シンガポールの日本人墓地には「からゆきさん」と呼ばれていた日本人娼婦たちの墓がある。
かつて、バッタンバン船(と呼ばれていた)で死ぬような思いをしてやってきた貧しい女性たちは、この熱帯の地で売春をして生きていた。
その証(あかし)がシンガポール日本人墓地にあった。
この墓地の説明によると、1870年頃から日本人女性がシンガポールに現れるようになったと書かれている。
1870年当時と言えば、その3年前に江戸幕府が崩壊して明治政府になったばかりの混乱の時代だ。
食い詰めれば、もはや誰も助けてくれる人間はいない。そのような切羽詰った時代だった。そんなときに天草地方の女性たちが生きるために、国外で売春をする道を選んだのだった。
言葉も文化も違う異国の地に流されて出て行った女性たちの辛苦は、相当なものがあったと思う。