ブラックアジア書籍

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◆理不尽に金を失う夜の街で、スリや強盗よりも危険なのは?

バンコクのソイ・カウボーイに、バカラ( Baccara )という店がある。あまり好きではないが、たまに趣向を変えようと数年ぶりに行ってみた。 昔と変わらず、見上げると天井がガラス張りになっており、そこにスカートをはいたダンサーが踊っている。男は天井を見上げながら、スカートの奥を見てビールを煽る。そういう仕組みになっている。 相変わらず日本人の姿も多く、この店は何も変わっていないことを知る。男の欲情 […]

◆「久しぶり」と声をかけてくれた女性を覚えていなかった

真夜中だったが、派手な格好をした夜の女と、酔った男たちが大騒ぎしていた。相変わらず、バンコクはにぎやかだった。 ソイ・カウボーイを出て、スクンビット通りを『テルメ』の方向に向かってふらふらと歩いていく。高架鉄道BTSのアソック駅ができてからだと思うが、この当たりにも女たちが立つようになったのは興味深い。 ロビンソン・デパートを少し過ぎたとき、道のわきに立っていた女が”Oh !!R […]

ダイナ・チャンの祈り。売春するカンボジア女性の地獄

カンボジア編アジアをさまよって売春をする女たちと刹那的に一緒にいても、通り一遍では彼女たちの心の中を知ることは難しい。社会的な環境も違い、文化・世代・言語さえも違う。 自分と一緒にいる娘たちの心の中に何が渦巻いているのか、その正確なところは男たちには永遠に分からないものなのだろう。 プノンペンに降り立ち、70ストリートで女性たちとたわむれる。 熱帯の寝苦しい夜、ベッドの中で彼女がどんな生い立ちで、 […]

母系社会。たくさんの男と寝る女性が「賞賛」される世界に

カンボジア編「売春婦」と呼び捨てられる女性は、どこの国でも孤立無援だ。世界中のほとんどの国が父系社会であることに根本的な理由がある。 父系社会とは、男が社会の中心にいて、血統は男性側の家系図が書かれる社会のことを指している。 世界中のほとんどは父系社会だ。 大抵、どこの国の歴史を紐解いても、女性の家系図はほとんど見あたらず、女性は男性の付属品扱いのようになっている。 それが当たり前だと思うのは、ど […]

シンガポールのコー。虫が這い回る部屋に潜んで生きる

貧しさに困窮して海外に目を向けるタイの女性たちがいる。あるタイ女性はスイスへ向かい、ある女性は中東へ向かう。ドバイへ行く娘もいれば、シンガポールを目指す娘もいる。自国よりも稼げるところであれば、娘たちはどこにでも出ていく覚悟がある。 日本で売春をしているタイの女性たちもかつては珍しくなかった。彼女たちは東京・神奈川・大阪に身を潜めて夜の街に立ち、自分に声をかけてくれる男たちをひたすら待つ。 初冬の […]

◆小悪魔のワナ。数を撃てば当たる戦略からラブレター本まで

パッポンのゴーゴーバー『キング・キャッスル』で、ある女性と意気投合したことがあった。情熱的で素晴らしい女性だった。 一晩、彼女と一緒に過ごした。しかし、やがて朝がやってきて彼女は帰らなければならない。意気投合した仲で、別れがとても名残惜しい。彼女は真剣な顔をして言う。 「今日もバーに来て。ペイバーして。あなたを待っています」 その気迫に飲まれて思わず了承する。もう一晩彼女と一緒にいてもいいと思った […]

1998年5月、インドネシアのコタの街で起きたレイプと虐殺

インドネシアで経済の中枢をしっかりつかんでいる中国系の人々は、常に嫉妬や羨望の的だ。その事実は「中国系に搾取されているから他は貧しいのだ」という歪んだ感情となって鬱積してゆく。 だから、暴動が起きると中国系の人々は真っ先に略奪の対象になってしまう。スハルト政権もいよいよ末期に近づいた1998年5月もそうだった。 経済危機から端を発した大学生のデモに軍は発砲し、四人の学生が殺害された。これが直接の暴 […]

◆白昼夢。「普通の人間」になろうと努力していたときのこと

ときどき、自分の心が日本にないことに気がつくことがある。 目を開けたままアジアの白昼夢を見ているのだ。日本にいても、ふと見かけたアジアの女たちだけを見ている自分に気がつく。 真夜中には夜の街にアジアの女たちを見付け、なぜ日本にいてもこれほどまでアジアに関わってしまうのかと、ひとりになると思わず苦笑いをしてしまう。 日本にいながら、女たちを通してアジアを流浪する。今日は中国を、明日はタイを……。 本 […]

フィリピンのキアポに巣くう女。裏のある女の仕掛けたワナ

夕方の喧噪《けんそう》が続いたまま、夜を迎えようとしているこの日、私はフィリピン首都マニラのキアポ地区の喧噪の中をゆっくりと歩いていた。キアポ教会周辺には、おびただしい数の露店、道わきに座り込んで古びた雑貨を売る物売りがいる。 そこを外れると、今度はくず拾いや、誰彼ともなく手を差し出している物乞いが見える。みすぼらしく汚れた服を着た老婆が黙ってやってきて手を差し出した。どこか哀願するような目つきだ […]

