人はなぜ、クリスマスや年末に自殺したくなってしまうのか

人はなぜ、クリスマスや年末に自殺したくなってしまうのか

欧米では、クリスマスの後に自殺が増える。

ヴィクトール・フランクルというユダヤ人の精神分析学者は、クリスマスになると自殺が増える理由として、「救済が来なかったから」という理由を挙げている。

欧米にとって、クリスマスというのはその年の「締め」となる。つまり、一年の総決算がクリスマスになる。

人生の瀬戸際で必死になって生きてきた人たちは、苦しみの中でもがき、戦い、そして何とか苦境から抜け出そうとずっと努力してきたはずだ。

しかし、人生は好転せず、救いは現れず、追い詰められて苦しみ抜く。そこにクリスマスがやって来る。人々は浮かれ、楽しみ、そして神に祝う。

苦境に堕ちた人たちは楽しそうな人たちの姿や街の光景を見つめて、自分にも救いが来るかも知れないと根拠もなく一縷の望みを託す。しかし、孤独の中でクリスマスを終えて、自分には救いは来なかったことを知る。

そして、心が折れる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

苦境を持ったまま年を越すのは耐えられない

クリスマスのシーズンになると自殺者が増えるのはオーストラリアも同じようで、オーストラリアの自殺防止のホットラインにも、クリスマス時期になると電話相談が通常の倍に増えると報告されている。

「一年の締め」には、誰もが希望を求めており、苦境を持ったまま年を越すのは耐えられないと思うようだ。最後くらいは希望が欲しいともがき、そして何も手に入らず、深く絶望してしまうのである。

クリスマスに自殺したり、死にたくなる人というのは、律儀で真面目な人である。

自殺する前の段階で、絶望と戦って、苦しんで、克服できなくて、その年の「区切り」に自分の人生を「区切る」のだから、ルーズな人ではない。

言うまでもないが、クリスマスに自殺すると言っても、突然クリスマスに何か災難に巻き込まれてしまったのではないのだ。苦闘の人生をクリスマスで精算するのである。

日本では「年末」という区切りが欧米のクリスマスに当たる。

日本でも、年末になると自殺が増えるとよく言われている。リーマン・ショックの余波を受けて経済的に大打撃にあった2009年には内閣府は「年末に自殺者が増える恐れがある」として対策を取ったことがあった。

にも関わらず、この年は自殺者は逆に増えていた。

自殺者の大部分は40代から60代の働き盛りの世代だったことからも分かる通り、経済的な苦境が自殺を誘発する。

疎外感や劣等感を感じ、それが乗り越えられない

その年が終わるというのは、クリスマスと同じように、日本人にとっても大きな「区切り」である。

その区切りの迎えて、苦闘してきた人は、「もうこれ以上もがいても、良くなることはないかも知れない」と思い始める。楽しそうにしているまわりの人たちと自分を較べて、大きな疎外感や劣等感や失意を感じ、それが乗り越えられないと思う。

自殺にまで追い込まれる人たちの苦境は、とても大きなものであることが多い。

自分では返せないほど大きな借金もある。自分ではどうにもならない生活破綻もある。あるいは、完治できる見込みのない病気を抱えて疲れ果てているかもしれない。また、介護の必要な肉親を抱えてにっちもさっちいかなくなった人たちもいる。

追い詰められると、どんどん思考能力が狭まってしまうのは、心理学的にも証明されている。

たとえば、経済的に追い込まれると、思考がどんどん浅くなってしまう。(ブラックアジア:「お金がない」ということ自体が、知能を低下させる理由

朝から晩まで心から離れない苦境にさいなまれ、どうすればいいのかずっと考え、解決方法が見付からずにあきらめ、それでも何とかしようと堂々巡りし、最後には精神的にも疲れ果て、そして心がつぶれてしまうのだ。

人は誰でも順調な局面ばかりではない。

どんな人生を生きていても誰でも大きな問題を抱えて、どう乗り越えていいのか分からないような絶体絶命に追い込まれることもある。

自殺に追い込まれていく人は弱い人ばかりではないし、努力が足りない人ばかりでもない。いい加減な人は逆に自殺しない。真面目に努力し、思い詰める人が、自殺していくのである。

誰もが必死で生きているのが今の社会である

自殺していった人たちを見て、「心が弱い」「努力が足りない」「私なら死なない」と嘲笑する人たちもいるが、世の中は精神的に強い人ばかりが生きているわけではない。

また、どんなに心が強くても、状況に押しつぶされて鬱病になってしまうこともある。鬱病が自殺を誘発するのはよく知られているが、鬱病の患者は日本に百万人もいるのだ。

そして、鬱病予備軍も入れると、その数はさらに数倍になるとも言われている。

人間関係、病気、経済的苦境に耐えられなくて、精神安定剤や睡眠薬やアルコールが手放せない人も多い。誰もが必死で生きているのが今の社会である。

今後、さらに激しい強者総取りと容赦ないリストラが横行する社会になると、集団主義の日本人がどんどん追い詰められるのは目に見えている。

ここに消費増税、福祉削減、年金削減によって締め付ける政府の動きも重なる。インフレもすでに起きている。どん底に堕ちてしまう人がさらに増えていく。

日本でも経済的にも追い詰められている人、生活に追い詰められている女性も増えているのは、これまでも何度も取り上げている。

これが、より深刻さが増して行く。

その中で、今まで余裕を持っている人たちも、気がつけばどん底に堕ちてしまうこともある。誰もが知らないうちにホームレスになってしまうことすらもあるのだ。

どこかの企業の管理職だと言って安泰だと思っている人間も、会社が傾けばすぐに失業者になって、次の仕事は見付からない。そういう人が追い込まれて自殺をする。

誰もが、不安定な足場に立って揺らいでいるのである。(written by 鈴木傾城)

 

どこかの企業の管理職だと言って安泰だと思っている人間も、会社が傾けばすぐに失業者になって、次の仕事は見付からないかもしれない。そういう人が追い込まれて自殺をする。

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