EUの危機的な状況。多文化主義を巡る対立はさらに起きて2020年以後に爆発する

EUの危機的な状況。多文化主義を巡る対立はさらに起きて2020年以後に爆発する

ヨーロッパ各国の国民は、移民・難民問題が非常な軋轢を産み出して後戻りできなくなっていることに気がついた。とにかくこのまま放置しておけば、ヨーロッパのキリスト教徒たちが数に負けて追い出されかねない。この対立こそが極右政党の躍進という形で表出しているのだが、2020年以後も大きな衝突や、爆発的な対立となってヨーロッパを震撼させることになる確率は高い。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

すべて否定するバリバリの保守派政党が台頭

昨今のEU(欧州連合)で何が起きているのか。

ドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進し、イタリアでは「レーガ」が躍進し、オランダやオーストリアでは「自由党」が躍進し、フランスでは「国民連合(旧・国民戦線)」が躍進した。

ポーランドは「法と正義」が躍進し、ベルギーでは「フラームス・ベランフ」が躍進し、スウェーデンでは「スウェーデン民主党」が躍進した。

これらの躍進した政党はすべて欧米のマスコミからは「極右」と言われている「反グローバル主義」「反イスラム」「反移民・難民」の政党である。

何が起きているのかは明白だ。移民政策・グローバル主義・多文化主義は、ユーロ圏において大失敗に終わり、これらをすべて否定するバリバリの保守派政党が台頭しているのである。

民族の融合はできなかった。国民が明確にそれを否定している。

世界の支配者層は、数十年に渡ってグローバル・メディアによって多文化主義を説いていた。アメリカのような人種の坩堝が手本にされて、まずはユーロ圏もそうなるように実験的に「ユーロ」がスタートした。

1999年からは通貨も統合され、2001年から実際にユーロという貨幣が発行されるようになっていった。

ユーロ圏=ヨーロッパ合衆国の構想は、もともと国民の間からは激しい反発があった。こういった統合は、地域社会や文化を破壊するものだと認識されていたのだ。

しかし、経済統合によってアメリカと並ぶ市場が生まれて、ヨーロッパは再度、停滞から脱して世界の中心になるという「夢」ばかりが語られて、それは強行された。

その流れに沿ってユーロ各国は長らく移民を受け入れ続けたが、ユーロ各国は「もう、うんざりだ」と激しく声を上げるようになっているのである。

肝心な経済統合も、うまくいっていない。経済規模も情勢も違う各国が単一通貨を持つことによって、逆にその国に密着したきめ細かい経済対策が不可能になってしまったのだ。

その結果、EU内で格差も生まれてきて、それがユーロ全体を停滞させるという統合の負の面も目立つようになってきた。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

異なる文化、異なる宗教、異なる民族

異なる文化、異なる宗教、異なる民族。世界はすべて、この3つの差異で分断されている。しかし、グローバル化が進むにつれて人々は共存を無理強いされるようになっていく。

グローバル主義の人々は「多文化主義」という言葉を生み出し、これに反対する人間をマスコミは一方的に「差別主義者」と定義、さらに移民に反対する政党は「極右政党」とレッテルを貼った。

ひとつの国の中に「多文化」があっても、うまく共存共栄していけるはずだ、というのが多文化主義である。

ところが、この美しい理念とは裏腹に、多文化主義は次々と深刻な社会問題を引き起こしている。EUの全域で人々はこのように叫んでいる。

「失業問題はイスラム系移民の増加のせいだ」
「治安の悪化も移民が増えたからだ」
「働かない移民が福祉を食いつぶしている」
「ドラッグも移民が持ち込んで蔓延させている」

こういった状況の中で、中東では過激なイスラム武装組織が超過激な暴力を展開するようになり、過激さに惹かれたイスラム教徒の一匹狼がユーロ各国でテロ事件を引き起こす日常がEUに生まれた。

「テロに負けない」とEU諸国は宣言したが、テロの恐怖に怯える国民はこのように考えるようになっていた。

「そもそも、最初から移民を入れなければこんなことにならなかったのでは?」

そのことに気づいた国民がマスコミが「極右」と罵る保守派政党を支持するようになり、それが一大潮流になっていったのである。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

