カンボジア編
カンボジアには雨期と乾期がある。二月は乾期だ。ちょうど涼季から暑季に切り替わり、身が焦がれるような灼熱の太陽が大地を照らす。
カンボジアの大地を覆っている紅土は、猛スピードを上げて突っ走る車やモトバイクに煽られて舞い散り、白い服はすぐに茶色く染まってしまう。
道路わきに生える草木は茶色の粉塵が積もって、その重みで葉は垂れ下がっている。ほとんどの葉が紅土の茶に塗りつぶされているので、一見すると有毒ガスか何かで枯れてしまったかのようだ。
モンシロチョウやモンキチョウが蓮畑の上を舞っているのが遠くに見える。熱帯の気だるい空気の中をチョウチョがのんびり飛んで行くのを見ていると、まだ子供だった頃のことを思い出して懐かしい気持ちで胸がいっぱいになった。 二月のカンボジアはもっとも好きな季節だ。
朝早くバンコクのドンムアン空港からプロペラ機に乗ってカンボジアに降り立つと、モニウォン沿い(四二五ストリート)にある中華料理屋「萬里香小吃店(VANLY SIANG RESTAURANT)」で濃密な味がする焼きそばを食べ、最後にソワイヤービンと言う乳白色の豆乳をゆっくりと飲む。
カンボジアに来ると、この店に行ってモニウォン通りの喧噪を眺めることが多くなった。表の喧噪や中国人たちの威勢の良い会話にカンボジアに戻ってきた喜びを感じるのだった。
カンボジアの熱気に時間をかけて慣れると、おもむろに立ち上がって近くのモトバイクを呼ぶ。そして「トゥールコック」と告げた。
トゥールコック……。外国人旅行者が「トゥールコック」と言えば、モトバイクの運転手は黙って70ストリートに連れて行ってくれる。
かつてカンボジア最大の売春地帯だった70ストリートは、廃れたと言えどもいまだ売春窟の代表だ。現地の男たちはごく当たり前のように70ストリートに通っている。
(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア カンボジア編』にて、全文をお読み下さい)
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