タイのコロナ禍は今もなお鎮静化というには程遠いレベルにある。新規感染者数のピークは2021年8月14日の2万2000人超えで、政府も本腰を入れてロックダウンやワクチン接種を進めて行った結果、現在は1万4000人規模にまで落ちている。
しかし、それでも毎日1万4000人規模なのである。タイの人口は6963万人なので、これを日本に当てはめると一日約2万4127人近くが新規感染しているということになる。そう考えると、「落ち着いた」どころではないというのが分かる。
デルタ株は最初の株とは違って重症化しやすい傾向にあり、「ただの風邪」どころではなく、タイの病床も相変わらず危機的な状況にあって病院前のガレージでコロナ死している人たちも大勢いる。多くはワクチン未接種の人たちである。
すでに病院に行っても助かるかどうか分からないし、収容もしてくれないし放置されるのは分かっているので、田舎ではコロナに感染して半死半生の状態になっている高齢者などを寺院《ワット》が受け入れる体制になっている。
コロナに感染したホームレスも、病院に行く金もなく路上で見捨てられているので、こうした社会的弱者も寺院が引き取っている。
しかし、寺院では僧侶が献身的に患者を看てくれるとは言っても、そこは病院ではないので医療行為はない。体力のない高齢者などが寺院でコロナによって次々と死んでいくという悲惨な現状になっている。
こうした中で、もうひとつ問題になっているのはコロナ禍による失業者と貧困者の増大だ。タイは観光立国であり、多くの貧困層は観光客相手に商売をしていた。こうした人たちは2年に及ぶインバウンドの停止によって大打撃を受けている。
通常、不景気になったら彼らは田舎に帰って農業で事態が落ち着くのを待つのだが、今回はもう田舎も飽和してしまった。貧困層が稼ぐアテもなく社会に放り出されてしまっているということだ。売春ビジネス? もちろん……