ニューヨークで、デニス・オレアス・アランシビアという38歳の女性が殺されるという事件が起きた。彼女はエクアドルからきた女性であった。18歳の息子と13歳の息子がいたのだが、貧困から逃れるためにアメリカに出稼ぎに出ていた。
エクアドルは非常に治安の悪い国であり、そこで生きるよりもニューヨークのほうが安全だと彼女は話していたのだが、その安全なはずのニューヨークで危険な男に遭遇して殴り殺されたのだった。
家族は彼女がニューヨークでどんな仕事をしているのか何も知らなかったが、彼女はコールガールだった。コールガールというのは、日本でいうところの「デリヘル嬢」である。
家族のために身体を張って生きていたのだった。彼女はニューヨークに18歳の息子を呼び寄せていたのだが、その日は息子のために朝食を作って学校に行かせていた。
息子も母親が何の仕事をしているのかは知らなかった。知っていたのは、母親が常に一日中働いていて、息子や彼女の両親のために稼いでいたということだった。
「お母さんはいつも私たちのために働いてくれていて、この国で最高の生活を送れるようにしてくれていました」
息子はそのようにいった。彼女はその日、帰ってこなかった。翌日、息子が心配して警察に届けると、その日のうちに彼女の遺体がホテルで発見されたという知らせが届いた。息子にとっては強烈なショックだっただろう。
ただ、殺されただけでなく、売春ビジネスの現場で殺されていたからである。
エクアドルからきた38歳の女性に、いったい何が起きていたのか。彼女が殺されたニューヨーク市六番街近くのソーホー54ホテルの11階では、26歳の男が宿泊していた。ラード・アルマンスーリという男だった。