超巨大災害で大都市は丸ごとインフェルノ(地獄)になってしまう可能性もある

超巨大災害で大都市は丸ごとインフェルノ(地獄)になってしまう可能性もある

今年の「夏」は統計データが残っている1898年以来のどの年よりも気温が高く「観測史上もっとも暑い夏」と気象庁は発表した。たしかに今年は尋常ではなかった。9月も半ばに入った今も暑さが続いている。この異様な暑さは毎年続く。いずれ大都市は地獄になるのではないか?(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

過去に例のない豪雨や台風も苛烈になっていく一方

2023年の「夏」は統計データが残っている1898年以来のどの年よりも気温が高く「観測史上もっとも暑い夏だった」と気象庁は発表している。たしかに今年の夏は尋常ではなかった。9月も半ばに入った今も暑さが続いている。

「災害級」と述べる専門家もいたが、まさに今年の暑さは災害だったのだ。残念なことに、この暑さは毎年のように過酷になる。そして、過去に例のない豪雨や台風となって、人々に大きな災厄を与えていく。

自然災害の激甚化は、すでに全世界で見られている。

あちこちの国で「今まで見たことがない」というようなゲリラ雨が町を浸水させ、ハリケーンが街を飲み込み、巨大な洪水がすべてを押し流し、山火事が大規模に広がっている。

カリフォルニアの大規模な山火事はもはや「恒例」のようになっているし、今まで大規模な火災などなかったはずのブラジルのアマゾンですらも燃えて止まらない。アマゾンの森林火災で森林の再生ができなくなると、「アマゾンが砂漠化する」とも専門家が警鐘を鳴らしている。

インドや中東では、しばしば50度を超えるような熱波(ヒートウェーブ)が襲いかかり、アメリカでも50度を越える最高気温を記録するようになった。カリフォルニア州とネバダ州の境目に位置する国立公園では54度という温度となっている。

欧州でも40度超えが点在して、うだるような気温の中で人々が熱中症で何百人も死んでいく。専門家が言うには、この殺人級の暑さは夏になるたびに繰り返されると言うのだ。理由は諸説があるが、地球は暑くなってきている。

そして、気候が狂っている。

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日本でもデング熱、コレラ、マラリア、チフス

九州地方は「まぎれもなく熱帯そのもの」になっていくと推測する学者もいる。いわゆる「日本熱帯化説」である。

10年ほど前までは「いや、そんなことあるわけがない」と日本人は高をくくっていたが、2023年の今は「そうなるかもしれない」と誰もが思うようになってきている。

気温が今後も上がっていくと、九州で熱帯でしか見られない動植物が増えていき、それに伴って熱帯の伝染病も広がっていく事態になりかねない。デング熱、コレラ、マラリア、チフスのような熱帯の疾病が、日本に定着する可能性もある。

激しい暑さはゲリラ豪雨を呼ぶが、ゲリラ豪雨はあちこちに水たまりを作る。この水たまりがマラリア蚊などを大量発生させる。

ここ最近はデング熱が日本で確認されるようになっているが、それもこの暑さとは無関係ではないはずだ。日本が熱帯化していくと、これが日本でも恒常的に見られる病気になっても不思議ではない。

そもそも、ゲリラ雨自体も、亜熱帯の気候の特徴である。

日本の気候が変わりつつあるというのは、別に日本だけに起きている特異な現象ではない。地球規模で起きている気象の異常に日本も巻き込まれているというのが正しい。

一方で、冬は冬で文明を停止させてしまいかねないほどの豪雪や寒波がやってくることも予測されている。激しいブリザードが都市や町を孤立化させ、インフラをも破壊してしまうこともあり得る。

このまま異常気象が続くと言うのは、もはや確約されている未来である。長い時間をかけて、気候が徐々に変わっている。

地震や台風や熱帯化で人類が全滅することはない。しかし、巨大な自然災害が広範囲に続くと、現代文明に計り知れないほどの大きなダメージを与えるので私たちはその深刻な影響から免れない。

同時多発的な世界災害がいったん起きて、穀倉地帯が壊滅すると、全世界で食糧危機が勃発する。食糧高騰で食べるものが物理的になくなり、経済が混乱し、国家すらもあてにならなくなる。

そうなると、世界中で追い込まれるのは「都市部」である。

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タワーマンションは巨大な墓石になる?

