デプレッション(意気消沈)。自分自身の心が壊れてしまう前に休むことも大切

デプレッション(意気消沈)。自分自身の心が壊れてしまう前に休むことも大切

コロナ禍や緊急事態宣言の発令は、人々の経済だけでなく心までも押し潰していく。コロナ鬱も自殺も増えた。人生が暗転したとき、自分の気力が常に保たれている保障はない。挫折や失敗を跳ね返すバイタリティさえも奪われていることもあり得る。それが深い深い意気消沈を生み出す。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

抑鬱状態となり、意気消沈し、起き上がるのも苦痛になる

2021年1月27日。徳島大の山本哲也准教授(臨床心理学)のチームが、ある約1万1000人へのオンライン調査を元にある調査結果を発表している。

日本では2020年からコロナの感染拡大が増加して、2020年4月7日から5月末まで緊急事態宣言が発令されたのだが、この期間中に「48%がストレスを感じていた」「18%の人が治療の必要なうつ状態にあった」というのである。

コロナ禍のような社会現象は、多くの人を「経済的困窮」だけでなく「精神的苦痛」にも追いやっていた現状が明らかとなった。

2021年1月も、再度の緊急事態宣言が発令されている。不安定で先の見えない現状に、心を病んでしまう人は再び増えていくだろう。「心の問題」は、これから大きくクローズアップされていくことになる。

私たちが考えなければならないのは、どんな人であっても、人生には苦境や挫折や失敗が付きものだということだ。誰にも、良い時もあれば悪い時もある。

人生の中で上昇機運にある時は、人は活動的になり、楽観的になり、積極的になる。しかし、悪い時になると何をしても駄目だという気持ちが心を覆い尽くし、悲観的になり、内に籠もるようになる。

気力が充実し、エネルギーに溢れ、挫折しても「これで終わらない」という強い精神力が維持できていれば、どんな状況になっても立ち直れる。

かなり手痛い挫折であっても、ハングリー精神と向上心さえ失わなければ、泥まみれになりながらも立ち上がっていける。失敗と挫折はいつでもやってくるので、人は何があっても立ち直ることが期待されている。

しかし、失敗と挫折でショックを受け、気力そのものが喪失してしまうこともある。一般的に「心が折れる」と言われる状態だ。鬱病ではないのだが限りなく鬱病に近い状態で、これを「デプレッション」と呼ぶ。抑鬱状態となり、意気消沈し、起き上がるのも苦痛と化す。

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「デプレッション」は誰にとっても他人事ではない

深い意気消沈……。「デプレッション」は誰にとっても他人事ではない。人生は挫折と失敗とやり直しの連続であり、何か悪いことが起きるたびにこうした心理状態に陥る危険がある。

たとえば、仕事は人間関係で出来ているのだが、人間関係というのはとても繊細で微妙なバランスで成り立っていることが多く、それはしばしば壊れてしまう。仕事には、上司、部下、同僚、顧客という人間関係が必ず付きまとい、そのどれもが自分に攻撃や中傷や嫌がらせを仕掛ける存在となり得る。

家庭にあっても、家族そのものが無神経な言動で自分を深く傷つけることもある。父親も、母親も、兄弟も、長らく生活しているのに自分のことをすべて分かってくれているわけではない。逆にまったく分かっていないことも多い。

こうした人間関係の軋轢は、長く積もっていくと徐々に心を弱らせていき、ある時に心が壊れていく。「デプレッション」に入ってしまうのである。これは珍しい現象だろうか。いや、誰にでもあることだ。

特に、恋人や夫婦という関係はとても脆弱で壊れやすい。関係が壊れるというのはとてもつらいことだが、壊れた上に別れを余儀なくされた時、立ち直ることすらもできないダメージを負うこともある。そしてデプレッションに入っていく。これも多くの人が経験しているものである。

コロナ禍で収入減となった人も多いが、こうした経済問題も心に深刻なダメージを与える。収入減を借金で補おうとする人もいるが、それはますます容体を悪化させてしまう。

借金を抱えるというのはそれ自体が大きなストレスになるが、それが返せるのか返せないのか分からないような正念場に差し掛かったとき、そのストレスは人の心を押し潰す。そしてデプレッションの状態に入っていく。

