太っていて容姿的にはそれほど美しいわけではなく、特徴があるわけでもなく、著名人でも何でもなく、何か目立つ特技があるわけではなく、性格的に押しが強いわけでもなければ、派手なわけでもない。
にも関わらず、婚活サイトで知り合った複数の男性を次々に虜《とりこ》にして貢がせ、少ない男で数十万円、多い男では7400万円もの金を引き出して用済みになったら殺して新しい男に向かっていった女。
見た目とは裏腹に男たちを次々と落としたその「凄腕」のために死刑囚になったのにカルト的な人気を誇り、獄中でも3人の男と結婚するほど男心の掌握に長けている女。
それが木嶋佳苗である。
木嶋佳苗の事件があってから6年近く経っており、そろそろ世間も彼女のことを忘れつつある。そこで、木嶋佳苗について、私なりに思ったことを記したい。
彼女が起こした事件は「首都圏連続不審死事件」だとか「婚活大量殺人事件」だとか「婚活連続殺人事件」と呼ばれている。この事件を起こした木嶋佳苗の人生をつぶさに見つめて私が感じたのは、世間が言う「稀代の毒婦」とはまるで違う感想だ。
私には、どう見ても彼女の正体は、ただ単に「手癖の悪いセックスワーカー」でしかなかった。
表社会の人々は手練手管を駆使するセックスワーカーを見たことがないので、木嶋佳苗のやり口や言動に何か幻惑されるものがあるのかもしれない。
しかし、はっきり言って、木嶋佳苗レベルの手口は売春地帯に生きている男にとっては日常茶飯事に起きていることであり、売春地帯や歓楽街にずっと生きてきた人間は木嶋佳苗の手口レベルでは誰ひとりとして驚かない。