イスラム教徒は共存共栄には関心を持たない

グローバル主義の流れに乗り、イスラム教徒は「移民」「難民」としてヨーロッパになだれ込んでいった。

しかし、大多数のイスラム教徒は、まったくキリスト教徒の作り上げた「自由・平等・博愛」に感銘を受けていない。また、性の自由化や女性の解放など、イスラム教徒にとって、単なる堕落でしかない。

だから基本的にキリスト教の価値観で固まっているユーロ圏の中で、彼らは同じイスラム教徒たちと固まって、異国でイスラムの文化を守り続けることになった。

イスラム教徒は、ヨーロッパのそれぞれの国の中で異質なイスラム地区を作り出した。彼らはメッカに集い、イスラムの精神的指導者の声に耳を傾ける。共存共栄には関心を持たない。

日本ではほとんど報道されていないのだが、EU諸国ではイスラム移民がユダヤ人を激しく罵倒したり罵ったり暴力を振るったりする行為が続出している。寛容主義で受け入れた移民はまったく寛容ではなく、異国で他の多民族を迫害するのである。

その国の文化を受け入れず、福祉を食い潰し、治安を悪化させ、自分たちの差別は許さないのに自分たちは他を差別する。

それが受け入れ側の国の苛立ちとなって現れ、イスラム排斥や、ブルカ禁止や、移民規制となって噴出していく。女性の身体をすっぽりと覆うブルカを嫌うヨーロッパ人は多いが、イスラム教徒は決してこの習慣をやめることはない。

こうした移民たちはイギリスをも覆い尽くしている。

イギリスは2019年11月現在もいまだブレグジット問題を解決できていないのだが、元はと言えばこのブレグジット問題も移民の大量流入を嫌うイギリス人たちが国民投票で決めたものだった。

「移民が国内を混乱させている」と考える人がブレグジットを支持している。

地獄のようなインド売春地帯を描写した小説『コルカタ売春地帯』はこちらから

ユーロは「劇薬」を大量に混ぜてしまった

宗主国のほとんどは、植民地の人たちを何らかの形で国内に取り込んでいる。彼らは祖国から家族や親族を呼び寄せ、爆発的に増えて行く。そして、地域を、街を、国を、乗っ取って行く。

ベルギーでも「ブルカを捨てろ」と言った議員が暗殺対象になるほどの文化的衝突を起こしている。

オランダでもブルカ禁止や移民受け入れの半減が政策として合意されている。オランダもまた国内のイスラム化が深刻な問題になっているのだ。

ヨーロッパ各国の国民は、移民・難民問題が非常な軋轢を産み出して後戻りできなくなっていることに気がついた。とにかくこのまま放置しておけば、ヨーロッパのキリスト教徒たちが数に負けて追い出されかねない。

この対立こそが極右政党の躍進という形で表出しているのだが、2020年以後も大きな衝突や、爆発的な対立となってヨーロッパを震撼させることになる確率は高い。

現在のグローバル主義を旗印にしたエスタブリッシュメントは必死でこうした反移民・反ユーロの政党が政権に就くのを妨害している。

しかし国民が雪崩を打って反移民・反ユーロに傾いている今、もはや現在の為政者はグローバル主義とユーロを守り切れない。EUの支配者であるドイツでも保守政党が躍進してメルケル首相の求心力は低下していく一方になっている。

異なる文化、異なる宗教、異なる民族。

こういったものはひとつの国の中で、融合して互いに共存共栄できるという幻想は急激に打ち砕かれている。多文化共生など机上の空論に過ぎなかったのである。しかし、もう遅い。

いったん国に入り込んだ移民は出て行くことはない。そのため、いろんなものが絡みあって「究極の対立」へと突き進んでいく。多文化主義を巡る対立はさらに起きて2020年以後に爆発する。

亡国トラップ─多文化共生─
『亡国トラップ─多文化共生─ 隠れ移民政策が引き起こす地獄の未来(鈴木 傾城)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

多文化共生カテゴリの最新記事