私の知り合った風俗嬢のひとりは、「ある日、ものすごく印象的に残ったことがあった」と私に話してくれた。
「だいぶ前なんだけど、あるお客さんがついたんですよ。めちゃくちゃ早口の中年のおじさんだったんですけど、私から何も聞いてないのに、僕は東大卒業だとか言い出して学歴自慢する人だったんです。仕事でストレスいっぱいだから風俗で遊んでるんだとか。東大が本当かどうか知らないけど」
「東大卒でも風俗に通うのか……」
「それで面白いのは、次の日にお客さんのところに行ったら、今度は土方みたいな人がホテルにいたの。で、その人は飲んでて急にやりたくなったとか言ってたんだけど、途中で僕は中卒だから風俗で遊んでるとか言い出したの。私から何も聞いてないのに、東大だからとか中卒だからとか言って、前の日は東大で次は中卒。めっちゃ笑えるでしょ?」
「それで、どっちが好みだったの?」
「え? どっちも一緒。どっちも男だから」
彼女はそう言って笑った。確かに風俗嬢にはいろんな客がつくので、学歴の高い人間から低い人間までついてもおかしくない。しかし、一方が学歴を自慢するタイプで一方が劣等感を持つタイプで、一方が東大で一方が中卒であったというのは男の人生の対比としては興味深い。
しかし、彼女にとっては相手の男の学歴が何だろうと関係ないようだった。東大卒業であろうが、中卒であろうが、彼女がやることは同じだ。そういう意味で、彼女には学歴など、どうでもいいものだったのだろう。男は男であって、その属性が何だろうが関係ない。