◆女の息づかい。目的はすでに失われ、ただ反復しているだけ

他国を巡ってバンコクに戻る。すでに夜になっていた。体調はあまりよくない。旅の途上であまりにいろいろなことがありすぎて疲労が蓄積していた。 スクンビット通りやパッポンは人が多いので寄りたいとは思わなかった。 しかし、ヤワラー(チャイナタウン)はまだかつての怠惰《たいだ》で無気力なタイの雰囲気が残っている。 あそこは観光客もいなければ、ファランも日本人もあまり見ない。今の疲れた身体には、ヤワラーくらい […]

荒廃した肌。全身に吹き出物を抱えたタイ女性ナームのこと

シンガポールの紅灯街である「ゲイラン」は好きだ。実に退廃しており、それが陰湿で、剥き出しなのが素晴らしい。ハイエナにとって、シンガポールとはすなわちゲイランのことである。 かつてシンガポールはゲイランの他にいくつかの地域が売春地帯として栄えていた。しかし、今では観光客向けのオーチャード・タワーと現地人向けのゲイランくらいしか残っていない。 だから、真夜中になると、性欲に飢えて野獣のようになった男た […]

◆狂気に憑かれたような目で、ゆっくり首を絞めてきたナーム

この日、久しぶりにソイ・カウボーイを歩いていた。ソイ・カウボーイは面白いストリートだ。 バーの女性たちは店の入口で客を呼び込むのではなく、道を数人の女性で塞《ふさ》ぐように立ち尽くして、やって来る男に抱きついてくる。女性から目を反らしていれば無理強いされることはない。 しかし、目が合うと大変だ。数人の女性に抱きつかれた上に、無理やり店の中に引きずり込まれてしまう。 こうやって路上に立って客を引いて […]

◆ブードゥーのパット。熱射病と、オープン・バーの人間模様

シンガポールで軽い日射病になった。しかし、もう航空券は取っていたので無理やり起きあがって空港に向かい、そのまま飛行機に乗り込んで何とかバンコクまでたどり着いた。 いつもはエアポートバスをのんびり待ちながら空港に出入りする人たちの姿を見ているのだが、この日はそんな余裕もない。タクシーに乗り込んで、スクンビット通りのホテルに行くように伝えた。 タクシーの中では案の定、運転手がマッサージ・パーラーのチラ […]

◆バタムの売春村。マフィアの徘徊する売春村と捕らわれの娘

夕方も過ぎて徐々に暗くなって来ると、インドネシアの巴淡(バタム)島ナゴヤの喧噪は、少しずつ薄らいでいく。走っている車は相変わらず減ることはないが、人の姿は心なしか少なくなって来るのが分かる。 開いていた雑貨屋やマーケットが閉じられ、一日の仕事を終えた人々は家族の待つカンポン(集落)へ帰って行くのだ。昼間は痛みを感じるほど強烈な光と紫外線を放射していた太陽は落ちて行き、空の色が濃紺へと変化していく。 […]

◆寂しがり屋のクーン。彼女が見つけたのはフェラチオの仕事

『スター・オブ・ラヴ』というバーがあった。バンコク・パッポンの中程に位置するあまり目立たない特殊なバーである。 このバーはゴーゴーバーではないので、半裸で踊り狂う女性はいない。待機する女性も五人前後である 。細長いカウンターと、擦り切れたような古いソファがあるだけで、耳をつんざくような音楽もない。しかも店は狭く、場末の雰囲気がぷんぷんと漂っている。 他のバーが派手で猥雑で混乱したエネルギーに満ちて […]

決闘場(スタディウム)。ハイセンスな売春パブと怒る女性

インドネシア首都ジャカルタは、高層ビルが林立する大都市にふさわしく眠ることはない。 マンガ・ブザール通りを西に歩いて大通りに出ると、そこはハヤム・ウルッ通りである。夜の11時頃、マンガ・ブザールからハヤム・ウルッ通りに出て南に向かって歩いていた。 昔はこの辺に売春女性が立ち並んで客を取っていたと聞いているが、今は彼女たちの姿は見かけることもなかった。 時期が悪かったのか、時間が悪かったのか、それと […]

◆サラの裸の身体に付いていた、異様で驚くべきものとは?

