災害で壊滅するかもしれないのは日本も同じ。災害の巨大化は他人事ではない

災害で壊滅するかもしれないのは日本も同じ。災害の巨大化は他人事ではない

気象の異常によって起こるのは、豪雨・豪雪・ハリケーン・台風・ゲリラ雨・干魃・熱波・洪水・海面上昇だけでなく、地球上を覆い尽くすような蝗害被害も生まれるということを私たちは目にした。現代文明も脆弱だ。先進国が災害によって崩壊したら、超ハイテク文明は維持できなくなって一気に崩壊する。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

2020年の災厄

災害で壊滅するかもしれないのは日本も同じ

2020年は、アフリカ・中東の蝗害(こうがい)、中国発コロナウイルス、そして気象異変による豪雨・長雨による広範囲における災害によって、まさに「天災」のオンパレードと化して、聖書で描かれた「ヨハネの黙示録」のような様相となっている。

特に中国は武漢から広がったコロナによって大ダメージを受け、今度は1ヶ月以上も降り続く雨で433の河川で警告水位を超えた洪水が発生し、被災者が約4000万人にのぼる惨状となっている。

しかも、この長雨はまだ終わっておらず、洪水被害はさらに悪化することが予測されている。この洪水被害を防止するために作られたのが三峡ダムで、2003年には「1万年に1度の洪水を食い止める」と言われていた。

ところが、2007年には「1000年に1度の洪水を防げる」となって、2008年には「100年に1度の洪水を食い止める」となって、2010年「20年に1度の洪水を食い止める」となって、結局は「洪水を食い止められていないではないか」「崩壊するのではないか」と言われるようになっている。

もし三峡ダムが崩壊したら南京まで洪水が押し寄せて6億人が被災し、中国経済は大打撃を受けて崩壊するとも言われるようになった。

今回の洪水で三峡ダムが崩壊するのかどうかは知らないが、ここを攻撃したら中国は壊滅すると全世界に喧伝されたのだから、中国がどこかの国と戦争になったら真っ先に狙われることになるのだろう。

しかし、災害で壊滅するかもしれないのは別に中国だけの話ではない。我が国「日本」も大きな不安材料が足元でくすぶっている。日本は30年以内に70~80%の確率で南海トラフ大地震が起きると予測されている。

それは、最大マグニチュード9.1の地震である。東京・名古屋・大阪の大都市圏が壊滅的ダメージを受け、最大で32万人もの人が死亡する可能性がある。そのような災害が日本で起こり得る。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

暴力的な気候変化が世界的で起きている

観測史上初の集中豪雨、巨大勢力のハリケーンや台風、凄まじい洪水、ヒートウェーブ、大寒波が世界各国で起きている。環境が暴力的に激変しつつあることを世界中のすべての科学者が警鐘を鳴らし、人々は自覚するようになっている。

2020年の災害の深刻さは特筆するに値するが、今年だけではなく確かにここ10年で地球環境が過激になっているのは誰もが感じているはずだ。自然災害が年々「激甚化」しているのを否定する人はいない。

マグニチュード7.0規模の地震が起きても、もう私たちはまったく驚かなくなっている。また、世界のどこかで超巨大ハリケーンが来ても、大洪水が来ても、気温が50度になっても、大豪雪が来ても、「またか」で終わっている。

アメリカでも超巨大ハリケーンが毎年のように被害を出している。恐らく、これからもハリケーンが大都市を破壊していくだろう。しかし、あまりにもしばしば起こるので、天災の巨大化と被害の大きさには、どこか麻痺してしまったような感覚になっている。

地球環境が苛烈になっているのだが、私たちは慣れてしまって、まるで何も変わっていないようにすら感じるのだ。

しかし、ある臨界点を超えると生存環境ががらりと転換し、今まで通りには暮らせなくなり、そこで初めて人類は存続の危機に陥っていることを知るようになるのかもしれない。

たとえば洪水と干魃が繰り返し続き、蝗害(こうがい)まで重なると、ほとんどの国で農業が成り立たなくなる可能性もある。

あるいは、中国のように洪水が都市や村を水没させたり、東南アジアの国々ように大洪水で首都が水没するようなことになると、首都であっても遷都しなければやっていけなくなる可能性もある。

事実、インドネシアの首都ジャカルタは毎年一部が25センチずつ沈没しているので、首都移転が決定して2024年からカリマンタン島に移転が始まる。

ただ、最悪の場合、それだけでは済まない可能性もある。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

石器時代に戻ったり高度文明になったりしている?

