日本は自由な社会だから、何でも好きな仕事ができると思ったら大間違いだ

日本は自由な社会だから、何でも好きな仕事ができると思ったら大間違いだ

日本でも「学歴」がないと、それだけで職業選択の自由は大幅に制限される。「日本は自由な社会だから何でも好きな仕事ができる」と思ったら大間違いで、学歴で職業は区分けされている。場合によっては正社員にもなれない。職業選択の自由があるというのは幻想で、そんな自由はない。(鈴木傾城)

 8600万人もの子供が新たに貧困に追い込まれる

2020年のコロナ禍によって全世界で貧困が拡大している。世界銀行は生きるか死ぬかの環境で生きている絶対貧困層が「7億人を超えることになる」と2020年10月に警告している。

11月に入ってからもコロナの感染者の拡大は欧米や途上国で広がって止まらない。2020年11月9日にはファイザーが中国発コロナウイルスに対して「開発中のワクチン90%を超える予防効果がある」と発表している。

しかし、これについては、「まだまだ初期の結果である」として関係者は慎重姿勢を崩していない。となれば、コロナ禍はさらに続いていく。

こうした中で子供の貧困も15%増加、ユニセフは「最大8600万人もの子供が新たに貧困に追い込まれる恐れがある」と述べている。5億8600万人だった子供の貧困が6億7200万人になるということだ。

日本でもコロナ禍によって非正規雇用者が雇い止め・休業・リストラに遭っているのだが、これによって貧困で暮らす子供が激増することが予測されており、決して他人事ではない。

子供たちが貧困に落ちていくと、家庭が荒む。学費が払えないとか飢えて勉強どころではないという問題も発生する。そのため、学業が疎かになったり、学校に行かなくなってしまう子供たちも出てくる。

高度情報化社会に突き進む現代社会では、教育を受けなければまともに生きていけず、それなりの学歴を積まなければまともな仕事に就けない。これは、どこの国でも同じである。

ところが貧困層はその教育を受けることがままならない。

私は若い頃から東南アジアの貧困地区やスラムに出入りしていたのだが、学校も行かずに働いていた子供たちを大勢見てきた。こうした哀しい子供たちの姿が今、私の記憶に蘇っている。コロナ禍で8600万人もの子供が再び地獄に堕ちていくとは……。

途上国だけでなく、先進国の貧困層もまた同じ

教育を受けると言っても、教育機関は無料ではない。教師もボランティアでやっているわけではないからだ。

そこで、国は貧困家庭に補助を与えたり、学費を無料にしたりする。ところが、仮に教育を無料にしてもらっても、今度は制服や、弁当代や、交通費が出せない。

また、貧困家庭の多くは家庭が崩壊していることも多く、家に帰ってもゆっくりと勉強したりする環境になっていない。親も教育にほとんど関心を寄せないことが多い。これは途上国の話だけではない。先進国の貧困層もまた同じなのである。

日本もそうなのだ。貧困家庭で生まれ育った子供の多くは低学歴を余儀なくされる。親に余裕がないので、子供には早く独立して自分で稼げるようになって欲しいという気持ちが先走る。

子供たちも親が経済的に苦労しているのを見てきているので、自然と「早く稼げるようになって親の負担を減らさなければいけない」と無意識に思うようになる。

あるいは、学校で他の生徒と自分の境遇の差に気づき、自分が貧しいことを自覚して劣等感を感じるようになる。

生活保護世帯や貧困層の若者は、中学卒業や高校中退の学歴の人たちが多いことでも知られている。唐突に教育の現場から離脱してしまうのだ。

10代のうちはまだ体力もあり、夢もあり、教育がなくても何とかしのげるように錯覚する。しかし、現代社会は、高学歴ではないと高収入の仕事には就けないのが一般的である。そのため、低学歴であることが徐々に重い十字架と化していく。

