◆小悪魔のワナ。数を撃てば当たる戦略からラブレター本まで

◆小悪魔のワナ。数を撃てば当たる戦略からラブレター本まで

タイ編
パッポンのゴーゴーバー「キング・キャッスル」で、ある女性と意気投合したことがあった。情熱的で素晴らしい女性だった。一晩、彼女と一緒に過ごした。

しかし、やがて朝がやってきて彼女は帰らなければならない。意気投合した仲で、別れがとても名残惜しい。彼女は真剣な顔をして言う。

「今日もバーに来て。ペイバーして。あなたを待っています」

その気迫に飲まれて思わず了承する。もう一晩彼女と一緒にいてもいいと思った。何よりも彼女が求めてくれており、そんな彼女の気持ちに応えたい。

他の男がわたしをペイバーしてしまった

翌日の夜、約束通りキング・キャッスルに向かった。ところが、彼女はすでに他の男にペイバー(連れ出し)された後だった。

昨日、あれだけ真剣に「待っている」と彼女は言った。なぜ他の男とホテルに行ってしまったのだろうか。

さらに翌日もバーに行く。彼女は急いで近寄ってきて「ごめんなさい」と一生懸命に謝った。

「あなたを待っていたのに、他の男がわたしをペイバーしてしまった。断ることなんてできない。だってマネージャーが行けって命令するから。本当はあなたを待っていたの。なぜもっと早く来てくれなかったの?」

そうだったのかと、思わず彼女を抱きしめた。彼女には彼女の都合があったのだ。

彼女は多くの男たちを満足させなければならない娘であり、特定の男との約束があったところでそれを守りきれるような立場にいない。

自分の思慮が浅かったことを反省する。そして、約束を破ったことに対して謝る彼女に「悪かった。気にしなくてもいい。今日は俺がペイバーする」と言ったものだった。

半年後、別のバーで別の女性をペイバーした。

彼女は情熱的で素晴らしい娘だった。彼女もまた翌朝になると、「今日もペイバーして。あなたを待っています」と言った。

約束通り、彼女のいるバーに向かった。ところが、彼女はすでに他の男にペイバーされた後だった。

さらに翌日も彼女に会いにバーに行った。彼女は、やってきて一生懸命に謝った。そしてこんな意味のことを言うのだ。

「あなたを待っていたのに、他の男がわたしをペイバーしてしまった。断ることなんてできない。本当はあなたを待っていたの。なぜもっと早く来てくれなかったの?」

約束はもう守るとは限らない

さらに別の時、別のバーで別の女性をペイバーしたことがあった。翌日、「今日もペイバーして」と請われて、夜になると彼女のバーに向かった。彼女の姿はなかった。

彼女の友達がいたので、彼女はどこにいるのか聞いてみた。

「ああ、あの娘なら、今日ファランと一緒にパタヤに行っちゃったわ。一週間は戻らないと思う」

今までフォーマルな場で交わした約束は、決して破らないように気をつけて生きてきた。時間も守れば、相手の立場も考える。

しかし、女性たちに「あなたを待っているからペイバーしてね」「分かった」という約束は、もう守るとは限らない。

何度も煮え湯を飲まされて、馬鹿馬鹿しくなってしまった。男が思っているほど、女性たちはペイバーの約束を重要視していない。

そのうち、バーの女たちの手口が分かってきた。

女たちは知り合った男や金をくれそうな男には、片っ端から「今日も、わたしをペイバーして」と言っているのだった。

しかし、彼女たちは約束を守ろうとは思っていない。「あなたを待っています」というのは、そう言えば男がグラリと来ると経験的に分かっているからだ。

ペイバーしてもらうと収入が上がるので、毎晩毎晩誰かにペイバーしてもらえるように、彼女たちは数を撃っている。

約束を守る男もいれば、守らない男もいる。しかし、数人に声をかけていれば誰かひとりくらいはペイバーしにやってくる男がいる。

数を撃つのはペイバーされる確率を上げるための戦略だ。最初にやってきた男が、彼女をペイバーできる。

約束をダブル・ブッキングしても困ることはない。

他の男が「約束したじゃないか」となじるような事態に陥ると、彼女たちは「あなたを待っていたけど、あなたが来るのは遅かった。わたしは待っていたのに」と言って、責任を男に転嫁する。

