中国も少子高齢化だが舐めてはいけない。「絶対に結婚して子供を作れ、子供は3人作れ」と命令して多子化社会の到来を用意する。日本は少子高齢化を放置しているだけ。日本は少子高齢化で存亡の危機に落ちるが、その日本を侵略して占拠するのは誰なのか、これで分かるはずだ。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
一人っ子政策を取ってきた中国よりも出生率が低い日本
日本の「合計特殊出生率」は様なまでに低く、断固とした決意で多子化社会に転換できないのであれば国家存続の危機に陥る。(ブラックアジア:現実を見て、少子化を解消するために「危険な答え」を思いつく人もいるはずだ)
日本の少子化がどれくらい危機的なのかは、今まで一人っ子政策を取ってきた中国よりも出生率が低いということで実感してもらいたい。日本の合計特殊出生率は「1.36」だが、中国の合計特殊出生率は「1.70 」である。
日本は政府が一人っ子政策を強制しているわけではないが、さまざまな要因で日本人は子供を産むのを控えるようになった。
「国が豊かになった」「女性も働くようになった」「結婚出産以外のライフスタイルも生まれた」「1990年代以後から若者が貧困化した」「政府が一向に少子高齢化に危機感を抱いておらず何の施策も取られなかった」……等々の要因はすべてが複雑に絡み合って日本の出生率を引き下げている。
実は中国もまた「一人っ子政策」にプラスして、似たような要因が重なって急激に出生率が落ちているのである。
中国の一人っ子政策の闇で起こっていた衝撃的な事件もあったが、闇から闇へと葬りさられていた。(ブラックアジア:闇から闇に消される子供。妊娠7ヶ月の中国女性が強制中絶に)
そして、この一人っ子政策が中国の男女の不均衡をも生み出して、それが皮肉なことに売春ビジネスを活発化させたことも触れた。(ブラックアジア:一人っ子政策が、売春女性を大量に生み出すことになる理由)
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一人っ子政策を緩和しても出生率は落ちていく一方の中国
中国が1982年から2016年までの間に一人っ子政策を取っていたのは、あまりにも人口が増え続けて国民を制御できなくなることを中国共産党政府が恐れたからだ。
ところが、この政策を厳格に進めていった結果、労働人口が高齢化し、経済成長は鈍化し、ゆくゆくは内需の減少にもつながっていく未来が見えてくるようになった。
中国共産党政府はこれを憂慮し、2016年からは一人っ子政策を緩和して子供2人を認めると発表した。一人っ子政策を緩和したら、国民は喜んで2人目を産むはずだと政府は考えていたフシがある。
ところが、一人っ子政策を緩和しても出生率は落ちていく一方であった。不動産価格が上昇、物価も上昇して、子供を産み育てることが厳しくなっている。さらに女性の自立も進んで結婚と子育てだけがすべてではないという価値観の多様性も中国人女性の中で生まれてきた。
今の中国の若者は、多くが一人っ子政策の結果として「ひとり」に慣れている。結婚するより1人で生きた方が楽だという意識も定着しているので結婚件数も減少してきている。
要するに、先進国が辿る少子高齢化の道を中国は一人っ子政策で加速させていたのである。2020年、2021年はここにコロナ禍による強制的「隔離」も加わったわけで、ますます結婚件数も減り、出生率も減っていくのだろう。
コロナ禍は一過性の話だが、人との交流をしなくなった若者がそのライフスタイルを定着させることで中国の出生率の低下はますます悪化することが予測されている。
日本も他人事ではないのだが、中国はそれが壮大なスケールで起ころうとしているのが興味深い。しかし、中国は一党独裁国家である。中国政府を舐めてはいけないと私は考えている。
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「子供は3人作れ」と習近平政権が国民に命令した
日本の国会議員は少子高齢化問題に対して「国家存続の危機」と気づいている人はほとんどいない。そのため、今になってもぼーっとしたまま日本を破滅に導いている間抜け揃いなのだ。この点に関して、私は日本の国会議員をまったく評価していない。
しかし、中国共産党政府は少子高齢化をきちんと国家存続の危機であるとの認識を持っている。中国は中国共産党の一党独裁なので、習近平政権が対策を取ると決めたら極端な政策を「政府命令」することができる。
