63ストリートの妖怪。闇の中で、意味もなく笑い続ける女性

63ストリートの妖怪。闇の中で、意味もなく笑い続ける女性

カンボジア編
真夜中のプノンペン。売春地帯63ストリートを外れてふらふらと闇夜の中を歩いていると、薄暗がりからひとりの男がゆっくりとやってきて腕をつかんできた。

振り返ると、男は無表情なまま”Bombom?”(セックスか?)と聞いてくる。 返事しないで男の背後の置屋を眺めた。黒いフィルターを貼ったガラス戸が入口になっている。

このあたりでは有名な「來來」などと同じような店構えだ。男はにこりともせず、ただじっとこちらを凝視していた。

好奇心に駆られて男にうなずいて見せると、ガラス戸を開けた男に中に押し込まれた。

この置屋は雛壇がなかった。ガレージのような、殺風景なコンクリート作りの壁がそのまま剥き出しになっており、入口の左側に安っぽいイスが置かれて十数人の娘たちが座っていた。

娘たちの目が一斉にこちらを見つめる。

照明は薄暗かった。どの娘たちも顔が深い陰影になって病的に見える。顔つきや浅黒い肌は、ここの娘たちがクメール娘であることを物語っていた。

63ストリートの置屋はほとんどベトナム娘だが、63ストリートから一歩ずれると今度はクメール置屋が多くなる。ご多分に漏れず、この置屋もそのようだった。

檻に入ったライオンのように部屋を行ったり来たりしながら女性たちを品定めした。目が合うと笑いかける娘もいれば目をそらして無視する娘もいる。目を見れば彼女を指名していいかどうか判断できる。

積極的に目を合わせて笑いかけてくる娘は……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア カンボジア編』にて、全文をお読み下さい)

ブラックアジア・カンボジア編
『ブラックアジア・カンボジア編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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