インバウンドが再開しているが、これによって再び日本でもベッドバグ(トコジラミ)が問題になりつつある。ベッドバグはかつて「南京虫」と呼ばれたものなのだが、今や全世界のホテルで問題になっているのだ。日本でも止めることができない時がやってくるだろう。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
安ホテルで寝泊まりする人生だった
新興国では泊まるホテルを予約しないことが多い。ほとんどは、見知らぬホテルを飛び込みで取る。
真夜中、疲れ果てた身体を引きずり、泊まるところを捜す経験も一度や二度ではない。だから、やっと取れた宿は、そこがどんなところであれ文句を言う筋合いはない。
野宿するくらいなら、雨風と強盗をしのげる部屋のほうが10倍も20倍もマシだ。文句があれば翌日出て行けばいいのであって、真夜中に泊まらせてくれるというだけでもありがたい。
アジア圏からインド圏までをずっと好んでさまよい歩いていたが、想像を絶するような薄汚れた宿に転がり込んだことも一度や二度ではない。
雨季のタイでは、旅社(安ホテル)の部屋に入ったら、ベッドは濡れていなかったが、床下浸水していた。
部屋を変えてくれと言ったが満室で、もう他を捜す体力もなく、そこで寝たこともある。
ニューヨークで大流行しているトコジラミ
若い頃はカネを節約するために安い宿を探し求め、YMCAのドミトリーで床に雑魚寝したという経験もある。
清潔なドミトリーではない。土足で誰かが行き来するような場所での雑魚寝である。しかし、知り合った人と夜遅くまで語り合って楽しかった。
タイのチャイナタウンでは、監獄のほうがまだマシだというほど汚い旅社もあった。
そんなところでも平気だった。
しかし、そんな安宿に泊まると、誰もが悩むのが「南京虫」だ。アメリカでは「ベッド・バグ」と呼ばれている。日本では、今はもう南京虫とは言わず、トコジラミと言う。
どこにでもトコジラミはいる。メキシコのホテルにもニカラグアのホテルにもいた。
刺されると非常に痒くなる。問題なのは寝ているときに集中的に刺されるので蚊のように手足の一箇所や二箇所で済まないことだ。
十数箇所刺されると気が狂いそうになるはずだが、それくらいやられる人もざらにいる。
白人の肌は赤い腫れが目立つので南京虫の被害がとてもクリアに分かる。苦笑いしてしまうこともある。
肌の弱い人ほどひどく悪化する。掻きむしると広がる。そして、赤い斑点はいつまでも消えず、服を脱いだら病気だと思われかねない。
若い頃、海外の旅をしたことがない人に、そういったベッドに寄生する虫がいることを話したとき、あからさまに不快な表情と共に「絶対にアジアに行かない」とも言われたことがある。
しかし、このトコジラミが、アジアではなく、アメリカでも大発生している。サンフランシスコでもニューヨークでも事情は同じだ。
CNNでも長々と特集をしていたくらいだから、相当な被害であるのは想像できる。駆除会社には電話が鳴りっぱなしだという。
南京虫がいるかどうかはすぐ分かる
もともとアメリカにはトコジラミが存在しなかったので、人や荷物で運ばれてアメリカに定着したと考えられている。
アメリカでは十年前くらいから被害がうなぎ上りに上がっていて、なぜか今ごろになって大発生している。
CNNでは理由が分からないと言っていたが、それを聞いたときすぐに直感したことがある。
十年前から徐々に増えているというのであれば、誰かがどこかから持ち込んでいるのは間違いない。恐らくアフリカかアジア地域だ。アメリカとアジア・アフリカが結びつくものは何か。
戦争しかない。
2001年に9.11事件が起こり、アメリカは兵士を大増員してイラク・サウジ・アフガンに送り込んだのではなかったか。
野営に集団生活に清潔を望めない軍隊生活に発生するのは、ノミやシラミやトコジラミである。
アメリカで大増殖しているトコジラミは、もしかしたらイラクやアフガンのものではないだろうか。
