人類が2050年に崩壊する前に、自然と共存できる文明の「再構築」が急がれる

人類が2050年に崩壊する前に、自然と共存できる文明の「再構築」が急がれる

シンクタンクの報告書に拠らなくても、自然が破壊され続けると、いずれかの地点で、人間は自然に復讐されると私たちは誰でも常識的に考えて思うはずだ。世界のどこかで起きている自然破壊と異常現象は、単にそのエリアだけで収まるものではなく、周辺国を通して全世界に広がっていき、やがては地球全体が環境破壊の影響で苦しむことになる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

3443カ所で約32万8000ヘクタールの森が消失

私の小説『カリマンタン島のデズリー:売春と愛と疑心暗鬼』は、煙害(ヘイズ)の場面から始まる。シンガポールでインドネシア女性とふたりでいた時、シンガポールは呼吸が苦しくなるような煙で覆われていた。それはインドネシアから流れてきたものだった。

この場面は小説であるが、現実に私が体験した話でもある。空想ではない。

この小説の裏側の主軸になっているのは煙害(ヘイズ)である。インドネシアのカリマンタン島(ボルネオ)は、今もヘイズで問題を起こしている。

インドネシアの自然はとても美しく、山の中腹で車を停めてもらって身体を休めながら自然を見つめると、世界から隔絶されたような気持ちになっていく。

私はインドネシアの山の中腹にある村に行って、テラスで怠惰な時間を潰しているときは、たいていは山の向こうの遠くを見つめ、木々の葉が風に揺らめくのをじっと見つめて時間を過ごしている。

こういった自然は、世界中で開発されて猛烈なスピードで消えているのだが、インドネシアにいるとあまりにも自然が豊富でそれを忘れそうになる。

しかし、インドネシアでもジャングルが猛烈な勢いで消えているのは、もう誰もが知っている。アジア最大の熱帯雨林であるボルネオ(カリマンタン島)では乱開発が禁止されているが、法律無視の人間たちが乱開発し、森林を破壊し、野焼きですべてを燃やし尽くしている。

2019年9月20日。野焼きと森林火災によって、インドネシアのスマトラ島とカリマンタン島の計3443カ所で約32万8000ヘクタールの森が消失し、呼吸困難で数十万人が病院に運ばれたことが国際ニュースになっていた。

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煙害で真っ赤に染まったインドネシア

森林消失のスピードは、ますます加速

16歳の活動家グレタ・トゥンベリが怒り涙ぐみながら演説したことや、小泉進次郎が「地球温暖化の問題の解決にはセクシーに取り組む」と言って具体策を問われて沈黙してしまったことが話題になっている。

こうした胡散臭い登場人物が売名と滑稽なパフォーマンスに明け暮れている間にも、その裏側でリアルな自然破壊が起きている。

自然破壊は地球レベルで進んでいる。南米アマゾンも凄まじい森林火災が鎮火せずに国際問題になっているのだが、インドネシアや南米だけでなく、アフリカでも自然破壊が止まらない。

破壊されていないところは、もはや「皆無」である。

アマゾンやボルネオのジャングルは広大だが、今のまま伐採や野焼きや開発を続けるのであれば、あと数十年もすれば「消失」してしまうというのは科学者が常に主張している通りである。この森林消失のスピードは、ますます加速している。

アマゾンでは毎年、8,147平方キロ近くのジャングルが消失している。これは東京都の3.8倍の面積だ。ボルネオでは保護されているはずの国立公園の森林でさえ半分以上が違法に伐採されて、野生動物の多くが絶滅危惧種となった。

オランウータンはマレー語で「森の人(オラン=人・ウータン=森)」という意味だ。森がなくなっていくのだから、森の人オランウータンもやはり生息場所が減少し、絶滅の危機に瀕している。このままでいくと10年後には絶滅する可能性が高い。

現在の世界文明は、自然破壊の上で成り立った文明である。資源を取るために、ジャングルは容赦なく破壊されていく。しかし、ジャングルをすべて消失させてしまった時点で、人間自身も消失しなければならなくなる。

植物は二酸化炭素を酸素に変換させ、多くの野生動物を保護し、人間に多くの恵みを与えてきた。

その恵みが消えてしまうからだ。

もっとも、「人間の活動が自然環境を破壊して人間が住めないような世界を作っている」という主張に対しては賛否両論がある。ドナルド・トランプ大統領のような人物だけでなく、多くの人々が否定している。

