コロナ禍が収束した後のバンコクのカオサン通りは、再び姿を変えてしまうだろう

コロナ禍が収束した後のバンコクのカオサン通りは、再び姿を変えてしまうだろう

外国人観光客というインバウンドにチューニングした街が生き残れないのは、もう仕方がない。カオサンはいずれコロナ禍が完全に収束したら、また一気に盛り返して復活を成し遂げるのだろうが、その時は新しい経営者が新しい店で呼び込むことになるので、コロナ以前とはだいぶ街の様子が変わってしまっていることだろう。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

営業努力で何とかなるようなレベルはとっくに消えている

タイを安く旅行するバックパッカーの多くはバンコクのカオサン通りに宿を取った。ここは安いゲストハウスが林立していて、それこそ1980年代から世界中のバックパッカーを呼び寄せていた地であった。

しかし、コロナ禍でこのカオサン通りもまた凄まじくダメージを受けてしまっていることがあちこちで報道されている。

カオサン通りの80%は外国人観光客で成り立っていたのに、その80%が消えてしまった今、営業努力で何とかなるようなレベルはとっくに消えている。カオサン通りは2020年6月頃にリニューアルしたばかりなのだが、何の意味もなかった。

今年の7月に入ってからタイは凄まじい勢いで感染者が増えていったのだが、9月も後半に入ってきて感染者が落ちているとは言っても、いまだに一日1万人を超えるスケールで新規感染者が増えている国である。

ただ、ワクチン接種を1回済ませた人は9月後半の現在は2950万人で人口の約42%が終わったということもあり、10月には感染者が急激に減少していく流れがやっと見えてきた。

デルタ株よりも悪質な変異種が再び広がらない限り、タイも今年中に感染者をぐっと押さえることができる希望も見えてきた。

しかし、それでも今年は観光客を世界中から受け入れるという状況になるわけではない。アメリカは一日の新規感染者数は約5万1000人、イギリスは約2万9000、ロシアは2万1000人、インドは約2万8000人、フィリピンは約1万6000人、マレーシアは約1万3000人……と、まったく収束していない。

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外国人観光客にチューニングした街カオサンのダメージ

タイがいくら観光立国であるとは言っても、こんな状況の中で外から観光客を大量に受け入れたら、再び感染者が爆発的に増えてしまうのは避けられない。

ということは、コロナ禍は収束に向かっていくが、それでも今年はどうあがいてもカオサン通りに人が戻って来るというのは考えられないということである。

すでにカオサン通りは閉鎖したまま倒産してしまった店ばかりだ。旅行代理店も潰れ、レストランも潰れ、数十年も続いてきたホテルも潰れ、マッサージ店も潰れ、ファーストフード店も潰れた。

かろうじて生き残っている店があったとしても、これから3ヶ月どころか半年近くも人が戻らないというのであれば、体力的に持たないだろう。コロナ禍が終わらないというのであれば、街も変わるのは当然だ。

もし、今も営業している店が何とか生き残れる方法があるとしたら、国内のタイ人を呼び込むことだが、この不景気の中で火が消えたようなカオサン通りをわざわざ来ようと思うタイ人も少ないはずだ。来ても週末だけである。

外国人観光客というインバウンドにチューニングした街が生き残れないのは、もう仕方がない。

カオサンはいずれコロナ禍が完全に収束したら、また一気に盛り返して復活を成し遂げるのだろうが、その時は新しい経営者が新しい店で呼び込むことになるので、コロナ以前とはだいぶ街の様子が変わってしまっていることだろう。

来年の前半はまだ難しいとは思うが、後半になってタイに向かえるほどコロナ禍が収束しているようであれば、私もタイに向かってスクンビット界隈やカオサンやパタヤがどう変わっていったのか見てきたいと思っている。

その頃に見るタイは、私が知っているタイなのか、そうでないのか、私自身も正直分からない。

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乱れた観光立国から脱却するとしたら今がチャンス?

