コロナショックの不況で日本政府が困窮者を救えないなら貧困地区が誕生する

コロナショックの不況で日本政府が困窮者を救えないなら貧困地区が誕生する

中国発コロナウイルスによって日本人全体が貧困化していくのに、ハイセンスな街ばかりできても仕方がない。需要があるのは、ボロボロでも安いアパートがひしめき、貧困層を相手にした激安の食材を売る店があり、屋台が安い一品を売ってくれて、汚れた服を着ても誰も文句を言わない同じ貧困層が住んでいる地区だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

普通の人は自粛していたら食えなくなってしまう

今のところ、まだコロナ感染者の死者ばかりに焦点が当たっているのだが、これからやってくるのは、それと同時に「経済死」に陥る人たちである。

中国発コロナウイルスによる経済的ダメージは全世界に及んでいるのだが、これによって世界では5億人が新たに貧困状態に陥ると国際団体オックスファムは2020年4月10日に警告している。

無理もない。現在、世界中で労働者の81%、数にして約33億人が職場の閉鎖によって解雇や休業に追いやられており、このままでは約2億人が失業するとみられているからだ。これは戦後でも最悪の危機である。

もしパンデミックが早期に収束できないのであれば、39億人が貧困状態に落ちている可能性もオックスファムは指摘している。

日本も4月7日に緊急事態宣言が出される前からすでに経済は急減速して戦後最悪とも言える経済不況に落ちていこうとしているのだから他人事ではない。

失業者も増えれば、生活保護受給者はどんどん増え続けていくことになるだろう。そして、いったん生活保護に落ちた人たちが這い上がれなくなるような社会情勢になってしまうだろう。

2020年は私たちが想像している以上に危険な世界なのである。まだ、それが分かっていないで「自粛・休業・ステイホームを徹底しろ」と言っている人が大勢いるが、これが徹底されたら経済が破壊して日本人のほぼ全員がまとめて地獄に落ちてしまうことをしっかり把握した方がいい。

金持ちの有名人やら政治家やら芸能人が上から目線で「自粛しろ」と言っているのだが、彼らは自粛しても生きていけるからそう言っているわけであって、普通の人は自粛していたら食えなくなって路頭に迷う。

今後、壮絶なまでに経済破綻していく人たちが増えるだろう。さしずめ、生活保護受給者はうなぎ上りに増えていくはずだ。

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「もう時間切れになったのではないか?」という事実

生活保護受給者の51%は高齢層が占めている。高齢層は支給される年金で食べていけず、貯金を取り崩しながら生きるしかないのだが、多くの高齢者は貯金の取り崩しが想定よりも大きいことに驚く。

夫婦で暮らしていると、どちらかが病気になれば一方は貯金をすべて投げ打ってでも助けようとする。子供が困っていれば、やはり自分たちのことよりも子供を優先して助けようとする。

家があったらあったで修繕費がかかり、家がなければないで家賃がかかる。かくして、なけなしの貯金はどんどん切り崩されて10年も経ったら1000万円くらいはあっと言う間に消し飛んでいく。

もっとも最初から1000万円という貯金など持っていない高齢者も多い。たとえば、高齢独身女性は追い詰められていることが多い。

日本で独身女性は社会的地位が低く見られており、年齢が上がると正社員で雇われることもほとんどないので、元々貧困率が高い。こうした女性が高齢化するとますます貧困の度合いが深まる。

独身男性も悲惨で、高齢で働けなくなると一気に孤立化して社会から見捨てられていく。社会から見捨てられると、孤独の中で貧困に苦しみながら「ただ生きているだけ」の生活に陥るわけで、毎日テレビだけを点けてぼーっと暮らしている生活と化す。

こうした高齢者の保護を行っているNGO団体によると、「このままでは9割の高齢者が孤独なまま貧困化したとしても不思議ではない」と警鐘を鳴らしている。

社会から見捨てられていく高齢層と、こうした高齢層を救済するための社会福祉費の増大によって、日本の貧困の現場はますます深刻化していくことになる。そこに中国発コロナウイルスによる戦後最悪の不況が覆いかぶさっていくのだ。

「国は何をやっているのだ?」「政治は何をやっているのだ?」という話になって、いかにこうした人々を救済するかが議題になるが、日本人はそろそろ気づかなければならないことがある。