借金が返せなくて自殺する人も多いが、「自己破産すれば死ななくてもいいのに」「生活保護を受ければいいのに」と正常な心の人は考える。

しかし、長い時間をかけて借金に追われて毎日が苦痛と焦燥とストレスで苦しんできた人にとっては、もはや生きることそのものに疲れ果てている。求めているのは解決方法ではなくて、心の平安なのだ。

だから、どうにもならなくなった最後の瞬間に、物事を解決するよりも、すべてから逃れられる「死」に向かっていく。

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挫折や失敗を跳ね返すバイタリティさえも奪われる

いろいろな立場にいる人が、デプレッションに落ちる可能性がある。

女性は、妊娠・出産・育児という一連の出来事の中で、自分の力ではどうしようもないトラブルに遭遇したり、力尽きたりして子供を抱えることがある。母親ひとりに多くの問題を一度に背負わせることによって、母親の心は追い詰められていく。

人生の長い期間をうまく生きてきた人であっても、途中で生活習慣病になったり、癌になったり、脳梗塞のような深刻な病気に見舞われたりして、今までの生活が成り立たなくなると、危険な心理状態に入ってしまうこともある。

長く治療を受けても、リハビリをしても、以前のような溌剌とした健康体に戻れないという事実を受け入れられず、悲観して心が落ち込んでしまうのだ。

人間の人生はいつでも暗転する。そして人生が暗転したとき、自分の気力が保たれている保障はない。挫折や失敗を跳ね返すバイタリティさえも奪われていることもあり得る。

それが深い深い意気消沈、すなわち「デプレッション」という危険な心の状態を生み出す。デプレッションは長い期間に渡って心が折れてしまっている状態なのだが、それでも鬱病とは違って、かろうじて日常生活を行うことができている。

常に気持ちがふさいでおり、何をしても楽しくなく、何を食べてもおいしくなく、夢も希望もない。

何かをしていると気が紛れるが、何もしていないと心が晴れず、重い倦怠感にある。あるいは、急にすべてに対して腹立たしくなったり、馬鹿馬鹿しくなったりすることもある。意味もなく他人を攻撃することもある。

抑鬱は、鬱病ではないのだが鬱病に進行するかもしれない危険な心の状態である。しかし、誰もが抱えてしまう心の状態であるとも言える。

コロナ禍や緊急事態宣言の発令の中で、このような状況に落ちた人が増えたのだ。こうした苦しい心理状態から抜け出すには、いったいどうすればいいのだろうか……。

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必要なのは、休息を充分に取って心を休めること

デプレッションは数日で治るようなものではない。それは数ヶ月に及び、徐々に徐々に改善していく性質のものだ。だから、気長に心を改善させる必要がある。

幸いにして、自分がデプレッションの状態にあるというのは自覚できる。だから自分がそのような状態であると分かったら、何としてでも「休む」ことを意識しなければならない。自分にストレスを与えているものから逃れ、そして休む。

傷ついた動物が打ち捨てられた洞穴に籠もって傷を癒やすように、思い切って「休む」のが必要な処置だ。本来であれば、休まなければならないときに休まなかったことで心が壊れたのだから、その分の休息を取り戻す必要がある。

ここで休めなければ、本格的な鬱病にまで悪化してしまうかもしれない。危険な状態にあることを認識して、積極的に休むのが必要だ。

気分が落ち込んだり、憂鬱であったり、食欲がなかったり、夜眠れなかったり、気力が湧かなかったり、集中力が続かなかったり、自暴自棄になってしまったりする状態が二週間に渡って続くのであれば、すでに心の問題が発生している。

症状が深いときは、もちろん抗鬱剤も処方されるが、それは専門の医師の診断で決まるので自分で決めてはいけない。

必要なのは、休息を充分に取って心を休めることである。

身体が怪我をしたら安静にして治すが、心が壊れたら休息して治すのである。より長く、より充実して生きるには、「休む」というのは最初から生き方に取り込んでいなければならない。うまく休める人が、うまく生きられる人でもある。

デプレッションに入ったら、休まなければならない。一番いいのは、壊れる前に休むことだ。ストレスによって心が壊れかけているところに無理すると、心は回復できないほどにまで壊れてしまう。

コロナ禍や緊急事態宣言はいろんな面で人を追い詰めているのだ。ワクチンの接種によって集団免疫ができるまで、私たちは自分の心が壊れないように管理しておく必要がある。

自殺の増加も他人事ではないということだ。

ボトム・オブ・ジャパン
『ボトム・オブ・ジャパン 日本のどん底(鈴木 傾城)』

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