いくら高度な仕事、高い賃金の仕事、安定した正社員の仕事を望んでも、早々に学校から離脱してしまうと低賃金の仕事しか見つからない。

低賃金だと貯金もできないので、毎日仕事に追われるだけになる。止めて転職しても環境は変わらない。むしろ転職すればするほど職歴も傷ついていく。

かくして、教育を受けられなかった人々は、低賃金の仕事を這い回るしかできないという深刻な状況に陥っていく。

字が読み書きできる人間は、ひとりもいなかった

あなたのまわりに文盲の人はいるだろうか。日本で暮らしていると、文盲の人に会うことはほとんどいないはずだ。私も日本で文盲の人を見たことがない。どんなに貧しい暮らしをしている子供たちでも字は書ける。

しかし、世界はそうではない。

インドで知り合った貧しい路上生活者の女性を写真に撮ったことがある。彼女に撮った写真を送りたいが、彼女には住所がない。

知り合いの住所でもいいから教えてくれと言ったが、今度は文字が書けないことが分かった。彼女は話せるが、文字は書けない。彼女はヒンディー語もベンガル語も読めないし書けない。

彼女は特別だったのか。いや、彼女が特別ではないというのは、彼女の知り合いの2人もまた彼女と同じ状態であることから窺い知れた。彼女の叔母が郊外の村に住んでいたが、そこでも同じやりとりをした。

大人はたくさんいたが、字が読み書きできる人間は、ひとりもいなかった。そこで、ボランティアで教育を受けて字が書けるという少女が村を代表して住所を書いてくれた。数十人が集まって暮らすこのスラムでは、字が書ける大人はいなかった。

10歳かそこらの少女がこのスラムで最も学のある人間だったのである。

インドは世界から注目される新興国であり、中産階級も続々と生まれている。インド人の知識層は猛烈なまでにインテリであり、その知識はとても深いものがある。

いまや、マイクロソフトのCEO(最高経営責任者)も、グーグルのCEOも、アドビのCEOも、ノキアのCEOも、さらにはIBMのCEOもインド人だ。インド人の頭の良さは「折り紙付き」なのだ。

ところが、インドでは国民の半数が極貧に喘いでおり、その貧困者の多くが字の読み書きもできず、計算もできない。教育がないというのは、日本では「義務教育しかない」という意味を含んでいるが、インドで教育がないというのは、まさに「ゼロ」なのである。

日本では「私は教育がない」と言う人がいても字くらいは書ける。インドで「私は教育がない」というのは、字も書けず簡単な計算ができないほど何もない。

貧困が固定化して、「永遠の貧困層」が生まれる

字も書けず、計算もできない人は、それがゆえに「ひとつ上」に行くことができない。インドも都会では職業選択の自由くらいはある。しかし、基礎教育がないと、選択肢そのものが限られる。自ずと職業選択は制限されてしまう。

これは、インドの貧困層だけの話ではない。日本でも「学歴」がないと、それだけで職業選択の自由は大幅に制限される。

「日本は自由な社会だから何でも好きな仕事ができる」と思ったら大間違いで、学歴で職業は区分けされている。場合によっては正社員にもなれない。職業選択の自由があるというのは幻想で、そんな自由はない。

途上国では教育の有無、先進国では学歴の有無で、職業選択が狭められる。自分に適性があるかどうか以前に、教育や学歴で弾かれる。

高度情報化社会の今、とにもかくにも子供たちに教育を受けさせなければならないのは、ここに理由がある。子供たちの選択肢を広げるには、教育をしっかりと受けさせるのが最上の方策なのである。

もちろん、そんなことは親であれば誰でも分かっている。分かっているが、現在は世界中で経済格差が極端なまでに広がっている時代であり、貧困層が貧困ゆえに子供に教育を与えられなくなりつつある。

教育の重要性は認知されているにも関わらず、教育を受けさせる環境が悪化している。これが最後に何を生み出すのかは、もう誰もが知っている。貧困が固定化して、「永遠の貧困層」が生まれるのだ。

絶対にそこから抜け出せない「生まれながらの貧困層」が世の中を覆い尽くす。

今、私たちの目の前で広がっているコロナ禍は、最大8600万人もの子供を新たに貧困に追い込む凶悪な社会現象である。コロナのせいで、一生「貧困から這い上がれない」状況に追い込まれていく子供たちも大量に出現する。世界中で、そんな子供たちが未来を失う。

東南アジアや南アジアの貧困地区で、こうした人たちをずっと見てきた私は、この現状にとても深く憂慮している。

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