揺れる香港。逃亡犯条例改正案が通れば、もう香港の一国二制度は終わり

揺れる香港。逃亡犯条例改正案が通れば、もう香港の一国二制度は終わり

香港は「一国二制度」で、中国共産党政権の直接支配になっていない。香港は「特別行政区」として民主主義で運営されている。

しかし、中国は徐々に香港を「中国化」しようとしている。2011年には義務教育に中国共産党政権を賛美するような教育カリキュラムを導入しようとして「我々を洗脳するな」と学生から大反発を食らった。

さらに2014年には、香港を乗っ取ろうと行政長官選挙に介入するようになり、これに反撥した香港人が激しく抵抗して、学生による大規模ストライキが発生したのだった。

これを「雨傘革命」と呼んだ。

しかし、この学生たちのデモは中国政府が徹底的な弾圧で潰してしまった。挫折感に見舞われた香港は、以後、中国に服従するかのように大人しくなった。

しかし、2019年。中国は香港に対して中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を強行しようとすると、学生や香港人がこれに激しく反撥、人々は続々と議会に集まって反対の声を上げるようになった。

逃亡犯条例改正案・反対デモ

これは日本も無関係ではない

「逃亡犯条例」改正案は何が問題なのか。

それは、香港で中国共産党政権に反対する意見を表明していたり、反対運動をしていたり、天安門事件等の闇を暴くような書籍を売っていたり、習近平を批判するような発言をインターネットで流していたりすると、一方的に「政治犯」として烙印を押されて中国に連行されて、中国本土で裁かれる可能性が出てくるからだ。

「逃亡犯条例」改正案が通ると、香港で、言論の自由も行動の自由も消されてしまう。

2014年の雨傘運動の中心メンバーだった周庭(アグネス・チョウ)は6月10日に東京都の日本記者クラブで会見しているのだが、このように発言している。

「日本も無関係ではない。日本政府は国民の安全を考え、意見を表明して欲しい」

なぜ日本も無関係ではないのか。なぜなら、この「逃亡犯条例」改正案が通ると、香港に滞在する外国人にも適用されるからである。

日頃から日本で中国共産党政権を激しく批判している人間はブラックリスト化されて、その日本人が香港に立ち寄ると香港で「政治犯」として逮捕され、中国に連行される可能性が高まる。

香港政府は、「条例が改正されても中国の要請は拒否する」と表明しているのだが、一国二制度もなし崩しに侵食されている中でこのような発言をしても、それを言葉通り信じる香港人はひとりもいない。

中国を批判していると、中国に連行されて不当に監禁・有罪・拷問される確率がかなり高くなる。今すぐ「そうなる」というわけではないのだが、いつそうなってもおかしくないというところに不気味さがある。

だから、香港人は激しく反撥しているのである。

かなり激しい衝突が起きている

中国本土では、この抗議デモと市民を攻撃する警察当局の動きはまったく報道されない。しかし、かなり激しい衝突が起きているのはユーチューブでも分かる。以下のような状況になっている。

 

中国は譲歩することはない

中国共産党政権が信用できなくて、絶対に中国本土に向かわない人は日本にも多い。中国では恣意的に日本人をスパイ容疑で逮捕して、何年も拘束して、一方的な裁判で有罪判決を言い渡すような国である。

日本国内で公然と中国共産党政権の批判をしている人は、必ず中国政府にリストアップされている。そのために中国は、スマートフォンもOSレベルでバックドアを仕込んでおり、情報を中央のサーバーに送っている。

中国で製造されたマザーボードにも仕様にはない微細チップが埋め込まれて、個人情報が中国に渡るようなこともしている。これに工作員による情報収集もあるわけで、私たちの情報は想定以上に中国に漏れていると考えても良い。

そんな状況の中で、何も考えないで中国本土に行ったら何が起きるのか分からない。

そうした危機感があるから、反中を日頃から表明している著名人や活動家や事業家や政治家は、決して不用意に中国に入ることはない。しかし、「香港は中国とは別の政治システムで動いているので安全だ」という意識は持っている。

しかし、この「逃亡犯条例」改正案が通ってしまうと、もはや香港も安全でなくなる。だから、周庭(アグネス・チョウ)は「日本も無関係ではない。日本政府は国民の安全を考え、意見を表明して欲しい」と言っているのである。

日本人だけではない。香港にいるアメリカ人も危険なことになる。現在、アメリカと中国は「新冷戦」の真っ只中にいる。中国は香港にいるアメリカ人を「スパイ」だと断定して逮捕して本国に連行してしまうかもしれない。

米国務省のオルタガス報道官は、実際に香港を訪問・滞在中のアメリカ国民が中国の「予見困難な司法制度」にさらされることへの懸念をすでに示している。

しかし、中国は譲歩することはない。中国外務省はこの抗議デモを外国人勢力が介入した扇動デモであるとして徹底的に制圧することを発表している。

香港の抗議デモは雨傘革命のように制圧されるのだろうか? もし、中国がデモを制圧して「逃亡犯条例」改正案を通したのであれば、もう香港の一国二制度は「これで終わり」と考えた方がいいかもしれない。

香港は正念場に立っている。

香港の抗議デモは雨傘革命のように制圧されるのだろうか? もし、中国がデモを制圧して「逃亡犯条例」改正案を通したのであれば、もう香港の一国二制度は「これで終わり」と考えた方がいいかもしれない。

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