「地球温暖化の原因は人間ではないから自然破壊に対しては心配しなくてもいい」と述べる人もいて、その意見も支持されているのだ。必ずしも人類も一枚岩ではない。しかし、こと森林破壊については、致命的な事態が進んでいるというのは間違いない。

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現代文明は2050年に終わってしまう可能性

世界各国のジャングルが数十年で消失するのであれば、人間を取り巻く自然環境は激変するということでもある。森林が消えて「良い方向に向かっている」と思う人はいないはずだ。土地は砂漠化し、異常気象が今よりもずっと深刻になり、人間の生存環境は悪化する。

数十年と言えば、「すぐそこ」の話である。

それでも人間は現在の文明を維持するために、激しい環境破壊をやめず、そのペースは年々拡大していく一方だ。日本は少子化に苦しんでいるが、地球全体で見ると途上国の人口は爆発的に増えていき、比例して環境破壊も増加していく。

環境破壊の99%は人間が行っているとも言われているが、人口が増えれば環境破壊もまた進行していく。

現在は、世界全体で推定74億人の人口を抱えているが、この数字は今のところ増えることはあっても止まることはない。自然破壊は加速し、人口も増加していき、資源も急激に失っていく。その結果がどうなるかは、それほど難しく考えなくても分かる。

2019年6月7日。ニューズウィークは、豪メルボルンの独立系シンクタンク「ブレイクスルー」の報告として『2050年人類滅亡!? 豪シンクタンクの衝撃的な未来予測』という記事を書いている。そこにはこのように書かれている。

『2050年までに気温が3度上昇する。1.5度の気温上昇で西南極氷床が融解し、2度の気温上昇でグリーンランド氷床が融解する』

『気温が2.5度上昇すると、永久凍土が広範囲にわたって消失し、アマゾン熱帯雨林は干ばつに見舞われて立ち枯れる。ジェット気流が不安定となることで、アジアや西アフリカの季節風にも影響が及び、北米は熱波や干ばつ、森林火災など、異常気象の被害を受ける。陸地面積の30%以上で乾燥化がすすみ、南アフリカ、地中海南岸、西アジア、中東、米国南西部、豪州内陸部で砂漠化が深刻となる』

最悪の場合、現代文明は2050年に終わってしまう可能性すらも、この報告は示唆しているのである。

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自然と共存できる文明になって欲しい

シンクタンクの報告書に拠らなくても、自然が破壊され続けると、いずれかの地点で、人間は自然に復讐されると私たちは誰でも常識的に考えて思うはずだ。

世界のどこかで起きている自然破壊と異常現象は、単にそのエリアだけで収まるものではなく、周辺国を通して全世界に広がっていき、やがては地球全体が環境破壊の影響で苦しむことになる。

「人間こそが地球の癌だ」とはよく言われるが、それはもしかしたら本当のことだったのかもしれない。

シンクタンク「ブレイクスルー」は、今から正しい手を打たないと『最悪の場合、人類文明が終焉に向かうかもしれない』と述べているのだが、私たちは「大袈裟だ」と一笑に付すことができるのだろうか。

シャーレの中のバクテリアは栄養素がある間は爆発的に増えていくのだが、あるとき栄養素をすべて食べ尽くすと、一気に死滅する。増えるだけ増えるのだが、絶滅するときは一瞬なのである。

だとしたら、ある時点で増えすぎた人間が突如として絶滅する時代が来たとしてもおかしくない。

膨らみきったバブルが崩壊するのは経済現象のひとつだが、人間の人口爆発も一種のバブルなのだから、ある時点でバブルは崩壊すると考えるのは自然だ。

人口バブルが崩壊するというのは、急激な人口減少のことである。それはすなわち人間の絶滅を指す。最期の局面で、人間同士が殺しあうのか、それとも災厄で死んでいくのか分からない。

しかし、このまま自然破壊・環境破壊を続けていると、未来に大きな災厄が待ち受けているというのは、だいたい想像がつく。人間は大自然に寄生して、バクテリアのように増殖していったのだから、寄生する自然が死んだら、バクテリアのように絶滅してしまう。

自然を愛し、敬い、大切にする心を持っている人は世界中にたくさんいる。日本人は、自然の中に八百万神(やおよろずのかみ)がいると語って自然を大切にするが、言葉や姿勢は違っても、同じように自然を愛する民族はたくさんいるはずだ。

そういった民族の誰かが強い影響力を持てば、あるいは自然破壊が止まるのかもしれない。

自然と共存できる文明になって欲しいと心から願っている。

カリマンタン島のデズリー
ブラックアジア的小説『カリマンタン島のデズリー: 売春と愛と疑心暗鬼(鈴木 傾城)』

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