腐敗した警察官は権力を持った暴力団。そして世界は腐敗で満ちている

腐敗した警察官は権力を持った暴力団。そして世界は腐敗で満ちている

警察官は公僕であり、常に犯罪を取り締まるのが仕事であるはずだ。ところが、現実は必ずしもそうなっていない。

カネが絡めば、警察官も腐敗する。警察官という立場を利用してカネを稼ぐのは、実は「造作もないこと」だからだ。具体的に、どうするのか。犯罪者や弱者に向かって、こう言えばいい。

「逮捕されたくなければカネを出せ」

犯罪者や弱者でなくてもいい。普通の人にも何らかの言いがかりを付けて同じことを言える。抵抗すれば公務執行妨害で逮捕すればいい。警察権力は、悪用すれば「カネになる」のである。

日本もすべての警察官が正しいとは言えないのだが、国外の警察官の腐敗は日本人の想像を超えるものがある。

国外にいると、逆に警察官という存在に対して一抹の不安を感じるようになる。目の前の警察官が汚職と腐敗にまみれていたら、無実でも何でも不法逮捕されてしまうこともあるからだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

フィリピンの闇「ダバオ暗殺団」

2018年8月9日。フィリピンのドゥテルテ大統領は、重罪犯罪に加担した疑惑で捜査を受けている警察官102人を大統領府に呼び付けたことがあった。

この警察官は不法殺人、レイプ、拉致、恐喝や薬物密売などへの関与が疑われている汚職警官だった。ドゥテルテ大統領は、この「ならず者警察官」を前にしてこのように言い放った。

「このバカ者ども」
「犯罪行為を続けるのなら、殺害する」

一国の大統領が、不良警察官を102人集めて、その前で「このバカ者ども」「犯罪行為を続けるのなら、殺害する」と言うのだから尋常ではない状況だが、ドゥテルテ大統領のこの姿勢にフィリピン人は喝采を送った。

なぜか。フィリピン人たちは、常にこうした「ならず者警察官」に悩まされ、罪もなく撃ち殺されたり、カネを毟り取られていたからである。

これだけ見ればドゥテルテ大統領は「腐敗を許さない剛腕の大統領」のように見える。しかし、現実は複雑だ。

なぜなら、ドゥテルテ大統領は法を法とも思わない人物だからだ。この大統領は、自分の言うことを聞く警察官たちには超法規的措置を許すというダークサイドを持つ。

フィリピンには「DDS(ダバオ暗殺団)」と呼ばれる闇グループが存在する。

この闇グループは『ドゥテルテの指示に従い、犯罪者の一掃のために動く自警団のような殺し屋集団』であり、そのグループを構成するのが選ばれた警察官なのである。

彼らがドラッグ密売人を片っ端から殺して回っている。相手がドラッグ密売者であるとしても、警察官が連続殺人鬼のような行いをして、それを指揮しているのが一国の大統領であるというところにフィリピンの闇がある。

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警察は権力を持った暴力団

2018年10月。アメリカのメリーランド州プリンスジョージズ郡で、ひとりのベテラン警察官が逮捕された。この警察官は29歳の女性が運転する車を停止させて、「逮捕されたくなければフェラチオをしろ」と女性に強要していた。

アメリカは先進国であり、法治国家であり、民主主義国家であるが、それでも警察官はそれほど信頼されているわけではない。

一部の警察官は限りなく腐敗していて、気に入らない容疑者を銃殺したり、袋叩きにして殺したり、レイプ事件を起こしたりしている。白人警官が黒人の容疑者を簡単に殺すのは、毎年のように社会問題化している。

メキシコでもブラジルでも、警察官が不法な射殺やレイプを引き起こす事件が続発しており、それはもう事件でもない。日常である。

2019年6月17日、ブラジルのリオデジャネイロでは、3人の軍警官が『企業家や小売業者や麻薬の売人などを誘拐し、被害者らのキャッシュカードを使って物品を購入したり銀行口座から現金を引き出したりした上に、身柄を解放するために身代金を要求する』という事件を起こして逮捕されている。

警察官が「誘拐・強盗」を行うのがブラジルなのである。

メキシコ・チワワ州では、ドラッグでハイになった警察官が目を付けていた女性をレイプして、犯罪が発覚するのを恐れて女性を射殺するという事件も起きている。

インドでもインドネシアでもカンボジアでも、警察官がセックスワーカーをわざと拘束して「売春で逮捕されたくなければ、セックスをさせろ」と恐喝するような行為は当たり前にある。

彼女たちは黙ってそれに応じるしかない。インドネシアでは警察官に反発した女性が丸坊主されることもある。

アフリカでも警察官が売春する女性のところに行っては権力で脅して無理やり性行為をするようなことをしているというのを若いセックスワーカーが告発している。(セックスの仕事でも、仕事なの。ナイジェリア少女のつぶやき

セックスワーカーにとって、警察は権力を持った暴力団だったのである。

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見逃してやると言えばカネが取れる

2019年3月13日、タイ西部プラチュアプキリカン県で男9人と女3人がタイの軍と警察による合同パトロールによって真夜中に逮捕される事件があった。この12人はいずれもミャンマー人で、タイに密入国してきたところだった。

タイとミャンマーはジャングル地帯が国境になっているので、ミャンマー人の密入国の定番ルートである。

そのため、タイはひっきりなしにこうしたパトロールを行って取り締まりを続けている。しかし逮捕されるのは氷山の一角であり、ジャングルを越えて貧しいミャンマー人が大量にタイに流入してきて、多くが不法入国に成功する。

