マリファナよりもアルコールのほうがよっぽど悪質で依存的で危険だったりする?

マリファナよりもアルコールのほうがよっぽど悪質で依存的で危険だったりする?

酒で寿命が縮まろうが何だろうが、酒はとにかく「必要なもの」であるとして絶対的に支持されている。「酒をやめたら75歳以上は普通に生きられる」といっても、「酒が飲めないなら75歳までに死んだほうがマシ」と思うのが酒の魔力だ。酒を規制しろという動きは出てこない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

統計的には日本人男性の25%は75歳までに死ぬ

私はもともとアルコールはあまり好きではなくて、飲むにしても付き合い程度にとどめていたのだが、2006年に健康を害して3年ほど頭痛やめまいに苦しむようになってから、もう酒を飲むのはいっさいやめた。

飲むと体調が悪化するので、飲む意味がなくなってしまった。

タバコもときどき吸っていて、インドネシアでは女性に勧められると断らなかったのだが、これもきっぱりやめた。誰かが「タバコは稼いだカネを灰にしているだけ」と自嘲していたが、そのとおりだとしみじみ思う。

ただ、私の好きだった女性の何人かはタバコをひっきりなしに吸うタイプだったので、タバコを吸う女性が嫌いなわけではない。むしろ、ふてぶてしくタバコを吸う女性にはシンパシーのようなものさえ感じている。

私はアンダーグラウンドをうろつく野良犬みたいな存在なのに、酒もタバコも吸わない品行方正な人間になってしまって、自分でも驚くばかりだ。もしかしたら、これで少しは健康寿命が延びたのかもしれない。

あまり長生きすることには関心がなくて、74歳くらいで死ぬのがちょうどいいと思っているのだが、それまで健康寿命が保てるのは大歓迎だ。そもそも、私が74歳で死ぬのがちょうどいいと思っているのは、日本人の健康寿命はだいたい74歳くらいという統計があるからだ。

ちなみに「74歳で死ぬのは早すぎる」といっている人もいるのだが、統計的には日本人男性の25%は75歳までに死んでいるという事実を認識している人はあまりいない。

日本人男性の平均寿命は約81歳なのだが、「平均」というのは、81歳よりも短い寿命の人と、81歳よりも長い寿命の人をひっくるめて「平均」なのだ。81歳より前に亡くなる男性は意外に多い。

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酒は同時にかなり依存的性質が強いドラッグ

「74歳で死ぬ」のは少し早いかもしれないが、だいたいの人は75歳くらいから健康寿命を失って介護が必要になったりする期間が75歳より先にはじまることが多いので、それを経験しないで74歳で死ぬというのは、一匹狼の私にしてはありがたい。

ところで、「日本人男性の25%は75歳までに死んでいる」ということなのだが、早死にする人というのはどういう人なのだろうか。遺伝的なものや事故や事件の被害に遭うような「自分では避けられないもの」もあるのだが、一方で自分の問題が短命の要因になることもある。

それが、過度な飲酒・喫煙、不健康な食生活である。

ある医師とそういう話をしていたのだが、その医師は個人的には「酒が一番、害悪になっているんじゃないか」という見解を話してくれた。「酒は百薬の長とかいっていますけど、あんなの嘘ですよ。だいたい酒は万病の元です」と一刀両断だ。

たしかに、仕事で疲れたとか、ストレスがあるとか、気分が晴れないというときは、酒は格好のストレス発散となる。しかし、酒は同時にかなり依存的性質が強いもので、人によっては「酒はれっきとしたドラッグだ」という人もいる。

よく日本人は、「マリファナは危ないドラッグ」とかいって怖がっているのだが、実はマリファナよりもアルコールのほうがよっぽど悪質で依存的で危険だったりする。街で吐いたり、寝たり、暴れたり、記憶を失ったりする姿は、どう見てもドラッグ依存者の姿である。酒をやめられなくなった人は、一種のジャンキーである。

しかし、日本人はあまりにも酒で酩酊している人やアルコール依存の人を見慣れてしまっていて、彼らの醜態を見てもそれを「危険なドラッグ依存者」であるとは思い至らない。なぜか、アルコールはドラッグではないと洗脳されてしまっている。

