◆売春村のアニー。熱帯の匂いを濃密に漂わせた、売春村の夜

◆売春村のアニー。熱帯の匂いを濃密に漂わせた、売春村の夜

インドネシア・ジャカルタから遠く離れた離島に降り立った。そして、真夜中になると島の中心部にモトバイクを飛ばしてもらった。一本のどこまでも続く舗装道路をバイクは順調に走る。他に走っているバイクなど一台もない。

「真夜中は危険だ」とバイクの運転手は顔をしかめるのだが、真夜中にさまようハイエナはこの時間が本番だ。危険だと言われても困ってしまう。危険を承知で夜の街に出かけ、強盗に襲われたら、それまでと観念するしかない。

あまり治安の良いとは言えないカンボジアやインドネシアで夜中になると無防備に街や山を徘徊して、今まで強盗にやられなかったのは運が良かっただけだ。そのうち撃ち殺されても文句は言えない。 生命を軽んじているというのは感じる。

バイクの運転手はピストルを持っていて「お前も銃を持つか?」と言われたが首を振った。銃を持ったところで、銃撃戦に遭遇して生き残る自信などあるはずもない。強盗に襲われたら命乞いするが、駄目ならひと思いに射殺された方がすっきりしていい。

ジャングルを切り開いた山道は静かで不気味だ。Tシャツ一枚では少々肌寒い。上に何か羽織れば良かったと後悔するが、バイクを降りるとちょうど良いのでいつも忘れてしまう。

30分ほど山道を走ったバイクはやがてスピードを緩めて左側に続く舗装されていないわき道を行く。

道はでこぼこでスコールの水を吸った紅土でぬかるんでいる。この島の紅土はカンボジアの紅土よりもさらに鮮明な赤である。同じ紅土でも種類が違うのだろうか。

泥道を5分ほど走ると、やがて一軒のブロックを積み上げて壁を作り、トタンとニッパ椰子で屋根を作った見張り台が見えてきた。ここで通行料を払って道を行くと、急に開けて道の両側に煉瓦とコンクリートで作られた平屋建ての建物が見える。

建物の前には木で作られた簡易ベンチがあって、若い女たちが思い思いの格好で涼を求めて座っていた。真夜中の零時も過ぎると、やって来る男などほとんどいない。だからほとんどの女たちが意味深な笑顔を浮かべながら一斉にこちらを凝視した。

ここにある数十軒の建物はすべて売春宿である。そしてここにいる女たちはすべて売春女性だ。

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インドネシア編』にて、全文をお読み下さい)

ブラックアジア・インドネシア編
『ブラックアジア・インドネシア編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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