「もう時間切れになったのではないか?」という点を……。

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「救済されるもの」から「放置されるもの」に

1990年代のバブル崩壊以後、日本は非正規雇用者がどんどん増える社会となって、貧困が社会の裏側で蔓延していく社会となった。今では労働人口の約4割が非正規雇用者で占められている。

非正規雇用者は、どんなに仕事に熟練しても賃金が上がることはない。そして、彼らの立場は「景気の調整弁」なので、社会情勢が悪化したら真っ先にクビを切られる存在である。昇進もない。非常に不利な労働条件だ。

こうした中で、日本人の貧困層はどんどん膨らんで内需も縮小し、若年層から高齢者までが等しく貧困に苦しむようになってきた。日本に貧困問題が発生してから30年以上経ち、それは「解決しなければいけない」と言われながら放置され続けて来た。

そして、国家予算の半分以上が社会保障費と化した今、「日本の国家財政は限界に達したのではないか?」と言われるようになっていたのだった。2019年10月、安倍政権は消費税を10%に引き上げたが、これによって景気はさらなる悪化に見舞われた。

そして2020年、中国発コロナウイルスが日本に襲いかかって、消費税引き上げどころではない経済的ダメージを日本に与えた。もはや日本政府は国民を助ける手段を失ったかのように右往左往して迷走が止まらない。

今後も貧困層は増えるのは確実なのだが、政府や官僚は本気で国民を助けようとは思っていない。給付金を出し渋ったり、救済措置を受けるのに複雑な書類を書かせたりするのを見ても分かる。

つまり、これから起きるのは「困窮者はこれからも増えるかもしれないが、もう国は困窮者を助けない」ということである。助けないのであれば、どうするつもりなのか。見捨てるということだ。

日本の貧困問題は、今後「救済されるもの」から「放置されるもの」になり、相対的貧困という曖昧な貧困から、絶対貧困へと貧困の度合いが深まっていく可能性が高まっている。

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 同じ環境の人間がひしめいて相互扶助も成り立つ場所

日本はおしゃれでハイセンスな街が多い。しかし、これから今後の日本に必要なのはそんな先進国の金持ちぶった街ではなく、ごちゃごちゃとして物価も安い「貧困街」の方ではないか。

考えてみても分かるが、中国発コロナウイルスによって日本人全体が貧困化していくのに、ハイセンスな街ばかりできても仕方がない。

需要があるのは、ボロボロでも安いアパートがひしめき、貧困層を相手にした激安の食材を売る店があり、屋台が安い一品を売ってくれて、汚れた服を着ても誰も文句を言わない同じ貧困層が住んでいる地区だ。

貧困層が放置されるのであれば、逆に言えば貧困層が貧困のまま暮らせる「貧困地区」が必要となってくる。

日本はこうした「貧困地区」を駆逐した国なので、多くの日本人は「貧困地区」が必要だと言えば否定的な見方しかない。しかし、東南アジアやインドでスラムを見て来ると、「貧困地区」は大いに存在価値があることに気づく。

貧困地区は何もかも劣悪なのだが、貧困が放置される国ではそんなエリアこそが貧困層の救済として機能するようになるのである。そこでは衣食住すべてで安い物が揃い、同じ環境の人間がひしめいて相互扶助も成り立つ。

貧困層が見捨てられたら自分たちで何とか生きていくしかないが、その「何とか生きていく」という環境が貧困地区で構築される。

もちろん、「貧困層を見捨てて貧困地区というゲットーに押し込めよ」と言っているのではないし、そこが素晴らしいところであると言っているわけでもない。

しかし、貧困層が必然的に見捨てられて貧困地区が形成された時、それは必ずしも絶望を意味するわけではない。むしろ貧困層でも破綻せずに生きていけるエリアとして機能する一面もある。

どこの国でも必要悪として貧困地区を持っている。日本にも明確な貧困地区があっても不思議なことではない。中国発コロナウイルスによって貧困層が救済できなくなった時、それは自然発生的に生まれ、育ち、定着することになるのかもしれない。

『コルカタ売春地帯: インド最底辺の女たちとハイエナの物語(鈴木 傾城)』

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