シンガポールで軽い日射病になった。しかし、もう航空券は取っていたので無理やり起きあがって空港に向かい、そのまま飛行機に乗り込んで何とかバンコクまでたどり着いた。
いつもはエアポートバスをのんびり待ちながら空港に出入りする人たちの姿を見ているのだが、この日はそんな余裕もない。タクシーに乗り込んで、スクンビット通りのホテルに行くように伝えた。
タクシーの中では案の定、運転手がマッサージ・パーラーのチラシを見せながら、「レディ」と言い始める。
しかし、私の気分が優れないのを知るとすぐにチラシを引っ込めて、「大丈夫か?」と心配してくれる。
「大丈夫じゃない。気分が悪い」と答えると、なぜか運転手まで蒼白になって、それからひと言も口をきかずに車を飛ばした。客が車の中で吐くのを恐れたのだろうか。
グレース・ホテルを少し行ったところでタクシーを停めると、すぐ近くにあった適当なホテルに入って部屋を取る。部屋の中まで入ってきてテレビやエア・コンディショナーの説明をしようとする従業員に早めに出ていってもらい、それからベッドに倒れ込んだ。
シンガポールでは日本人墓地を訪れていたのだが、日ざしは強く、遮《さえぎ》るものがなかった。そこに長時間いた。さらにその後は炎天下の中を、足の向くまま歩いて高級住宅街を見学していた。
熱帯の猛暑の中、炎天下に二時間も三時間も歩き回っていれば調子を崩して当然だ。
ベッドに倒れて……
(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア タイ編』にて、全文をお読み下さい)

コメントを書く