ゲイラン・ストリートのLor20を入ると、すぐに右側に折れる小路がある。食堂「三友斉」の裏に当たり、夜中に行くと外灯のない小路は闇に吸い込まれるように暗い。
小路に入る入口も奥もインド系の男たちで溢れ、人種の違うアジア系が入って行くと全員がよそ者を見るような目つきでこちらを注視する。
アジア系が主のゲイランでもこの小路だけはインド系が多数を占めており、それ以外の人間が「よそ者」になるのだ。
構わず小路の奥へと入って行くと、サリーを着た女たちが思い思いの格好で立ったり座ったりして客を待っている。スリランカから来た売春婦たちだった。
スリランカは人種としては完全なるインド系(タミル人、シンハラ人)であり、シンガポール在住のインド人や出稼ぎに来たインド人が彼女たちの客となる。
インド系社会では豊満な肉体が美の象徴とされているので、女性たちは美しく見られるために太ろうと努力する。
アジアや欧米諸国では痩せた女性が美の象徴になっているので、まったく反対である。その美的感覚のズレは決定的だ。
もちろん日本では、痩せた女性が美しいという文化の中にある。それは無意識に培われた意識だ。だから、あまりに肥満した女性には気後れしてしまう。
今までインド系の女性と関係がなかったのも、ひとつにはインド女性の美の概念が大きくズレていることが挙げられる。
しかし、そんなインド系の女性たちを「太っているから美しくない」とは思ったことはない。むしろその逆である。インド=アーリア系の女性の美しさは、アジア系の美しさとはまったく次元の違うものがある。
彼女たちの美しさには一種の神々しさが漂う。彫りの深い顔立ち、驚くほど長いまつげ、長い手足、盛り上がった臀部などは……
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