娼婦ナナ。戦争を始めるのは男たち、代償を払うのは女たち

タイ・バンコク。熱帯の夜の喧噪の街をゆっくりと歩いていると、真っ正面から黒いボディ・コンシャスに身を包んだ白人女性が近づいて来た。

売春ビジネスに関わる女独特の視線が絡みついてきた。それに応えると、女は流し目を投げて”How are you ?”(ご機嫌はいかが?)とていねいな口調で尋ねた。

肌はきれいなホワイト、彫りの深い顔立ち、ふんわりと仕上げた肩までのショートカットは黒髪。まっすぐこちらを見つめるその瞳の色は透明度の高い灰色と言えばいいのか、茶色を限りなく灰色にした色と言えばいいのか、日本人には形容しにくい色をしている。

“I”m Fine.”(気分はいいよ)と伝え、さらに”Where are you come from?”(どこから来たの?)と尋ねてみた。女はむっちりとした胸を見せつけるような姿勢をしながら簡潔に答える。

“Moscow”(モスクワよ)

この女性こそがモスクワからやってきたロシア女性で、探していた女性のようだった。

“Bombom mai?”(セックスですか?)

白人女性がタイ語のスラングを使うことに軽い違和感を感じながらもうなずく。すると彼女は手を回してきて「あなたのホテルへ行きましょう」と言った……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア』。本編に収録できなかった「はぐれコンテンツ」を掲載。電子書籍にて全文をお読み下さい)

ブラックアジア外伝1
『ブラックアジア外伝1 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

コメント

  1. ガウ より:

    傾城さんの現役感がビンビン伝わってきます。

    情報に基づいた記事は客観性があり、事実把握することができますが、実感が伴いません。要は他人事、対岸の火事です。

    しかし、強烈な実体験とその蓄積された経験値に基づいた記事は実感が伴い、まるで自己体験のような錯覚さえ覚えます。

    売春宿に落とされ、搾取され続けるしかない女性達の絶望感がこれ程伝わった記事は、初めてです。

    いつ頃の話でしょうか。

    • 鈴木傾城 より:

      ガウさん

      ナナと出会ったのは2001年頃の話です。ちょうどその頃は、アジア通貨危機からロシアの債務不履行でロシアが危機に直面していた時です。ロシアが最も危機にあった頃でした。アジアにも売られてきたロシア女性がたくさんいました。日本にもロシアン・パブというのがあったはずです。プーチンが登場したのものこの頃なのですが、考えてみればプーチンも長いですね。

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