地球環境は一定しておらず、人類の生存もしばしば危機に陥っているのは考古学者が最もよく知っている。

人類の最初の祖先とされているのはエチオピアで発見された約400万年前の女性の化石人骨だと言われていた。身長約120センチ、体重は26キロと推定される。非常に小柄な女性であることが分かる。この祖先は「ルーシー」と名付けられて、長らく始祖の扱いだった。

しかし、それよりも100万年以上も前に、森林地帯に生息して直立歩行していた猿人がいたと2009年に発表された。ラミダス猿人と名付けられ、発見された骨は「アルディ」と呼ばれている。

今後の調査によってもっと古い始祖が見つかるかもしれない。人類の起源は、どの説もまだ完璧ではない。

ところで、400万年前というと、どのような時代だったのだろうか。それは、まだ氷河が地表を覆う前の時代だったようだ。生物が生存しやすい環境だった。

しかしその後、4回に渡って氷河は進出と後退を繰り返して多くの生命を絶滅に追いやっている。温暖期から氷河期、氷河期から温暖期に入るときというのは、地球には非常に激しい激変が続く。

特に氷河期の終わりは、大洪水と火山のような活動に見舞われて生物のほとんどが死滅する。極端な寒冷と大災害の中で生物は死滅し、ほとんどの人が生きていけなくなるのだ。

しかし、温暖期が来ると、生き残った人間が再び繁殖していき、農耕も生まれてくる。農耕が自然発生したものなのか、それとも高度文明の生き残りがいて広めたのかは分からない。古代の歴史を見ると、農耕は突如として「発見」されて、再び人類は数を増やしている。

考古学者の中には、過去に現在の文明を上回る高度文明があったと言う人もいるのだが、人間の歴史は地球環境の悪化や安定の中で、石器時代に戻ったり高度文明になったりして、それを繰り返している可能性がある。

インドの貧困層の女性たちを扱った『絶対貧困の光景 夢見ることを許されない女たち』の復刻版はこちらから

災害の巨大化は誰にとっても他人事ではない

現在、私たちは中国発コロナウイルスによってグローバル経済が寸断に近い状態になっている光景を目にしているのだが、多くの科学者は「コロナウイルスが最後のパンデミックではなく、今後もさらなるパンデミックが起きる可能性は高い」と述べる。

なぜか。人間の人口が増え、ジャングルを開拓することによって今まで野生動物に寄生していたウイルスが人間に転移する確率が高まっているからだ。新たなウイルスはコロナよりもはるかに悪質で危険で致死率が高いかもしれない。

その上に、地球温暖化が原因なのかどうかは別にして、地球の環境がもっと激しく変化したら、文明は繰り返し破壊が続いて疲弊し、臨界点を超えると修復が不可能になることも想定される。

予想もしなかった災害も現れるだろう。そもそも、バッタの大群も気候の変化で砂漠に長雨が降り、それが原因でバッタが大量繁殖したのが原因でもある。

気象の異常によって起こるのは、豪雨・豪雪・ハリケーン・台風・ゲリラ雨・干魃・熱波・洪水・海面上昇だけでなく、地球上を覆い尽くすような蝗害被害も生まれるということを私たちは目にした。

現代文明も脆弱だ。先進国が災害によって崩壊したら、超ハイテク文明は維持できなくなって一気に崩壊する。文明は複雑になればなるほど、その一部が失われただけで全体がドミノのように瓦解する。技術が継承できないからである。

私自身は自分の生きている数十年の間は文明が崩壊せず資本主義も続く方向に賭けているが、100年のスパンで見るとどうなっているのか分からない。

巨大になっていく災害は、いずれ人間が構築した都市や村の大規模破壊を想定を超える規模で生み出し、現代文明に致命的なダメージを与えるとしても不思議ではない。

次の巨大自然災害がいつ来るのかもやはり様々な仮説があるが、今の私たちの文明はそれぞれの大陸の「沿岸部」に存在しているので海の底に沈んで痕跡すらもなくなる可能性もある。

災害の巨大化は誰にとっても他人事ではない。今後、何でも起こり得ると私たちは覚悟しておくべきではないのか……。

『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの(ジャレド・ダイアモンド)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

一般カテゴリの最新記事