覚えているだろうか? 2019年10月の一連の台風は大都市・東京にも被害をもたらしたのだが、氾濫した川のために武蔵小杉のタワーマンションが地下の電気系統の設備への浸水で停電と断水が発生したことが注目された。

タワーマンションで停電した時、上階の人はもはや人力で上り下りするしかない。体力のない人や高齢層や子供は、上階の自分の部屋に辿り着けなくなってしまった。

そして、上階の自分の部屋に辿り着いても、そこはトイレも使えず電気も点かず水も出ない空間になっていた。

巨大災害でインフラが遮断した時、タワーマンションは「地獄」になってしまうのである。ある意味、巨大な墓石みたいなものだ。誰もそこには住めない。

この時の災害では都市中心部では問題なかったが、首都圏の「地下神殿」とも言われる調節池(首都圏外郭放水路)も水が9割に到達して危機目前の状態であったことが報告されていた。

災害の規模がさらに大きければ、首都圏は麻痺していた可能性もある。

2019年は、かろうじて乗りきった。

しかし、今後も大規模な台風や豪雨は繰り返し襲いかかってくるわけで、常にギリギリで対処できるのかどうかは保証の限りではない。いつか、人知を超える災害が東京を襲いかかって首都圏を麻痺させるかもしれない。

都市は流通で生きている。しかし、食べ物が流通しなくなる。流通しても価格高騰で手に入らなくなる。その結果、流通の集積地である「都会」が真っ先に甚大な被害に遭う。

都会は生産を重視しているのではなく、消費を重視する場所なのである。消費するものが流通しないのであれば、都会で生きていくことはできない。

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大都市だけは死守できると思っているのか?

これからも巨大災害は次々と襲いかかってくるが、この気候の変化は地球の活動が自律的に変化しているものなのか、それとも人間の経済活動が引き起こしている人災なのかが激しく議論されている。

もし、巨大災害の原因が人災であったら人類は自然破壊を止めるだろうか。それは期待できそうにない。

人間の文明はありとあらゆる地球の資源を開発し、食い尽くすことで成り立っているので、資源獲得は環境破壊とセットになっている。文明の発展は、環境の破壊で成り立っている。

現代文明は異様なまでに「経済」を優先した文明であり、環境保全よりも利益獲得の方が重要視される。

アマゾンの森林は、それを守っても1円にもならないが、それを開発したら森林も売れるし、土地も売れるし、農作物を栽培したら農作物も売れる。土を掘って何かの資源が出てきたら、人類はためらうことなく掘り尽くす。

つまり、人類は環境破壊を厭わない。

「経済優先主義が地球環境そのものを破壊して地球の環境を変化させ、それが全世界で全域で気象異常・大規模災害となって現れている」というのが真実であるとすると、現在の災害はまさに人類の自業自得でもある。

この現代文明の経済優先主義によって最も繁栄したエリアが「大都市」だ。

この大都市こそが自然破壊を生み出している現代の象徴なのだが、自然破壊によって地球の環境がめちゃくちゃになった時に、大都市だけは死守できると人類は考えているのだろうか。

いずれ限度を超えた巨大な災害が大都市を飲み込んだ時、大都市は丸ごとインフェルノ(地獄)になってしまうのではないか。そうなるのは、そんなに遠くない未来だと思わないだろうか?

カリマンタン島のデズリー
ブラックアジア的小説『カリマンタン島のデズリー: 売春と愛と疑心暗鬼(鈴木 傾城)』

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