リヤンティという名のインドネシアの女性と出会ったその日、男という生き物とは「いったい何なのか」が分かったような気がした。
リヤンティと出会ったとき、彼女は赤ん坊と遊んでいた。そのときの彼女の赤ん坊を見つめる「目」と、彼女が夜のビジネスを終えて男を見る「目」は同じだった。だから、はっと気がつくものがあった。
そうだった。赤ん坊も、男も、女の身体に依存している。男は赤ん坊のときに女性の乳房を与えられ、女性に抱かれて育っていく。少年になると男は女から離れていくが、やがて遅かれ早かれ、また女の身体に戻っていく。
男は「女の身体に依存するしか生きられない」のだった。それが男の正体だった。リヤンティと出会ったあのとき、それを悟った。
インドネシア・リアウ諸島のひとつ、クンドール島を訪れるのは、少数の華人だけだ。
何しろ、この島には観光に値するものは何もないし、町も10分もあればオジェッで見て回れるほど小さい。
島ではスズが取れるのでスズ鉱山があるが、現場も賑わっているふうでもなく打ち捨てられて忘れられているように見えた。
海はきれいかもしれないが、特別に水が透き通っているわけでも浜辺が白いわけでもない。山は美しいかも知れないが、ただ茫々と熱帯の樹木が茂っているだけである。観光資源はあっても、何も開発されていない。
ただ、最近は、リゾートホテルが建設されて、華人のファミリーを呼び込んでいるようなので、もしかしたら今後はこのリゾートホテルを中心として変わっていく可能性はある。
それでも、ここがバタムのようなリアウ諸島有数のリゾート島となることは恐らくない。
すでにバタム島はブランドであるが、ここはそうではない。また、シンガポールからバタム島までは1時間少々で行けるが、この島に行くには、半日は延々とオイルの臭いが充満する船の中で過ごさなければならない。
そこまでしてこの島に行っても、あるのはジャングルだけだ。普通の家族なら、せいぜいビンタン北部のリゾート地までが限度に違いない。商売にならないことはしない華人らしく、シンガポールからの直行便もない。
この島を訪れたければ、一度どこかの島を経由しなければならない。普通の観光客はそこまで面倒な思いをしてこの島を訪れる理由も意味もない。
結局、ここにやってくる人間は、商売絡みでなければ、裏によこしまな意図を持っている男ばかりということになる。
(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インドネシア編』にて、全文をお読み下さい)
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