2022年頃から円安が定着していき、日本円の価値の低下がひしひしと感じるようになってきた。これによって、ドルを握りしめた多くの外国人が日本に「来襲」してきているのだが、もうひとつ考えなければならない動きがある。
それは、日本人も「高い賃金」を求めて海外に出ていく流れである。
オーストラリアなどで働きに出る日本人も大勢いるし、アメリカに行ってしまう日本人も増えた。とくにIT技術系などのホワイトワーカーは、もう日本で働いても評価されないので海外の方がいいと、サンフランシスコなどに面接に行く流れが出ている。
ブルーワーカーも運転手や調理師などがオーストラリアに出ていると聞く。それだけでなく、日本人の風俗嬢やセックスワーカーも、日本で稼ぐよりも海外で稼いだほうがワリに合うというので、香港やマカオで売春するようになってきている。
もう、冒険心のある日本人は、さっさと日本を見捨てている。それがデータとして表れているのが、外務省が出している『海外在留邦人数調査統計』である。2023年5月19日のデータでは、永住者がうなぎ上りに増えていると報告があった。
そのデータを分析してみると、2006年あたりから永住者が顕著に増加しはじめたのが注目に値する。2006年に何があったのかというと、貧困と格差が一気に鮮明化していた年だった。
政府が「構造改革」を叫び、派遣社員をどんどん増やして、多くの若者が正社員になれなくなってネットカフェ難民などがクローズアップされ、勝ち組・負け組という区分けができた頃だった。
政治は混迷していた。自民党はもう駄目だと吐き捨てられ、民主党が伸張していた時期でもあった。そういう日本を尻目に、一部の日本人は黙って静かに日本を捨てていた。それが右肩上がりに増えていくようになり、一度も前年を下回らずに「日本を見捨てる」動きが起きていた。