治安が崩壊し、完全に無法地帯と化した国がある。カリブ海の島国ハイチだ。国の8割はギャングが支配し、もはや政治・経済は完全に崩壊してしまった。
ハイチはもともと貧しい国であったが、その貧しさに拍車をかけたのが2010年1月12日に起きた大地震である。マグニチュード7.0で、街は完全に倒壊し、最終的には31万6000人が死亡するという壮絶な災害でもあった。
このときの略奪・暴力・殺人が横行するハイチの大混乱はこちらでも書いた。どのような状況だったのか、写真を見てほしい。(ブラックアジア:略奪の都市となったハイチ。無法地帯に略奪者が闊歩する)
国際社会の支援もあったが、それでもハイチの混乱は収まることはなく、瓦礫もそのまま放置されたままで、大聖堂なども崩壊したまま更地にされることすらもなかった。再建どころか、更地にする能力も労力のハイチには残されていなかった。
裸のまま路上に放置されている女性がいても誰も見向きもしないような光景がすでに2010年代にはあった。女たちは次々とストリート売春に身を投じ、少女たちは他の国に「メイド」という名目で人身売買されていった。(ブラックアジア:ハイチの女性。追い詰められている「褐色の肌」の女性たち)
そんなハイチでも細々と再建の動きはあった。しかし、その小さな「芽」すらも奪い取ったのが2016年の超大型のハリケーンだった。
このハリケーンでは800人が死亡しているのだが、何よりも痛かったのはもはや再建のために投じられていた資金もすべて無駄になって、国はゼロどころかマイナスにまで突き落とされたことだ。
しかし、ハイチの悲劇はこれで終わらない。2021年にはふたたび巨大地震が襲いかかって、そこでも2207人が亡くなった。このときの死体まみれのハイチはこちらで記録している。(ブラックアジア:【閲覧注意】2021年8月14日、再び巨大地震に見舞われて地獄に堕ちたハイチの惨状)
今この国は、国民の8割が1日1ドル以下で暮らす世界最貧国のひとつである。
街の北部にはシテ・ソレイユという場所がある。このシテ・ソレイユは湿地地帯だったのだが、ここに30万人近くの貧困層が集まって、北半球最大のスラムとなったのだった。もちろん法はまったく機能していない。街を支配するのはギャングである。
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