どん底には「何もしたくない。誰かが俺を何とかしろ」という他力本願の人もいる

どん底には「何もしたくない。誰かが俺を何とかしろ」という他力本願の人もいる

貧困と格差が渦巻く社会のどん底(ボトム)には、そこから何とか這い上がりたいと必死で努力しても力が及ばなかったり、様々な不運が襲いかかってやむなく転がり落ちてしまったり、病気だったり、心身に障害を持っていたり、子供の頃から見捨てられていたりして苦しんでいる人たちがいる。しかし、ただ「面倒くさいので自分から何かしたくない。何もしたくない。だから、誰か俺を何とかしろ」と思って何もしない人もいる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

ぶらぶら生きていた、あの若者たち

中国発コロナウイルスによって、海外で暮らす「海外在住日本人」が苦境に落ちているというNHKニュースを見たのは6月のことだった。

94ヵ国2155人の聞き取り調査の中で、収入減に陥った人は全体の49.1%、そのうち24%は収入が5割以上も減少したという内容だった。あれから状況はまったく変化していないので、今はもっと悲惨なことになっている可能性がある。

外務省も「5月に日本人がスーパーで万引きして逮捕された」「6月にパタヤで現金を使い果たして困窮した日本人が保護された」ような報告をしている。こうした困窮は氷山の一角なのだろう。

そこで思い出すのが、カオサンなどで「外こもり」と称して、ぶらぶら生きている「あの日本人の若者たち」のことだ。彼らは日本で仕事も義務も投げ出して海外に逃げたのだから、経済的な問題が起きたとしても自分で何ができるわけでもない。

危機に陥ったら、彼らは問題を解決するのではなく問題から逃げる。すべてを投げ出す。為すがままに流される。

この世には、ひとつのことに継続して取り組める人もいるのだが、彼らはそういうタイプではない。思い通りにならないと自暴自棄になってすべてを投げ出す。厄介な問題が降りかかっても「困った」と言いつつ何もしない。

多くの人は自分の人生の中で、思い通りにならないと投げ出して逃げる人を見てきているはずだ。私自身も、旅人として東南アジアの底辺にずっといたこともあって、そうした人たちを数多く見てきた。

だいたい、東南アジアの貧困街の旅社(格安ホテル)に泊まっている旅人は、みんな人生をドロップアウトして日がな一日何もしないで怠惰を貪って生きているわけで、すべてを投げ出して逃げてきた人たちの巣窟であったとも言える。

別に彼らのことを心配しているわけではないが、何となく「どうしているのだろうか」と気になる。とっくに日本に戻って「ひきこもり」になっているのか、どこかのネットカフェでじっとしているのだろうか……。

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後先考えないで生きている人

私も二十歳以後は東南アジアの貧困地区に沈む生活に心地良さを感じて、そこにどっぷり浸ったのだから、ぶらぶら生きている若者のことをとやかく言える立場でもない。

こうした場所に巣食っていると、互いにやることがないので、どうでもいいような話を誰かの部屋に集まって夜通し聞いたりして過ごすこともある。

彼らの生き方を聞いていると、日本で就職しても長く続かず、仕事を転々として生きてきた話を聞かされることになる。彼らは自分を「自由人だから」と称していた。しかし、実態はどうなのだろうか。

東南アジアの貧民街に巣食う旅人の生きてきたバックグラウンドは様々だ。金が尽きたら日本で住み込みのアルバイトをして、金が貯まったらまた東南アジアに戻ってくるという生活を何年も繰り返している人もいた。

あるいは、何の計画も目的も意味もなく、なんとなく東南アジアにやってきて貧民街に巣食って、この先どうする計画もなく「人生は死ぬまでの暇つぶし」みたいなことを言いながら、怠惰に生きている人もいた。

公務員や一流企業の仕事を突如として辞めて、まるで逃亡者のように東南アジアにやってきた人もいるし、世界中を旅する中で東南アジアに寄って、ただただ時間を潰している人もいる。

東南アジアに沈没するすべての旅人が、行き当たりばったりに生きているわけではないのだが、遭遇率で言えば後先考えないで生きている人は多かった。彼らも今はいいかもしれないが、やがてはどうにもならなくなってしまうことを悟っている。

