小説『背徳区、ゲイラン』5月末発売。久々の鈴木傾城の東南アジア・闇ワールド

小説『背徳区、ゲイラン』5月末発売。久々の鈴木傾城の東南アジア・闇ワールド

背徳区、ゲイラン』いよいよ5月末に発売されます。アマゾンで予約を入れて頂ければ、一番早く手に入れることができると思います。上記の画像をクリックするか、以下のリンクをご利用ください。

『背徳区、ゲイラン』鈴木傾城 四汐舎/星雲社

シンガポール・ゲイラン。路上に多くの女たちが立って男を誘う「背徳区」で、私はスリランカから来た女と出会う。しかし、そこは悪意が満ちた暗黒の世界であった。

売られてやってくる女たち、貧困の中の路上ビジネス、不法滞在、裏に存在する人身売買組織、偏見と差別、互いに牽制し、憎み合う女たち、警察の摘発、堕落の世界での純愛、そして自壊していく女。

何も信じない、誰も信じない女に惹かれた先にあったのは……。ラストの心理的どんでん返しで、女のかかえている闇がますます深まっていく。

東南アジアの背徳区を知り尽くした鈴木傾城が徹底的ドキュメンタリーな筆致で、社会の裏側に生きる女たちの悲哀を描く小説。

背徳区(Red-light District)とは?

本書はハードカバー版の小説となります。背徳区(Red-light District)とは、もちろん売春地帯のことです。ゲイランは、シンガポール政府が公認した特殊なエリアで、置屋が林立していたのですが、同時に路上には多くの違法のセックスワーカーが立っていました。

そんな、路上に立っていた女性たちが本書の中心人物です。

以前にも書きましたが、私がこの小説を書きたいと思ったのは、今までずっとシンガポールの裏の世界で出会ったリーパというスリランカ女性のことが忘れられないからです(作中では別名になっています)。

彼女は、私が東南アジアの歓楽街をさまよっていた人生の中で、もっとも鮮烈に印象に残った女性でした。

路上に立つ彼女の険しい横顔や食い入るように誰かを見つめる、凶悪ともいえる視線に、私は今もくらくらするくらい惹かれています。普通、険しい目をした女性なんて臆するしかないのですが、その孤高の立ち振る舞いは他の誰よりも存在感があってすごかったのです。

彼女は私には極度に優しかったのですが、他人は誰も信じていないようなところがあって、その二面性がとてもスリリングでした。彼女は、誰も信じない、何も信じない女性だったのです。そうやって彼女は生きていました。

あの彼女の持つ心の荒廃を、今でも強烈に覚えています。20年以上たっても、まだ印象が薄れないのだから相当な存在感です。彼女以前と彼女以後の私の女性の美の概念は、ガラリと変わったといってもいいと思います。

本書は、あのときの彼女を思いつつ、彼女を中心にしてシンガポールの背徳区「ゲイラン」で起きていたダークな出来事や当時の事件を結びつけて、ひとつの世界を構築してみたいと思いました。

登場人物は、ほぼ全員にモデルがいます

この小説に出てくる登場人物は、中心人物だけでなく、ほぼ全員にモデルがいます。彼女を取り巻く女性たちのことも私はよく覚えています。中心となる女性と親しい女性もいましたが、彼女を極度に毛嫌いしている女性もいました。そうした女性たちも登場します。

そして、作中で起こっている事件の多くは、実際にゲイランであったリアルな事件を絡めています。

小説『スワイパー1999』でも、私が出会った実在の女性たちと、その当時にスワイパーで起きていた事件や悲哀をリンクさせて小説にしてまとめましたが、本書でも同じことをしています。

ただ、モデルはリーパですが、小説とリアルは別物のですので、作中の名前はリーパではなく他の名前にしています。でも、チラリとですが「リーパ」という名前を作中に忍ばせているので、興味のある方はどうぞ発見してみてください。

この小説は「ブラックアジア的小説」なので、リアルでドキュメンタリータッチな書き方をしているのですが、ラストはちょっとしたどんでん返しも用意しています。アンダーグラウンドの女ならではのどんでん返しを用意しました。

「まだ鈴木傾城の小説を読んだことがない」という方は、これまで刊行されたいくつかの小説を読んで待っていただければと思います。鈴木傾城の小説は、今のところ、どれも裏の世界の女性を扱った小説ばかりです。

「売春」という言葉を使わなくなった理由

ちなみに、この小説はゲイランの夜の闇に立って売春をする女性たちが群れとなって出てくるのですが、「売春」という言葉はひとことも使っていません。ここでは、私は「背徳区」という言葉を使っていますが、これも売春地帯という言葉の言い換えとして使っています。

その背景として、もちろんポリコレのこともあるのですが、私自身がこの20年にわたって「売春」という言葉を多用し過ぎてきた事情もあって、この言葉から離れたいという気持ちもあったからです。

いまや「売春婦」という言葉が時代を感じさせる古い言葉になりつつあり、報道でも使われなくなっているのも見てもわかりますが、すでに売春地帯という言葉もまた古くなりつつあります。

そもそも、今の時代は若い女性を「婦」と言いません。既婚の女性に対しても「婦人」ということもなくなっています。女性に「婦」をつけてカテゴライズすること自体がもう古い感覚となっています。

それと共に、売春という言葉自身がもう昭和の残滓のように感じるようになってきました。売春というビジネスは消えないのですが、売春という言葉自身も旧い言葉になりつつあります。

それで、この小説では売春という言葉を排除し、さらに売春地帯も別の言葉で置き換えていこうということで「背徳区」を選んでいます。

歓楽地だとか歓楽街だと、字句からしてエンタテインメント的な明るいニュアンスもあるので即座に却下しています。「背徳区」は、ポリコレ的に問題がなく、ほとんど他人とかぶらず、十分に堕落や罪を感じさせ、どこか文学的なニュアンスもあるので、これに決めました。

というわけで、いろいろ裏話を書きましたが、久々の鈴木傾城の東南アジア・闇ワールドを楽しんでいただければと思います。

捕捉:装丁デザインの配色カラーについて

表紙デザインの黒背景に緑文字、赤の帯は、実はブラックアジアのもっとも最初のホームページの色と同じです。2000年当時のブラックアジアのサイトは、黒い背景に緑色の文字で構成されており、メニューは赤でした。(以下は2003年のブラックアジアのサイトです。左のヤモリはFlashで動いており、凝ってました)

ちなみに、背景の黒は東南アジアの闇を示し、緑は東南アジアのジャングルを示し、赤は売春地帯の世界を象徴して配色を考えていました。

この配色をやめてしまったのは、あるとき、フィリピンのアンヘレスの古いモニターでブラックアジアを見たとき、モニターの精度が悪すぎて字が読めなかったのにショックを受けたからです。

白地に黒の文字が結局はどのモニターでも見えるということで、以後のサイトは白地に黒になっています。でも、今でもこの黒地に緑の配色が気に入っていて、これが本当のブラックアジアのカラーだと思っています。

この初期ブラックアジアを知っている人がいたら嬉しく思います。懐かしいですね。20年前のデザインです。この配色こそがブラックアジアの原点です。まさか、このときは20年後もブラックアジアが続いているとは夢にも思いませんでした。

『背徳区、ゲイラン』の装丁は、ブラックアジアの原点回帰でもあります。

新刊 – 背徳区、ゲイランの装丁レイアウト

『背徳区、ゲイラン(鈴木傾城)』ブラックアジア鈴木傾城の暗部を描く小説。背徳区に生きる女の哀しい生き様と、ラストの心理的どんでん返しに酔え!

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