酒が良い悪いは別にして、マリファナよりもアルコールのほうがよっぽどタチが悪い「ドラッグ」だと認識したほうがいいのではないか。酒は合法ドラッグなのだ。合法でもドラッグであるならば、それは過度にのめり込むと寿命を縮めるのは間違いない。

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酒で人生を棒に振った人はいくらでもいる

「酒よりもタバコのほうが悪い」と酒を擁護する人もいるのだが、知り合いの医師は「いや、酒のほうが悪い」と私にいった。なぜなら、「タバコに年間100万円使える人はいないけれども、酒に年間100万円以上使う人は普通にいる」からだという。

タバコは高くなったというのが、どちらがカネがかかるのかと考えれば、圧倒的に酒のほうがカネがかかる。

タバコを100万円分吸うのは、それこそ死ぬほど大変なことだが、酒ならいくらでも飲めるので、年間100万円くらい飲むのは「たやすいこと」なのだ。それで、量を飲んでいるうちに、もっと飲めるようになる。

結果的にどうなるのかというと、まず最初に二日酔い、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、脱水症状などの症状を起こして体調不良になる。それが常態化していくと、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの胃腸障害も起こる。

血圧も上がれば、糖尿病のおそれも出てくる。さらには、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝臓癌などの肝臓障害も引き起こされる。そして、アルコール依存症になると飲酒運転や暴力など社会的な問題を引き起こすこともある。

酒で人生を棒に振った人はいくらでもいる。出費も増えるし、収入も途絶える可能性もあるのがアルコール依存である。

「タバコを吸って働けなくなる人は少ないですけど、酒を飲んで働けなく人はゴロゴロいるんですよ。それを考えると、どっちが悪いかすぐわかりますよ。タバコよりも酒のほうがタチが悪いんですよ」

知り合いの医師はそのようにいうのだった。そして、このように付け加えた。

「75歳になる前になくなった人で不健康な生活していた人の〝不健康〟って、だいたいは酒の飲み過ぎですよ。飲み過ぎ」

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「酒が飲めないなら75歳で死んだほうがマシ」と思う

統計的には日本人男性の25%は75歳までに死んでいるのだが、その25%のうちの少なからずは、酒が原因で健康を害して早死にしてしまった可能性がある。事故や事件なども、酒が直接的にも間接的にもかかわっている可能性が高い。

酔っ払って事故を起こして死んだ人は多いし、酔っ払ってケンカして相手を殺したとか自分が死んだとかもある。貧困ですらも、酒で「仕事ができない、見つからない、やる気がない、病気になって働けない」のが原因だったりする。

しかし、酒による弊害は奇妙なことにそれほど問題視されることがない。

日本では、酒がコミュニケーションツールとして重要な役割を果たしており、仕事での接待、友人との飲み会、親戚との集まりなど、さまざまな場面で酒が振る舞われる。酒を飲むことは社会的な義務や礼儀と捉えられている。

そんなわけで、酒で失敗する人がどんなに出現しようが、酒を規制しろという動きはまったく出てこない。

酒は合法的なドラッグであり、文化に根づいた嗜好品なので、その人の政治的信条が右であれ左であれ、生きている世界が表社会であれ裏社会であれ、若い世代であれ高齢の世代であれ、みんなそれを必要としている。

酒で寿命が縮まろうが何だろうが、酒はとにかく「必要なもの」であるとして絶対的に支持されている。「酒をやめたら75歳以上は普通に生きられる」といっても、「酒が飲めないなら75歳までに死んだほうがマシ」と思うのが酒の魔力である。

私は74歳くらいで死ぬのがちょうどいいと思っているが、「長生きしたほうがいい」といっている人が大酒を飲んでいるのを見ると、酒は一滴も飲まない私のほうが長生きしそうでヒヤヒヤする。

どん底に落ちた養分たち
『どん底に落ちた養分たち――パチンコ依存者はいかに破滅していくか(鈴木 傾城)』

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