◆連れ込まれただけで病気になりそうな「どん底の売春宿」とはこんなところだ

◆連れ込まれただけで病気になりそうな「どん底の売春宿」とはこんなところだ

人は誰でも衛生的で清潔で安全で心地良い場所にいたいと思うし、女性とふたりきりになるのであれば、なおさら清潔な場所が欲しいはずだ。しかし、世の中には貧困と格差がはびこっていて、貧困街にはそんな上品な場所は存在しない。

私自身も東南アジアの貧困街に長らく沈没してきたので、東南アジアの凄まじく不衛生な場所はよく知っている。

1980年代の終わり頃、タイの首都バンコクにあるヤワラー地区の場末の宿に泊まっていた頃は「こんなに薄汚い部屋は世の中でここだけではないのか」と思っていたのだが、あるとき「冷気茶室」と呼ばれる空間に言ったときは絶句したものだった。

暑くて蒸し返すような薄暗い部屋を見回すと、ベニア板の壁、裸電球、入口のカーテン、病院に置いてあるような殺風景なパイプのベッド、濡れた床、カビの匂い、タバコの臭い、精液の臭いが充満して、私の泊まっている場末の旅社(ゲストハウス)なんか天国に見えるほどひどい場所だった。

しかし、売春する女性たちはここで仕事をして、ここで暮らしていた。先進国から来た女性なら一日で気が狂ってしまうのではないかと思うくらい不衛生で薄汚れた場所であった。

「世の中にこれ以上ひどい場所はない」と私は長い間確信していた。ヤワラー地区の冷気茶室以下の場所なんか存在するはずはないと思い込んでいた。しかし、それは若さ故の無知だった。

世の中は、私が「世界最悪だ」と思った部屋以上に最悪の部屋がいくらでもあったのだ。それも、東南アジアや南アジア(インド圏)のあちこちにごく普通に存在していた。下には、いくらでも下がある。

貧困にはリミッターはなかった。地獄だと思っても、もっと下があった。

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