10年後はミャンマーという国がなくなり、「ミャンマー自治区」となっている?

10年後はミャンマーという国がなくなり、「ミャンマー自治区」となっている?

ミャンマー国軍は国民がどれだけ窮地に落ちても助けることはなく、ASEANもまた助ける余裕はなく、ミャンマー国民は見殺しにされる。国家は国民の敵と化し、仕事もなく、金もなく、物資もなく、医療も崩壊し、外部からの助けも期待できない中で、ミャンマー国民ができることは限られる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

ミャンマー情勢は芳しくない。状況は悪化する一方である

ミャンマーは国軍がクーデターを起こしてから欧米に経済制裁され、さらには国民と軍との間で激しい対立と衝突が引き起こされて、国はもはや機能していない状況となっている。

そんな中で、ミャンマー国軍が頼っているのは中国であり、ロシアである。欧米は国民を大弾圧する国軍に対して制裁決議を出したいのだが、中国とロシアが大反対するので決議すらも出せない機能不全の状態に陥っている。

中国は欧米に監視されているので表立ってミャンマー国軍を全面的に支援するところまで至っていないのだが、欧米の経済制裁には反対し、陰で国軍を支援することによってミャンマーを飲み込もうと画策している。

ロシアは純粋にミャンマー国軍に武器が売れる上に、ミャンマーを自分側に引き寄せていれば、いざとなったら欧米を攪乱できるという読みもあって国軍を支援する。今、ミャンマー国軍に大量の武器を売りつけているのは、まさにロシアなのである。

東南アジア諸国はミャンマーの動きを非常に警戒している。ミャンマー国軍が崩壊したら、大量の難民が押し寄せて混乱に見舞われるだけでなく、ロシアがミャンマーに流し込んでいる大量の武器が東南アジアの闇で流通する可能性もある。

ASEAN(東南アジア諸国連合)は、市民弾圧を続けるミャンマー国軍に対して民主派との対話を促そうとしているが、国軍は拒否し続けている。

アウンサンスーチー氏も軟禁されたまま身動きができず、反国軍を組織化する能力はまったくない。ミャンマー情勢は芳しくない。状況は悪化する一方である。打開の緒すらも見つからない。

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ASEANは「ミャンマーをどうするのか」と議論する余裕もない

ミャンマーの国民にとって不幸だったのは、国際社会はコロナ禍によって自国の対応に汲々としており、どの国もミャンマーどころではないことだ。

タイもインドネシアもマレーシアもミャンマー情勢には非常に敏感であり、4月には首脳会議も開催している。ところがその後、どの国も新型コロナウイルスのデルタ型が自国で感染拡大するようになって国内が修羅場になってしまった。

隣国であるタイは最も当事国なのだが、タイも感染爆発で日を追うごとに状況が悪化してしまっている。もう、ASEANは「ミャンマーをどうするのか」などと、悠長に議論を戦わせる余裕はまったくないのである。

これは、逆に言えばミャンマー国軍にとっては非常に有利な展開である。しかし、ミャンマー国軍が残虐性を発揮して国民を弾圧して政権を維持できたとしても、ミャンマーという国そのものは維持できるかどうか分からない。

すでにミャンマーの経済は破壊されている。国民は不服従運動を続けているせいで、金融経済も実体経済も破壊されてしまった。物流も止まり、通信も止まり、市場も止まり、医療も止まり、学校も閉鎖されている。

教師も不服従運動をしているので、教師がいなくて学校が開けないのである。

さらに銀行まで開店休業のような状況になっていて市民は自分の現金を引き出すことすらもままならない。そんな状況なのでミャンマーの通貨であるチャットは価値が毀損して貿易に大ダメージを受けることになった。

要するに通貨下落でミャンマーは物資が手に入らなくなってしまった。国民が必要とする食料や日常生活の諸々の物資だけでなく、燃料なども暴騰しており、建設も物流もまともに機能しなくなっている。

経済のダメージは計り知れないほどである。

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東南アジアでも最悪のコロナ汚染地帯と化しても不思議ではない

世界銀行はミャンマーの経済成長率が2021年度はマイナス18%にまで落ち込むと下方修正している。ミャンマーは国富がたっぷりある先進国ではない。平常時でも物資が不足している途上国である。

そんな途上国がマイナス18%も経済が落ち込むのだから、イメージとしては「貧困者が極貧に落ちる」のに等しい。

しかも、弱り目に祟り目というのか、泣きっ面に蜂というのか、このミャンマーでもコロナが爆発的に広がって止まらなくなってしまっているのである。

ミャンマーにコロナが広がっていったのは6月からだが、ミャンマーはPCR検査も厳密に行われているわけでもなく、医療も停止状態なので実態は分からない。

ウッドワード国連大使は7月に入ってから、「ミャンマー国民の半数が2週間以内に感染する推定もある」と述べている。ミャンマーの人口は約5400万人でその半分と言えば2700万人である。

すでに医療崩壊を起こしているミャンマーで2700万人が大感染してワクチンも治療薬も酸素もない状態で放置されるのだから、今後はインドネシアと並んでミャンマーが東南アジアでも最悪のコロナ汚染地帯と化しても不思議ではない。

漏れ伝えられる情報では、ヤンゴンだけでも一日1000体の遺体が火葬され、火葬が間に合わずに翌日に回される遺体も列をなして火葬場に置かれているという。7月の死者数は、分かっているだけでも6000人である。

デルタ型が引き起こす地獄は、インドからバングラデシュへ、バングラデシュからミャンマーに引き継がれている。インドからミャンマーまでデルタ型が拡大していくのは国境と人の流れを見ると誰もが予測できた。

私自身は、現在の状況を鑑みてミャンマーこそが次のコロナ汚染の激震地となることを確信している。

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10年後は「ミャンマー自治区」となっているのではないか?

ミャンマーは制御できないコロナ汚染地帯と化している。だとすると、この国と国境を接している中国・タイ・ラオス・マレーシア・バングラデシュは密入国者を通して延々とパンデミックが起こり続けるということになる。

すべての周辺国は必死になって国境地帯の防衛に走り、ミャンマー国民を徹底的に拒絶するので、ますますミャンマー国民は窮地に落ちていくことも想像できる。この半年で東南アジア最悪の危機に陥るのはミャンマーではないのか。

しかしながら、ミャンマー国軍は国民がどれだけ窮地に落ちても助けることはなく、ASEANもまた助ける余裕はなく、ミャンマー国民は見殺しにされる。

国家は国民の敵と化し、仕事もなく、金もなく、物資もなく、医療も崩壊し、外部からの助けも期待できない中で、ミャンマー国民ができることは限られる。今後の半年で、ミャンマー国内では絶対貧困者が爆発的に広がっていくだろう。

そうなると、最終的には国民を弾圧しながら権力を維持していると思っている国軍も国家と共に弱体化せざるを得ない。そして、すべてが崩壊に向かうミャンマーはいったいどうなるのか。

ミャンマー国軍の背後には中国がいる。

中国は北朝鮮のように、ミャンマー国軍が崩壊しないように必要最小限の支援を与えながら、ミャンマーを合法的にどんどん侵略していき、「中国領」にしてしまうのではないだろうか。

政治も経済も文化もすべてがボロボロになってしまったミャンマーを、強大な中国が好きに侵略するのは難しい仕事ではないはずだ。10年後は、ミャンマーという国が消えてなくなり、「ミャンマー自治区」となっているのではないか。

そうなっても、私は驚くことはない。

ブラックアジア・タイ編
『ブラックアジア・タイ編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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