大量の兵士が大量のそれを持ち帰った。そういう可能性はないだろうか。
そして、ニューヨークやカリフォルニアで増殖しているのであれば、対岸の話ではない。
ウイルスも寄生虫も簡単に国境を越えてあちこちで繁殖する。遅かれ早かれ人や荷物と一緒に日本やアジアにも逆輸入されるのは時間の問題だ。
特にアメリカ人観光客を大量に受け入れているタイやシンガポールが大騒動になるように思う。
すぐに泊まっていたホテルに戻って確認した
ところで、ある長期旅行者に「トコジラミがいるかいないかはすぐに分かる」と言われた。
そして、見分け方を教えてもらったことがある。長期旅行者はそのような余計な知識だけは増えていくのだ。
「部屋に入ったら、すぐにベッドのシーツをまくれ。黒い点々がついていたらトコジラミがいる」
黒い点々というのが何かと尋ねると「トコジラミのフンだよ。見ればすぐに分かる。だいたい黒い点々が塊になって残っている」と彼は答えた。
ベッドのシーツを毎日変えるホテルではシーツに黒い点々が残っていることはない。
しかし、ベッドの足、あるいは部屋の隅に、そのような黒い点々が残っていることがある。
トコジラミが、そこにいる証拠である。
それを聞いて、すぐに泊まっていたホテルに戻って、恐る恐るシーツをめくって思わず声を上げたものだった。
大量の黒い点々がそこにあった。
最近アメリカを旅行した人から聞いた話では、安宿のベッドでは
寝袋は使用禁止だったそうです。
多分南京虫が持ち込まれることを警戒している気がします。
私が南京虫に悩まされたのは、今は戦乱の渦中にあるシリアの
アレッポの安宿です。
建物の内部にある窓のない部屋で、換気が悪くジメジメして
いて、夜中に南京虫に何十個所もやられました。
「ムヒ」は必需品です。
シラミとダニの区別が私はよくわからないのですが、モロッコでは「家のダニは家人を噛まず、客人を襲う」と言われていて、なるほど知人の家を訪ねた折、家の人々は平気なのに私だけ噛まれてキエエとなっていました(笑)。そのような事もあろうかとキンカン持って行ったのですが、キンカン大評判でした。
その薬は何ぞ?と聞かれて「これはレモンの一種から作った虫刺されの薬で日本では一般的」といいかげんに説明し、臭いを嗅がせてのけぞらせ大笑い、大もりあがりでした。
昭和一桁生まれの私の父母は「南京虫は本当にいつまでもひどく痒い」と眉間に縦皺よせて言います。たまらん痒さなのでしょうね。aurore
ニューヨークでは大発生しています。私の住む築100年のアパートでもやられました。拷問並みの痒さです。水ぶくれになりそれが破裂してもう肌を出せない醜さ。
駆除もそう簡単にはいきません。有毒なスプレーをしてから最低24時間は家にいられず、1回ではすまないので間をあけて2,3回。丸2か月はたっぷりかかります。その間すべて(本、衣類、靴、とにかくすべて)ビニール袋にいれて難民生活。
イメージのキラキラしたNYですが、不潔さは発展途上国並みだと痛感しました。日本に大量上陸しないことを祈りたいです。
噛まれると悶絶の苦しみだし、うつ病になるかと思うほど、洗濯そうじ、荷造り荷解き、ホテル代、クリーニング代が大変でした。
忘れもしない、タイのトラートにあるトラートホテルでトコジラミにぼこぼこにやられ、地獄の苦しみを味わい、カンボジアのシアヌークビルにたどり着いた時に海に飛び込んで自殺しようかと思いました。もう3年以上前です。その当時の地球の歩き方はまだトラートホテルが載っていたのですが最近の歩き方には紹介されていないので他にも南京虫の被害者がいて投稿したのかもしれません。
今、爆買いの中国人と共に、日本のホテルや旅館で南京虫(トコジラミ)が大量発生していると言われています。清潔なはずの日本のホテルでも、いよいよ油断できなくなっているようです。ホテルを渡り歩く皆様、お気をつけ下さい。
【鈴木傾城】