2016年に一人っ子政策を緩和したのに一向に事態が改善しないのを見た習近平政権は矢継ぎ早に手を打っている。
中国共産党政権は2021年に入ってから「党員が結婚、出産しないことは許されない」「三人っ子政策を実行する党員幹部の適切な行動」と言い出し始めた。つまり、中国政府は国民に、次の命令をしたも同然なのである。
「絶対に結婚して子供を作れ」
「子供は3人作れ」
これは習近平政権による事実上の「命令」である。「口実を設けて一人っ子や二人っ子で済ませることは絶対に許されない」と述べている。「絶対に許せない」というのだから、いかに本気なのかが分かるはずだ。
罰則が採り入れられたり、子供がいない夫婦が断罪され自己批判を強いられたりするような事態にまで行き着くと、もしかしたら子供を何とか増やそうとして他人の子供を誘拐したり金で買ったりするような闇も広がっていくのではないか。
実際、中国は今でも児童誘拐が年間約20万件も起きているような国である。(ブラックアジア:幼児売買から花嫁売買まで。アジア有数の人身売買国、中国)
こういう闇が広がったとしても、とにかく出生率を上げて多子化社会に転換させようとしているのが中国共産党政府だ。
1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから
「子供は3人作れ」と命令する中国と何もしない日本の行く末
一人っ子政策の中では「2人目を作ったら許さない」と命令して、多くの夫婦が2人目を中絶したり、産み捨てたり、届け出ないでこっそりと育てたりしていた経緯がある。
ところが、2016年から「2人目を作っていい」と言い出し、2021年からは「三人っ子政策を実行しろ」と言う。
「結婚できない、出産できない、子供が育てられない」原因に不動産の高騰があると分かったら、中国の不動産デベロッパー大手である中国恒大集団(エバーグランデ)がデフォルト危機に陥ろうが何だろうが不動産の高騰に歯止めをかけた。
経済格差が問題だと分かったら「共同富裕」を言い出して、金持ちから富を奪って貧困層にばらまく政策をも行っている。
中国共産党政権はそれほどまで死にもの狂いになって少子高齢化に歯止めをかけようとしているのである。
こうした強引な手法が使えるのが中国なので、他の民主国家のように為す術もなく少子高齢化が進んで移民を大量に入れるという選択にはならない。もしかしたら、中国は再び強制的なベビーブームを起こせるかもしれない。
この強権による多子化社会の転換が成功するのか失敗するのか分からないのだが、もし中国がこれで再びベビーブームを起こすことができれば、中国の人口はまた増えていくわけである。
そうなると、少子高齢化をまったく解決できないでいる日本への人口侵略は数十年後はますます鮮明化していくに違いない。
「絶対に結婚して子供を作れ」「子供は3人作れ」と命令して多子化社会の到来を用意する中国と、少子高齢化を放置していく日本……。日本は少子高齢化で存亡の危機に落ちるが、その日本を侵略して占拠するのは誰なのか、これで分かるはずだ。
ルーマニアのチャウシェスク政権の下で同様の政策が進められた事がありましたね。
その政策は見事失敗に終わりましたが…。
「チャウシェスクの落とし子」ならぬ「習近平の落とし子」になったりして…とも思いました。
王制と民主制の長所と短所、ってのは、国同士の諍いなどをテーマに取り上げるゲームなんかでもたびたび取り上げられますね。
私がプレイしたのだと、グローランサー4ってゲームで主人公が仕えていたのは王制の国で、周辺国に民主主義国家がありましたが……
作中で、貴族のキャラが言ってたのが「民主制は国民の意思が反映されやすいが、有事の際の動きが鈍い。王制は国民の意思は反映されないが、国の危機には素早く対応できる。そして、今あの国(ゲーム作中の国)は国民が政治に対して関心を持っているから良いが、国民が政治に関心を持たなくなった時、政治が腐敗する」とかだったかな。
まあゲームなので端的に述べられてましたけど、実際その通りではあるんですよね。
民主制は国民の意思が反映されやすいけど、グダグダになりやすく、国の危機に対応しづらい。
そして、国民が政治に関心を持たなくなったら腐敗する。
王制は国民の意思は時に無視されるけど、国の危機には素早く対応できる。
まあ、権力を一点集中させると暴走したときに止められない。
人類史上、永遠の課題ですよね……
っつっても、中国は王制じゃなく一党独裁なんですがw