観光立国としてのタイは、恐らく蘇るだろう。今までタイは数十年も観光立国としてやってきたのだから、たかが2年3年の中断でビジネスが劇的に変換するとは思えない。歓楽街も外国人観光客が戻って来たら同時に復活の狼煙《のろし》を上げるだろう。

しかし、コロナ禍が収束したら、タイは再び全力で観光立国に傾倒していくのだろうか。それとも、「コロナのような問題はまた起こる」と考えて、政府はタイを別の経済モデルに転換する努力を始めるのだろうか……。

インバウンドによる収入はタイのGDPの2割を占める。

外国人が落とす金に頼った経済モデルは、伝染病《エピデミック》ひとつで完全に破綻してしまうという学習が為されたわけで、それならばタイ政府も「新しい産業を開発した方がいい」と考えることもあり得るはずだ。

折しも、タイの外国人観光客頼りの歓楽街は世界中から顰蹙《ひんしゅく》を買っていたし、現在のプラユット首相も外国人が公然とタイ女性と「自由恋愛」する歓楽街を激しく嫌っていた。

タイをこうした乱れた観光立国から脱却させるとしたら、政府にとっては今がまたとないチャンスなのである。

インバウンドは崩壊し、外国人観光客はアテにできなくなり、国内ではすでに月収2710バーツ(約9000円)以下の貧困層が670万人を超えるような状況になっている。彼らを観光業から引き離して別の産業に就かせるには今しかない。

しかし、プラユット政権が熟考してタイの国のあり方を変えようとする動きは未だに見せていない。コロナ禍を奇貨にして、国を大きく変えようという兆しはゼロだ。「新しい産業を開発した方がいい」とはならないようにも見える。

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 雰囲気の違う国になっていたとしても驚かない

ゼロベースで新しい産業を振興して国の舵取りを変えるというのは並大抵のことではないし、それが成功するかどうか分からない。

政府としては「今は何とか耐えて、コロナ禍が収束したら一気にインバウンドで貧困者救済をするのが現実的」と思っているのかもしれない。

私自身は、コロナ禍が収束したらいつでもタイは過去と同じ姿に戻ると思っている。

ただ、タイ政府がここで急に目覚めて「新しい産業を開発してインバウンドモデルから脱却する」と真面目な取り組みを始めると、タイの歓楽街に従事する女性も減っていき、タイはハイエナにとっては面白味のない国になっていくに違いない。

次に私が訪れる時、タイがどのような光景になっているのかは分からない。しかし、かつてとは雰囲気の違う国になっていたとしても私は驚かない。

街はいくらでも変わるし、ましてコロナ禍という「未曾有のダメージ」で多くの店が閉店を余儀なくされたのだから、変わっていない方がおかしい。カオサンも全然知らない街になっているかもしれない。

私はまだ20代の若い頃はまだ完全なる一匹狼ではなく、同じ年代のバックパッカーたちとつるんでカオサンを歩いていた。当時からカオサンは街の雰囲気が垢抜けていて、何となく洒落た雰囲気があった。

それが気に入らなくて私はとうとうカオサンに行かなくなってしまったのだが、2005年頃に久しぶりに気まぐれでカオサンに訪れた時、腰が抜けるほど驚いたものだった。ますます、洗練されて「都会」になっていたからである。

この時点でカオサンは、もうバックパッカーが集まる場所というよりも、観光客を引き寄せる観光ストリートのように変貌していたのだ。もちろん、裏通りに入ればまだ安宿があってバックパッカーが泊まったりしているが、かつてのようにそれがメインの街ではなくなっていた。

「街というのは変わるもんだな……」と私はつぶやかずにはおられなかった。

コロナ禍が収束した後のカオサン通りは、再び姿を変えてしまうだろう。もう、こんなところに泊まることはないだろうが、一度くらいはどのように変わってしまったのか見ておこうとは思っている。コロナ禍が収束したら……。

ブラックアジア・タイ編
『ブラックアジア・タイ編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』連載当時、多くのハイエナたちに熱狂的支持されたブラックアジアの原点。

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