しかし何もしない。時間はたっぷりあるのだから、自分の所持金が尽きる日はいつでも計算できるはずだが、「日本に戻るのも面倒くさい」と何もしないのである。そして最後に一文無しになって、他人にタカリ出す。

日本でも、いろんなものを「面倒くさい」と投げ出してきたわけで、海外にいるから何かするわけでもない。大事なことから逃げ回りながらどんどん追い詰められていく。私のまわりは、そんな人だらけだった。

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最終的に破綻するまでぶらぶらする

誰の人生にも節目節目で大きな壁が立ちふさがる。それを乗り越えてもまた次の壁が立ち塞がっている。人生とは、次々と迫り来る問題や困難を、いかにして乗り越えるのかが問われるゲームである。

人によって様々な乗り越え方があるのだが、社会をつぶさに観察すると「思い通りにならないと、すべてを投げ出して逃げる人」もいれば「深刻な問題が発生しているにも関わらず何もしない人」などが一定数いることに気づく。

困難を乗り越えない。逃げるか、何もしない。そして破滅する。破綻しても、誰かが何とかしてくれるまで自分で何もしない。

たとえば、失職して貯金が10万円しかなく、今すぐに仕事を見つけるか、生活保護を受けるかしないと1ヶ月後には路頭に迷うという状況になったら、多くの人は焦って必死で仕事を探すか、福祉事務所に行って事情を説明しようとする。

そうしないと1ヶ月後には路頭に迷ってしまうのだから必死だ。仕事も見つからず、生活保護も受けられないという結果になるかもしれないが、それはあくまでも結果であって、普通はそうならないように努力をする。

しかし、困ったことが目の前にあっても「何もしない人」がいるのである。知的障害者ではないし、精神的な病気でもない。だから、問題があることは理解しているし、何とかしないといけないということも分かっている。

それを分かった上で、自分から何もしない。「困ったな」と言うだけで、最終的に破綻するまでぶらぶらして生きている。

「自分のことは自分で何とかしなければ」と考える人にとっては、「いったい何をしているのか」とイライラするかもしれない。

そのため、親や家族や友人や福祉関係者がそばにいたら、本人に頼まれていなくても仕方なく助けてしまう。「自分が動かないと、この人は破綻する」と思うと、居ても立ってもいられなくなってやってしまう。

そうやって、運良く助かってしまう他力本願の「何もしない人」がいる。

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「誰か俺を何とかしろ」と生きる

しかし、そういう運はいつまでも続くわけではない。死ぬまで面倒を見てくれる人などいるわけがないし、行政も突き放す。当たり前だが、働こうと思ったら働ける人を行政は墓場まで面倒を見るわけではない。

自分の人生を左右する重大な部分や、生活に関わる部分、あるいは人生の目標や理想を追うべき局面でも投げ出してばかりだと大きな問題が生じる。何度かまわりに助けてもらっても、いずれは突き放される。

結局、自分の人生は自分で見なければならないということに気づくことになる。しかし、「そうか、それならば何とか自立しよう」と思うのは普通の人であり、そう思うなら最初からそうしている。

そうならない人が一定数いるということだ。

貧困・格差の問題を見つめる時、「困った人を助けたい」という熱意あるボランティアを困惑させるのが、こういう人たちである。ただ単に「面倒くさい」「働きたくない」「何もしたくない」と思って、本当に何もしないで困窮している無気力な人が紛れ込んでいるのだ。

健康なので働こうと思えば働ける。自立しようと思ったら自立できる。しかし、しない。自分から動かない。

貧困と格差が渦巻く社会のどん底(ボトム)には、そこから何とか這い上がりたいと必死で努力しても力が及ばなかったり、様々な不運が襲いかかってやむなく転がり落ちてしまったり、病気だったり、心身に障害を持っていたり、子供の頃から見捨てられていたりして苦しんでいる人たちがいる。

しかし、ただ「面倒くさいので自分から何かしたくない。何もしたくない。だから、誰か俺を何とかしろ」と思って何もしない人もいる。都合の良い他力本願な生き方だが、本当にそういう生き方をしている人が紛れ込んでいるのだ。

コロナで実体経済がめちゃくちゃになっている中で、彼らは今どうしているのだろう。やはり、何もしないで、優しい人たちに助けてもらっているのだろうか……。これも、どん底(ボトム)の光景のひとつである。

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