その中には、ミャンマーで迫害されているロヒンギャ族もいれば、ミャンマー政府や軍と対立している少数民族もいる。

タイは東南アジアでは「経済大国」である。だから、タイに密入国すれば稼げると周辺国の人間たちは考えて、危険を冒してタイに潜り込む。ミャンマー人だけではない。カンボジア人も、ラオス人も、タイを目指して不法入国してくる。

彼らを摘発するのが警察の仕事だが、世の中には正義だけで動いている警察官ばかりではない。このように考える警察官もいる。

「見逃してやると言えば、カネが取れるのではないか?」

実は、タイの密入国事件の裏にはタイ警察官による大がかりな「アルバイト」があることが分かっている。どういうことかというと、警察官が自ら人身売買業者となって、密入国者からカネを巻き上げるのである。

警察官は裏のルートをよく知っている。また、警察が「摘発に動かない日」も知っている。だから、警察官が絡んだ密入国はかなりの確率で成功する。そして、警察官はどこに密入国者を雇う企業があるのかも知っている。

腐敗した警察官にとって、人身売買業はまさに絶好の「小遣い稼ぎの場」だったのだ。

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うまい商売に目を付けた現地の警察官

2015年5月、ソンクラー県の山中に、人身売買の拠点にしていた場所が発覚したのだが、そこを捜索すると人の死体が33体も埋められていたという事件があった。この死体はミャンマーの少数民族、ロヒンギャ族の死体だった。

ロヒンギャ族はミャンマーで激しい迫害を受けている。ロヒンギャ族はミャンマーにいる数少ないイスラム教徒である。彼らは圧倒的多数の仏教徒に暴力的迫害を受けいているのだが、政府の保護もなく放置されている。

人権派のアウンサンスーチーも、ロヒンギャ族に関しては無視を貫いて見殺しにしている。ロヒンギャ族を叩き出せと煽る仏教徒のカリスマ「ウィラトゥ師」の影響力は非常に強く、ロヒンギャ族はどんどん追い詰められている。

こうした絶望的な中で、ロヒンギャ族はミャンマーの迫害から逃れて隣国タイに密入国する。

密入国のルートは陸路と海路の2つある。タイ南部は国境を接するマレーシアの影響もあって、非常にイスラム色の強い地域で、ロヒンギャ族はウンマ(イスラム共同体)を信じてタイ南部に渡っていくのだ。

こうした密入国者はタイに上陸すると、人身売買業者によって缶詰工場、海老工場、鶏肉工場等に売られて低賃金労働者として強制労働させられる。

こうした工場にロヒンギャ族の密入国者を「売る」というのが、現地では濡れ手に粟のビジネスになっているのである。勝手にやってきた人間を、然るべき場所に連れて行くだけで、紹介料が稼げる。

このうまい商売に目を付けたのが、現地の警察官だった。

警察官は本来はこうした密入国者を「保護」する立場にあるが、保護してもまったく金にならない。しかし、彼らを売り飛ばせば、いくらでも仲介料がもらえる。

汚職警察官は、弱者からピンハネするのが好きだ。弱者と言えば、密入国者は究極の弱者でもある。そんなロヒンギャ族は数万人単位でタイに密入国してきているわけで、まさに彼らの存在は警察官の「金のなる木」と化した。

やがて、それがパダンベサール市の市長バンジョン・ポンパーンの耳に止まると、今度はその市長が一緒になってそのビジネスに邁進した。

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辿り着いた先は、別の地獄

市長が一緒になって人身売買に手を染めるとは信じがたい事件だが、東南アジアでは市長がマフィアの親玉だったりして政敵の殺害に手を染めるような事件は頻繁に起きている。

2015年にこのタイ南部の人身売買ビジネスが発覚したとき、市長と警察官含め総勢8人、さらに間接的な関与をした警察官と公務員が7人逮捕されるという事態となっていった。

市長から警察組織までが、巨大な人身売買組織と化してロヒンギャ族を売り飛ばしていたのである。さらに、拘束したロヒンギャ族の家族にも身代金を要求して、人質ビジネスもしていたとも言われているので、もはやマフィアそのものだ。

隠匿場所は小屋のようなしっかりした建物ではなく、木の骨組みに布を張っただけの粗末なテントであった。他にもこうした隠匿場所は数十ヶ所が山中に存在していることが分かっている。

これが意味するのは、ロヒンギャ族を巡る人身売買はタイ南部の裏経済を支える巨大なビジネスであったということだ。

警察が腐敗すると、マフィア以上の恐怖組織と化す。公的な権力を持っている上に、組織立っているからだ。そこに金しか関心のない悪徳市長が絡むと、もはやその地域は一種の無法地帯と言っても過言ではない。

比較的、法が守られていると言われているタイでさえも、まだこのような状況である。

しかし、それでもロヒンギャ族はタイに流れ着く。

2019年6月12日。南部サトゥン県の島にロヒンギャ族が漂流するという事件が起きているのだが、この現場にはミャンマー人とタイ人もいた。彼らが人身売買業者であったのは言うまでもない。

ロヒンギャ族は殺されないためにミャンマーという地獄を離れるのだが、辿り着いたタイは決して天国ではなく、別の地獄でもある。そして、その地獄の使者は、腐敗した警察官の姿をしている。世界は腐敗で満ちている。

国外にいると、逆に警察官という存在に対して一抹の不安を感じるようになる。目の前の警察官が汚職と腐敗にまみれていたら、無実でも何でも不法逮捕されてしまうこともあるからだ。

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