『忍耐に対する報酬』が得られなくなる国で、誰が一生懸命に働くというのか?

『忍耐に対する報酬』が得られなくなる国で、誰が一生懸命に働くというのか?

経済成長しない国になると、間違いなく忍耐を軽視する人たちが増えていく。必死で働いても豊かになれないなら『忍耐に対する報酬』が得られないのだから、忍耐しようと誰も思わない。「必死で働いても将来は貧乏ですよ」と言われたら、誰が必死で働こうと思うのか。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

『忍耐に対する報酬』を意識するのは大切だが……

世の中の多くは『忍耐に対する報酬』で成り立っている。種を植えて実を得るまでは長い忍耐が必要だし、勉強して資格を取ったり学歴を取ったりするにも長い忍耐が必要だ。

仕事を始めて成果を出すにも忍耐が必要だし、貯金して大きな資産を貯めるにも忍耐が必要だし、投資をして成功するにも忍耐が必要だ。

誰かの信頼を得るにも忍耐が必要だし、才能を磨くにも忍耐が必要だし、地位を得るにも忍耐が必要だし、表現物を作り出すにも忍耐が必要だし、何らかの分野のプロになるのも忍耐が必要だ。何かを得る前に「忍耐」が必要だ。

それがゆえに『忍耐に対する報酬』を意識するのはとても大切なことでもある。「忍耐がなければ報酬もない」なのである。日本人はおおむね、この事実をよく理解している。だから日本人は忍耐強い人がとても多い。

しかし、悲しい事実もある。

「忍耐さえすれば、絶対に欲しいものが手に入るわけではない」のだ。それは残酷だが、現実の一面でもある。忍耐しなければ報酬は手に入らないのだが、忍耐しても100%報酬が手に入るわけではない。

もしかしたら「必死で忍耐したのに何も得られなかった」という虚しいことになってしまうかもしれない。「何も手に入らないのであれば最初から忍耐なんかしなければよかった」と思うかもしれない。

長い忍耐の末に無駄が分ったと言うのは、非常に大きな失望と絶望である。

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経済成長しない国ではどういう人が増えていくのか?

経済成長しない国、衰退していく国、未来の見えない国になると、間違いなく忍耐を軽視する人たちが増えていく。

例えば必死で働いても豊かになれない可能性が高いのであれば、『忍耐に対する報酬』が得られないのだから忍耐しようと誰も思わない。「必死で働いても将来は貧乏ですよ」と言われたら、誰が必死で働こうと思うのか。

忍耐は必要かもしれない。しかし、忍耐は「耐え、忍ぶ」と書くのを見ても分かる通り、それは快適なものであるというよりも、逆につらいものである。

自己統制も必要であるし、心の修行でもある。退屈で刺激がないことにも思える。それが忍耐である。

人がそれでも忍耐しようと思うのは、この忍耐が報われると大きな報酬があると思うからであり、この部分が得られる可能性が低いと人のやる気は生まれてこない。

経済成長しない国で働くというのは、どういうことなのかというと「必死で働いても豊かになれない」ということなのだ。衰退する未来のない国で働くというのは、「必死で働いても、もっと状況が悪くなる」ということなのだ。

それであれば「将来のために忍耐するだけ無駄」なのだから、経済成長しない国では将来のために忍耐しない人が増えていくのは当然のことである。

そこに思い至ると、経済成長しない国ではどういう人が増えていくのかが分かってくるはずだ。

「必死で働いて耐えたところで未来がない」と思うのであれば、もう将来のために何か努力・忍耐を重ねようと思うよりも、手っ取り早く欲しいものを手に入れようと思う気持ちの方が勝っていく。すなわち、思考が短絡的になっていくのである。

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ジャパニーズ・ドリームはとっくに消え失せた

日本は、これから力強く経済成長していく国なのだろうか。それとも逆に衰退してしまう国なのだろうか。

今の政治家の質や、少子高齢化の深刻化や、日本企業の競争力の喪失などを考えると、「これから力強く経済成長していく」と楽観的に思っている人はどこにもいないのではないか。

実際、日本はバブル崩壊以後、経済の衰退から抜け出せない国になってしまっている。1995年から2019年までの実質GDP成長率を見ても平均0.9%で1%の成長すらもできていない。実質賃金も上がらず、デフレからも脱却できず、国民はどんどん貧しくなった。

そんな中で政治家は、何かにつけて増税し、新しい税金を施行し、社会保険料も引き上げ続けて国民を「収奪」してきており、今や国民負担率は約48%となった。

今後は高齢者がさらに増えて日本の活性化は削がれ、社会保障費の増大はどこかで限界に達して日本を自壊させてしまうだろう。日本と言うのは、そういう国になってしまっているのである。

これは『忍耐に対する報酬』が日本では手に入りにくくなりつつあると言うことを意味している。

「一生懸命に頑張れば将来はリッチになれそうだ」というジャパニーズ・ドリームはとっくに消え失せた。それならば「わざわざ苦しい忍耐を自分に強いるのは馬鹿馬鹿しい」と今の若年層が思っても仕方がない。

だから、真面目に働かない若者が日本の底辺で増えていくし、「忍耐なんかしてられるか」と思う若者も増えていくし、どんな手段でもいいから手っ取り早く金を稼いで今すぐ楽しく愉快に生きようと思う若者も増えていく。

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ひったくり・強盗・強盗殺人・詐欺が多発する?

バブルの頃、「日本民族は優秀で勤勉で民度も高いので先進国であるのは当たり前で、これからもずっと経済大国の座は揺るがない」と考える人が大半であったことを私は今でも覚えている。

しかし、時代は変わった。

今では「日本が先進国であるのは当たり前」とか「経済大国の座は揺るがない」と思っている人の方が少ないのではないか。

まだ昔の感覚を引きずっている60代以上の年代の人たちには「日本は先進国である。今後もそうだ」と言う感覚はあるのだろう。しかし若年層はとっくに日本の未来を見放していて、「将来はもっと貧しくなってるかも」と思っている。

実際、あらゆる経済指標は日本の衰退を示しているわけで、もはや日本は手遅れになりつつある。若年層は『忍耐に対する報酬』は、もう自分たちに回ってこないと思うようになっている。

「真面目に働く? 馬鹿馬鹿しくてやってられない」と言うのが彼らの本音でもある。

そんなわけで一部の若者たちは、働くことを放棄して部屋に引きこもって社会との関係を断ち切ったり、そうでなくても手っ取り早く稼げるギャンブルや、暗号資産や、投資に名を借りた投機などに群がっていくようになっていく。

それがさらに悪化すると、ひったくり・強盗・強盗殺人・詐欺などの「手っ取り早く金を手に入れる」系統の犯罪が多発するようになる。怪しい闇バイトに応募して何十人もの若者が犯罪に駆り立てられるのを見るがいい。それはすでに起きているのだ。

多種多様な手口のレイプ事件も増えていくだろう。

『忍耐に対する報酬』が得られない国に突き進む日本の治安はもっと悪くなっていくし、そのような光景が普通になっていくと、ますます日本は経済的に落ちていき、先進国でもなくなっていく。

根拠なく「絶対にそうならない」と思う日本人は多いが、私は多くの途上国を見てきたこともあり、逆に日本がそうなったところで何ら不思議はないと思っている。

このような未来に歯止めがかけられるのか、それとも駄目になっていくばかりなのか、あなたはどう思うだろう。

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