自殺、心の破壊。日本は精神的に深刻な状態にある人がケアされない社会である

自殺、心の破壊。日本は精神的に深刻な状態にある人がケアされない社会である

日本人はギリギリまで精神的なストレスに耐えて、耐えて、極限まで耐えて壊れていく。日本の自殺率が先進国で問題視されるほど高いのは、精神的に深刻な状態にある人がケアされないで放置されていることを意味している。だから、日本人の私たちは自分で自分の心を注意深く観察する必要がある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

考え方も感受性も価値感も同じ人はひとりもいない

コロナ禍によって若者や女性の自殺が増えているのだが、自殺の陰には2倍以上もの自殺「失敗」者がいるという。ある読者が「短いので読んで欲しい」とTwitterに上げられているひとつのマンガを私に紹介してくれた。

ブラックアジアはアンダーグラウンドのサイトであり、私の読者は自殺を考えたことのある人が多くいる。こうした「死」を扱ったコンテンツには敏感であることは想像できる。教えてくれたマンガというのは、以下のものだ。

自殺を考えている人へ
https://twitter.com/tuki_no_kodomo/status/1389170651622117376

『自殺失敗者とは、方法が間違っていたとか身体が反射で抵抗してしまった等、様々な要因で死にきれず、脳死状態や、一生残る大きなハンディキャップを背負ってしまった方々です』

『脳死状態になってしまうとずっと寝たきり。食事もできず、鼻や胃瘻から経管栄養を流し込まれ、便や尿も垂れ流しになってしまうのでオムツを履かされ、自分の意志関係なく延命させられます』

『極力、配慮はさせていただきますが、時には思春期の女の子のオムツ取り替えを、僕のような若い男性がやらざるを得ない時も多々あります。患者さんが一番辛いと思います』

このような内容が書かれていて考えさせられる。自殺は死んでも生き残っても地獄に至るのだというのがよく分かる。

しかし、それでも多くの人がいくつもの悩みや課題が次々と重なる中で、精神的に追い込まれて死に追い込まれていく。

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人はどのように心が動いて壊れていくのだろうか?

人生は人それぞれ完全に違っており、考え方も感受性も価値感も同じ人はひとりもいない。だから、何に耐えられて何に耐えられないのかは人によって違う。ある人には耐えられても、ある人には耐えられない課題もある。

現実に耐えられなくなった時、心は急激に壊れていく。心が壊れると、やがて日常生活が送れないほどの言動になっていく。ところで、「心が壊れる」というのは、どのような病名になるのだろうか。実は2つある。

ひとつは「統合失調症」である。
もうひとつは「うつ病」である。

この2つが「二大精神病」と言われているもので、世界のどこの誰でも、心が壊れる時はこの2つのパターンのうちのどちらかに属することになる。

「統合失調症」になると、極度に他人を意識するようになっていく。その結果として起こるのが幻覚や妄想だ。

他人が悪口を言っている、他人が自分を嘲笑っている、他人が自分を邪険にしている、他人が自分をじろじろ見ている……。極度に他人を意識するようになっていき、それが止まらないのだ。

そのような心の壊れ方をする人が統合失調症である。(ブラックアジア:誰も聞かない京橋の電波女性の預言「日本人同士が殺し合ってね、泣くの」

うつ病は、自分の苦しみを意識し過ぎて、どんどん負担になる症状だ。

気分が落ち込み、眠れず、食欲もなく、疲れやすく、虚無で、絶望的になる。そのため、ベッドから起き上がることすらもできなくなり、伏してますます自分の苦しみを内省する。

インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、『ブラックアジア カンボジア編』はこちらから

最終的に治らなければ、自殺に追い込まれていく

統合失調症というのは「他人を意識し過ぎて心が壊れる」ものである。うつ病は「自分を意識し過ぎて心が壊れる」ものである。人は様々な社会現象の中で追い詰められ、にっちもさっちもいかなくなって心が壊れていく。

その時、この2つのどちらかの壊れ方をする。

どちらであっても、一度壊れた心は回復に時間がかかり、もし最終的に治らなければ自殺に追い込まれることになる。

なぜ「心が壊れる」という状況を意識しなければならないのかというと、社会はいつでも人間の心を破壊するまで追い込んでくるからである。

コロナ禍の今はなおさらだ。ステイホームは、社会が人間関係の断絶を強制したということである。他者とのつながりが断たれることについては若者であればあるほどダメージが大きい。

また、ステイホームは社会が経済活動を止めることを強制したということでもある。自分ではどうにもならない社会の激変の中で、仕事を断たれたり、新しい仕事が見つからなかったり、あるいは収入が激減したりすることもある。

収入激減の悩み、収入が断たれることによる恐怖というのは、並大抵のものではない。明日から食べていけなくなる恐れさえもある。飢えるかもしれない、ホームレスになるかもしれない、路上で野たれ死にするかもしれない。

2020年11月。東京都渋谷区のバス停で路上生活をしていた女性が殺された事件があった。この女性はスーパーで試食品の販売員などをして生きていたが、コロナで仕事を失ってホームレスになった。

幡ケ谷のバス停でベンチに座っていたところ、ホームレスを嫌う男に殴られて死んでいった。そうした暗い事件は、ささやかに生きている誰もが他人事ではない。コロナ禍の中で、多くの人は心を沈ませていく。

インドの貧困層の女性たちを扱った『絶対貧困の光景 夢見ることを許されない女たち』の復刻版はこちらから

意識していなければ、心の破壊は行き着くところまで行く

コロナ禍の中、日本はワクチン接種がうまく進まない。欧米の多くはコロナ禍をやっと脱しようとしているのに、日本は緊急事態宣言でまだまだ収束に程遠い。そんな中で経済も停滞し、心が壊れ自殺に追い込まれる人も増えている。

いつでも私たちは、社会に心を壊されてしまう危険性がある。自分が追い込まれた時、誰も気付いてくれないし、誰もケアしてくれない可能性も高い。

多くの場合は、他人が気付かないところでまるで真綿で首を絞められるように自分の首が絞まっていく。特に日本はそうだ。日本人はギリギリまで精神的なストレスに耐えて、耐えて、極限まで耐えて壊れていく。

日本の自殺率が先進国で問題視されるほど高いのは、精神的に深刻な状態にある人がケアされないで放置されていることを意味している。だから、日本人の私たちは自分で自分を注意深く観察する必要があるのだ。

仮に自分が「他人を意識して心が壊れる」タイプであれば、他人が自分を追い込んでいると感じることで、「このままでは心が壊れる」と意識することができる。

仮に自分が「自分を意識して心が壊れる」タイプであれば、心がどんどん自分を「ダメだ」「情けない」と追い込む動きを見て、「このまま放置していては心が壊れる」と意識することができる。

事前に意識できれば、行き着くところまで行く前にブレーキをかけて戻ることもできる可能性が生まれる。意識していなければ、心の破壊は行き着くところまで行ってしまう。

日本は「心が壊れていく」のを「甘え」だと捉える社会的な風潮がある。こんな社会で生き残るためには、社会が心を押し潰してくるという現実を認識し、常に自分の心と対話して自分を防衛することに尽きる。

あなたの心は、大丈夫だろうか?

野良犬の女たち
『野良犬の女たち ジャパン・ディープナイト(鈴木 傾城)』

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