チャイナタウンの楊(ヤン)。観光客を装いながら夜の街に

チャイナタウンの楊(ヤン)。観光客を装いながら夜の街に

2009年5月。夕方になるとバンコクは激しいにわか雨に見舞われたが、夜にはすっかり上がっていた。ここのところずっとタイ料理ばかり食べ続けていたので、久しぶりにヤワラー地区の中華料理を食べたくなった。

やはり、チャイナタウンで食べる中華料理は競争が激しいせいか、どこで食べても絶品なのは誰でも知っている。だから、近くの中華料理屋ではなく、ヤワラーに行きたかった。

もっとも、食べたい中華料理と言っても排骨麺やいくつかの点心くらいだ。フカヒレやツバメの巣のような、物珍しく凝ったものは欲しくない。

タクシーでチャイナタウンまで向かったが、夕方のチャイナタウンは車と人で大混雑していた。街の一角でタクシーを降りると、すぐにこの街独特の食材で彩られた匂いがして楽しかった。

北京ダック、ブタの顔、サメのヒレ、エビ、カニ、魚、牡蠣、様々な野菜に果物、そして焼き栗に、とうがらしやニンニクの匂いを発散させた屋台や店頭を練り歩く。

フカヒレは珍重な食材だとは聞くが、ここでは小300バーツ、中500バーツ、大600バーツと普通に売っている。こんなものを持ち帰って家でフカヒレスープを作る家庭があるのだろうか。

狭い路地のマーケットに入った。どう食べるのか想像もつかないような食材を見たりしていると、あっという間に時間が経ってしまう。この日もそうやって街を巡っている間に時間をつぶしてしまった。そのあとゆっくり食事を取って、懐かしい味のする羅漢果のジュースを飲む。

そして戻ろうと思ったとき、ふとヤワラー・ソイ2の狭い路地にあるMP(マッサージ・パーラー)、南星大浴室の周辺のことが頭によぎった。

MPには用がない。その周辺に立つ女たちに興味があった。実は1980年代後半、このあたりは猛烈に怪しげな売春地帯だった……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア』。本編に収録できなかった「はぐれコンテンツ」を掲載。電子書籍にて全文をお読み下さい)

ブラックアジア外伝1
『ブラックアジア外伝1 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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