ラヴレターを書くためのハウツー本

若い頃は、律儀でまじめだったと自分を振り返ることがある。愛し合った女性に「今日もペイバーして」と言われたら、何があってもそれを守ろうとした。

しかし何度も約束しては破られて、違う女から判を押したような同じ言い訳を聞かされているうちに、ある日やっと彼女たちのやり方に気がついたのだった。

彼女たちは数を撃って、適当にやっていたのだ。それに気がつくのが遅いくらいだった。

ホテルのベッドで仰向けになって「やられたか」と苦笑いするしかなかった。女たちは、したたかだ。

薔薇の花だけを見ているとトゲに気がつかない。脈々と受け継がれたパッポンの薔薇たちの「男騙し」テクニックの数々に、ウブな男などひとたまりもない。

夜の女性とEメールでラヴレターのやりとりをしたことのある方も多いかもしれない。それは彼女たちの真摯な愛の証(あかし)かもしれないが、実はそうでないかもしれない。

タイではファラン(外国人)に対して効果的なラヴレターを書くためのハウツー本がある。

男の心を揺さぶるような名文は、もしかしたらその本をから抜き出して書いているかもしれない。

本当にそんな本があるのかといぶかる人もいるかもしれないが、本当にあるのである。それも何種類もだ。

そんな本があるというのを女たちに聞いて、今はそれが自分の書棚に収まっている。Eメールにぴったりの、熱いセリフがここに収録されている。


<<<数々の熱い愛のセリフをタイ語と英語で併記したラブレター・ハウツー本。似たような本が山ほどタイで出版されている。>>>

こういった書籍の中には、どうやって男にお金を送ってもらえるかというノウハウさえ書かれているものもあるそうだ。

もっとすごいのは、ファランにいかにして家を買ってもらってそれを自分のものにするかという本もあるらしい。

実際にそのとおり実行して家族が住む家を自分のものにしたタイ女性もいるというのだから、外国人が思っている以上にタイ女性はしたたかなのかもしれない。

あんたも気を付けたほうがいい

パッポンの女性に惚れてひたすら貢いだあげくに捨てられた男たちの涙の話は多い。

彼女たちに惚れて社会的な地位を投げ捨て、時には国すら捨てた男も珍しくない。一流企業の重役がパッポンの女性にハマって地位を投げ捨てたという事例も知っている。

なぜ知っているのか。それは、そんな男が隣で酒を飲んでいて、我が身を嘆いていたからだ。

「あんたも気を付けたほうがいい。全部、持っていかれるよ」と男は言った。

恋は盲目だとはよく言ったものだ。彼女たちの手練手管に惑わされて人生を棒に振った男はパッポンの片隅で安酒を煽って、今日も酔いつぶれているはずだ。

バーから流れてくるディスコ・サウンドは弾けるように陽気だが、人生を投げ、金の心配をしながら酒を飲む男たちの姿はあまりに苦く切ない。

「あなただけを愛しています」といろんな男に告白して、国に帰った男たち四人から送金を受けているという女もいる。

男は彼女を援助しているのは自分だけだと思っているようだ。彼女が他の男からも援助を受けているなどと知ったら、女性不信に陥るに違いない。

パッポンの女性に惚れ抜いて結婚を求める男もいる。

男には彼女が結婚して子供がいることなど知るよしもない。あるいはその逆も有り得る。パッポンに遊びに来る男たちは結婚していても「結婚していない」と断言する。

結婚しているなんて言うと、恋愛ゲームはとたんに現実に引き戻される。だから男も女も結婚しているなどと言うはずもない。

こうして「わたしは結婚していたけど、夫は事故死してしまったの」というパッポン娘が続出し、「仕事に忙しくて結婚できなかった」という男が溢れることになる。

女は嘘をつき、男も嘘を言う。

騙し合いだったはずなのに

そんな世界だから、遊び慣れた男と夜の女がお互いに交わした約束など、まったく約束になっていない。

お互いに恋愛感情を利用して相手よりも優位に立とうと騙し合いをする。誠意を見せても裏切られることが多い。

そんな経験を繰り返すうちに「俺は誰も信じない」という男や「男は信用できない」という女が現れてくる。

もう何があっても絶対に、パッポンの女たちを信じないという男が出てきても不思議ではない。

何度も騙された男は、そのうち「女たちは男を騙して金を得ることしか考えていないではないか。夜の女はしょせん男をカネとしか見ていない」と思い込むようになったり、そう公言したりするようになる。

しかし、理屈通りに行かないのが世の中の面白いところだ。

騙し合いだったはずなのに、本当の恋に発展したりすることも時にはある。

女は少しでも多くの金を得ようと男を手玉に取っているつもりだったのに、途中から本当にその男を好きになったりする。

男の方でも「愛してるよ」などと適当に言って、一晩遊べばいいと思っていながら、本当にその女を好きになってしまう。

パッポンで働く女性は、かなりの割合で客だった男と恋に落ちて、そのまま結婚する。知り合いの女性も今年になって結婚したが、相手は客だった男でカナダ人だった。

彼女たちは小悪魔だ

ある意味、これはロマンチックな話だ。

夜の世界で知り合った百戦錬磨のプロの女と、劣情を剥き出しにした男が出会って、そこから「真実の愛」が芽生える。

女は金を求め、男は身体を求める人間である。どちらも不純で品行が悪く、世間一般から見れば汚らわしい男女だと思われている。

そんな男女が、自分の「下劣な欲望」を忠実に実行しようとしていたのに、なぜか期せずして「真実の愛」を見つけてしまう。

騙し合いの果てに真実の愛に到達してしまう。皮肉なことだが、ロマンチックだ。

だから、夜の女たちの数々の手練手管に自分が踊らされていると分かったとしても、どうも彼女たちに悪感情を抱く気持ちになれない。

思えば、魂を吸い取られるような気になるほど好きになった女性もいた。今でも忘れられない女性もいる。

彼女たちと関わった男たちの誰もが、彼女たちの嘘や誤魔化しや企みに巻き込まれてキリキリ舞いした経験があるに違いない。

しかし、「困ったものだ」と口で言いながらも、彼女たちを本気で恨んだり怒ったりしない。

こんなにもかわいい女たちを本気で怒るなんてことはできるはずがない。だから、たかがペイバーするしないの約束を破られたくらいでは怒る気にもならない。

彼女たちは小悪魔だ。美しい顔をして自由奔放である。ウブな顔をして、したたかである。何をやらかすのか分からない。

しかし、そんな女から男は離れることができないでいる。なぜなら、そんな女こそが魅力的だからだ。

男は女たちの嘘や企みに巻き込まれる。そしてよけいな金をつかわされたり、ハラハラさせられたりする。

変なことには巻き込まれたくないが、巻き込まれたとしても苦笑まじりにあきらめるしかない。女たちは、次はどんな手で騙しにかかるのだろうか。

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