シンガポールに近いインドネシア領バタム島……。夜が更けてハイエナの時間がやって来ると、蒸し暑い夜の街に出向いて一軒の店に入った。”Queen Bee’s”(クイーン・ビーズ)である。 昼間、何気なく街を歩いているときに偶然見つけた店だった。日中でも目立つロゴが気を惹いた。普通のパブ・カラオケ屋はネオンのライトで夜に目立とうとする。しかし、そんな看板は昼間にはネオ […]

◆売春島。インドネシア領バタムにハイエナが来ない理由とは

シンガポールから船で30分から40分ほどの距離に、その「売春島」がある。中国語で書くと「巴淡島」。 日本語で巴は「は」、淡は「たん」と読むので無理すれば「はたん(HATAN」』とも読めないことはない。 実際にはバタム(BATAM)なので、なかなか近いと思う。 中国人が語呂合わせで作ったような、この「巴淡島」という漢字が好きだ。巴(ともえ)は波頭(なみがしら)をイメージ化したものを指している。淡(あ […]

ジャラン・ジャクサ 。ジャカルタの街に立つシティハリチャ

シンガポールからガルーダ航空の飛行機に乗ってジャカルタのスカルノ・ハッタ空港に着くと、まずはガンビル駅行きの「ダムリ」のバスに乗って市内に向かう。バスの中は冷房など気休め程度にしか効いていない。 すっかり古くなってしまった座り心地の悪いシートに座って窓際へ寄り、ぼんやりと夜のジャカルタの街を見つめた。 乱暴なバジャイ(三輪タクシー)が国道を縫って走っているのが見える。けたたましい爆音と排気ガスが熱 […]

◆暴動のあとの荒廃したジャカルタ・コタと、美しい娘レシー

ジャカルタの北部コタの街は真夜中になると怪しげな男たちが溢れ始める。 肩を怒らせて歩くギャング、野放図なチンピラ、ぼったくりタクシーの運転手、高級外車に乗ったマフィア、ドラッグに飲まれた中毒者、そして何者なのか分からないヒマを持て余しているような男たち。 ディスコの前には煙草売りの若者がたむろして、タクシーでやって来る男たちにまとわりついて何とか煙草を売りつけようとしたり、帰ろうとする客を強引に仲 […]

マイクズ・プレイス。緑の虹彩を持った女性とロシアの崩壊

久しぶりにバンコクに降り立ってソイ3を歩きロシア女性を捜した。しかし、半年前にはあれほどいたロシア女性たちが、煙のように消えてしまっていた。 ロシア女性はいつしかタイに現れ、バンコクのソイ3ストリートを歩き回っては男を誘っていた。それから半年もしないうちに、もう事態は変わっていた。 白人の売春女性の存在はタイでは目立ち過ぎていた。人身売買マフィアが巣食っていた悪名高きリージェント・ホテルは何度も家 […]

内斜視の娘と、あばた肌の娘。純真さは、どこから来るのか

カンボジア編カラカラに乾燥したカンボジアの大地を、ふらふらとさまよう。カンボジアに着いて2日目の昼下がりだった。熱射病で倒れそうになるくらいの強烈な太陽が降り注いでいた。 向かう先は決まっていた。紅土の粉塵が舞い上がる70ストリートである。 いつもはモニウォン通りを北上して芸術大学から入るのだが、この日は毛沢東通りにいた関係上、逆側から入ることになった。 道路のほとんどをアスファルトで固めてしまっ […]

70ストリート。プノンペンでもっとも荒廃していた売春地帯

カンボジア編カンボジアの首都プノンペンの地図を見ると、この都市が区画整理によって計画的に作られたことがよく分かる。 道はだいたいが碁盤目のようになっている。また、主要な道路は人名か番号表示になっているので分かりやすい。このプノンペン北に「売春ストリート」と呼ばれる通りが存在した。それが、70ストリートである。 1990年代後半、ここは東南アジアの売春地帯でもっとも凄まじい場所だった。一本のでこぼこ […]

オーチャード・タワーのオウン。彼女の持つ「甘い蜜」とは

夜の零時過ぎ、シンガポールのオーチャード・タワー4階にあるディスコ「クレイジー・ホース」に行く。 すでに顔馴染みになった女たちが入口であきれたような顔で笑いかけてきた。二日も三日もこんなところに通う客も珍しいに違いない。どうかしてる、と彼女たちの顔には書いてあった。 彼女たちはビジネスで建物の内外に立っているが、男は連日連夜遊び回っていることになる。たしかに「どうかしてる」と思われてもしかたがない […]

切ないほほえみ。スワイパーの、哀しい眼をして男を見る娘

カンボジア編彼女と出会ったのはスワイパーと呼ばれる売春村だった。黒一色の服に身を包んだ彼女を一目で気に入った。 まだほんの小娘だというのに、彼女はひどく陰のある瞳をしていた。黒目がちの瞳がじっと相手を見つめる。そして、ほんのりとほほえむその姿は他の娘たちの力任せの誘惑とはひと味違った魅力があった。 しかし彼女はほほえんでいたが、何か哀しみを抑えているように思えた。実際、彼女は哀しいことがあるようで […]

ホームシック。狭い部屋の中で母親に手紙を書くベトナム娘

カンボジア編カンボジアの首都プノンペンにはあちこちに置屋が点在している。 隆盛を誇った70ストリートが徐々に縮小するのと対照的に、市内の置屋は数も勢力も増しているようだ。勢い、夜になったら男たちは市内の置屋をふらふらと夢遊病者のように巡ることになる。 プノンペンの夜は人の姿が極端に減る。治安は悪く、銃を持った強盗が横行するので、人々は巻き添えを恐れて家から出てこない。 隣国タイでは夜中になっても子 […]

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