私のいた東南アジアの歓楽街というのは、身体を使って男から徹底的に金をむしり取るタイプの女たちが山ほどいる世界だった。
彼女たちが、あれこれ理由をつけて「お金を貸して」「あれを買って」「これを買って」と言い出したら、「仕掛けてきたな」と察知して関係を切る。それしか、自分の身を守る方法はないからだ。
しかし、ごく普通に暮らしてきた男は、色恋を仕掛けてきた女性に深くのめり込んでしまって、簡単に関係を切るような行動はとれない。そのため、ずるずるとカネを渡し続けて最後に捨てられる。
そういう詐欺をやっていた女性の事件が明るみになると、私は興味深く見てしまう。
最近では、大阪で起きた28歳の看護師の事件がことさら関心を惹いた。この28歳の女性は「さき」という名前で出会い系アプリに登録していたのだが、70人以上から合計3億円近くをだまし取っていたのだった。
特筆すべきは、被害に遭った男性のほとんどが60代以上だったことだ。
「かなり年上がタイプで、お父さんくらいの年齢に憧れます」と出会い系アプリに書き込んで、カモにする男を探していた。彼女は写真も上げていたのだが、その写真はとても清楚な雰囲気であった。
「年上の方が大好きで、ビックリされるかもしれませんが、以前は65歳の方とお付き合いしていました。職業は看護師です」
これだけでも、ずいぶん怪しい感じがするが、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と考える男も多いのか、かなりの60代が「さき」に連絡を入れたようだ。彼女はやりとりをする中で、カネをもってそうな男だと判断したら「会いませんか?」と伝えて詐欺に取りかかっていた。