヤン)。観光客を装いながら夜の街に

2009年5月。夕方になるとバンコクは激しいにわか雨に見舞われたが、夜にはすっかり上がっていた。ここのところずっとタイ料理ばかり食べ続けていたので、久しぶりにヤワラー地区の中華料理を食べたくなった。 やはり、チャイナタウンで食べる中華料理は競争が激しいせいか、どこで食べても絶品なのは誰でも知っている。だから、近くの中華料理屋ではなく、ヤワラーに行きたかった。 もっとも、食べたい中華料理と言っても排 […]

アプサラを踊る娘。貧困地区に棲む天使(アプサラ)の笑み

カンボジア編カンボジアの国王はノロドム・シアヌークである。彼はかつて絶対的な主権を握り、王宮で優雅な生活に明け暮れていた。 その王宮ではカンボジアの恵みを讃えるためのダンスを国王に見せるために選りすぐりの美しい娘たちが寝泊まりし、練習に明け暮れていた。 そのダンスと言うのが、クメール・ダンスである。ゆったりとした音楽に合わせて女性らしい優雅な動きでアプサラ(天女)が舞う姿は素晴らしい。誰もが、反り […]

◆テルメ。バンコクの援助交際バーに、売春女性が一堂に集う

バンコクにはコーヒーショップと言われる場所がある。 グレース・ホテルのコーヒーショップは昔から有名だったが、最も隆盛を誇っているのは『テルメ(Thermae Coffee House)』である。 あまりにも売春する女性たちが集まり過ぎて、タイのテレビでも「売春の巣窟」として取り上げられて世論の顰蹙《ひんしゅく》を買ったこともあった。 はじめてバンコク・スクンビット通りにある『テルメ』に足を運んだの […]

プノンペン市内にあったスラム売春地帯「ブディン」の消滅

カンボジア編夜、プノンペンの独立記念塔を川沿いに向かっていくと、明るくショーアップされた観覧車やメリーゴーランドが目に入る。その遊園地の手前を右に入ると、そこはブディン地区になる。 川沿いには不法居住者が住まうスラム街が広がっているが、ソティオロス通りの一帯は置屋が並んでいた。賑やかな遊園地のところが光だとすると、こちらは影の部分だ。 明日の見えない生活に困窮した男たち、女目当てにライフルを持った […]

娼婦ナナ。戦争を始めるのは男たち、代償を払うのは女たち

タイ・バンコク。熱帯の夜の喧噪の街をゆっくりと歩いていると、真っ正面から黒いボディ・コンシャスに身を包んだ白人女性が近づいて来た。 売春ビジネスに関わる女独特の視線が絡みついてきた。それに応えると、女は流し目を投げて”How are you ?”(ご機嫌はいかが?)とていねいな口調で尋ねた。 肌はきれいなホワイト、彫りの深い顔立ち、ふんわりと仕上げた肩までのショートカットは […]

カンボジア警察。目の前で、ベトナム娘を殴り始めた警察官

UNTAC(カンボジア暫定統治機構)時代、外国からやって来た国連軍兵士たちの日給は130ドルだった。 命を張って戦って1日に1万6,000円。これが高いか安いかは人によって判断の分かれるところだ。 ではUNTAC時代のカンボジア警察官の日給はいくらだったのだろうか。カンボジア警察は月給制なので25日勤務だとして当時の月給9ドルを割ってみる。 すると一日わずか44円という数字が出てくる。同じような仕 […]

セックス・コレクション。自分を抱いた男を記録していく女

セックスを動画や写真で記録するのが好きな男たちの存在はもう当たり前のように知られていて、そんなことは改めて言うようなことではない。しかし今はすでにその時代を経て、数年も前から女たちがセックスを記録し始めていることに気づいている人はいるだろうか。 男たちが自分の抱いた女を想い出に残したいのであれば、女たちもまた自分の売春相手を想い出に残したいと思っても不思議ではない。 いよいよ数年も前からそういう時 […]

ブディンのネイ。引き裂かれるように別れるのが怖かった

プノンペン北部トゥールコック地区の70ストリートに久しぶりに降り立ったとき、そこがかつて知っている70ストリートではないことを知った。いや、それはここに戻る前からいろんな人たちに聞いていて知っていた。今、自分の目でそれを確認したのだった。 あの舗装されていない砂塵の舞い散る荒れた道と、その両脇に建ち並んだバラック小屋の荒んだ光景、そして数えきれないほどの若い娼婦たち……。嬌声や、怒声が飛び交ってい […]

◆ムカデの女。彼女を抱く男は、ムカデのような存在なのか

バンコクは数日ほど灼熱の日々が続いていたが、この日は違った。どんよりと曇っていて遠くに黒く低い雲が見えて風が冷たかった。泥棒よけの鉄柵の入ったホテルの部屋から外を見つめて、雨が来ると思って待っていたが、いつまで経ってもそれは降ってこなかった。 最近はいつもそうだが、この日はいつにも増して偏頭痛が執拗に頭を締めつけていて気分が悪かった。頭痛薬は飲んでいるが、もう薬自体の耐性ができてしまっているのかま […]

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