日本人は貧困に落ちると、その多くは「一生懸命に働く」ことで何とか生活苦から脱することができると思う。今のところ、日本では一生懸命に働くことで報われることが多い。だから「一生懸命に働く」は、まだ正解と言える。
ところが、途上国ではうまくいかない。
すでに人々は一生懸命に働いてきた。自分の置かれた環境の中で、私たちの思う以上に途上国の人々は働いている。信じられないほどの安い給料に、信じられないほど劣悪な環境の中で、それこそ地を這って必死で働いている。
たとえば、インドの炭鉱夫は40度を超えるような地中のトンネルの中で危険な掘削作業に従事しているが、その賃金はいずれも日本円で一日500円にも満たない。
インドで農業に就いている労働者は炎天下の中で黙々と農作業をして一日280円を稼ぐのがやっとだ。働いていないのではない。必死で働いている。その上で、絶対貧困と化しているのである。
バングラデシュでもレンガ職人がいて、多くの労働者が過酷な肉体労働を強いられているのだが、彼らは灼熱の屋外で塵と砂埃が舞う中でマスクもゴーグルも付けないで働いている。
女性たちも多いのだが、女性たちも普段着のままである。そして、重いレンガを運ぶ労働者の1割は子供である。子供が学校に行かないで肉体労働に従事するというのは日本では考えられない話かもしれないが、途上国・バングラデシュではごく日常で見られる光景だ。
子供の労働と言えば、私がバングラデシュで泊まった安ホテルは、12歳くらいの痩せた子供が、バケツに入れた重い飲料水や生活用水を外国人のために黙々と階上に運んでいる姿もあった。
それで彼らは金持ちになるのか。いや、一日そうやって働いても日本円で100円だとか200円だとか、それくらいの賃金しかもらえない。問題は「なぜ必死で働いている彼らの賃金が安いのか」という部分にある。
なぜなのか、その理由ははっきりしている。