「核兵器は実戦では使えない」は過去の常識。核兵器は実戦で使えるようになった

「核兵器は実戦では使えない」は過去の常識。核兵器は実戦で使えるようになった

核戦争は起こり得るだろうか? 私たちの常識は「核兵器は実戦では使えない」で止まっているのだが、もう2020年2月4日から軍事の常識は変わったのだ。すでにアメリカは実戦で使える核兵器を開発し、「限定核戦争」を行える体勢をさっさと整えていたのだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

核兵器を持ってはいけないならず者国家が核兵器を保有する日

かつて、欧米とソビエト連邦は敵対しており、ベトナム戦争も米ソ代理戦争だと言われていたのだが、超大国アメリカとソビエトは物理的に衝突することはなかった。どちらも核を持っていたからだ。

現在、欧米と中国は敵対しつつあるが、双方が核を保有している。そのため、米ソ冷戦の時代を見ると、互いに相手を軍事攻撃することは「ないはず」と言われているが、あるのかないのかは誰にも分からない。

歴史は必ずしも「過去はこうだから次はこうなる」とは言えないものだからである。

2021年4月11日、イラン中部ナタンズの核施設が大爆破されて、イランはこれをイスラエルによるテロだと断定し、イスラエルに報復すると述べている。

イスラエルは公然の秘密として核兵器を保有しているのだが、そのために周辺アラブ諸国はイスラエルに手を出せない。しかし、イランが核兵器を保有すると状況が変わってくる。イスラエルが圧倒的に有利とは言えなくなってしまう。

だから、イスラエルはイランの核保有につながる動きを非常に警戒し、何かあったら物理的な攻撃を仕掛ける決断もしている。

核兵器の開発と言えば北朝鮮もそうだが、欧米と価値観を共有しない凶暴な国家が核兵器の保有を切望するのはそれによって諸外国からの攻撃を防御できるからである。そして、核兵器を保有することによって周辺国への侵略が可能になるからである。

私自身は、いずれどこかの段階で「核兵器を持ってはいけないならず者国家が、ある種の核兵器を保有する」と思っている。そして、今の核バランスが崩れて、世界は超高度な軍事的危機に陥ることもあり得るとも思っている。

核戦争は起こり得るだろうか? 人類はそれほど賢明ではないので、いずれ起こり得るというのが私の見解だ。

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米中が軍事的に大激突することはあるのだろうか?

中国の軍事力と経済力の増強は、超強大な軍事国家であるアメリカに匹敵するほどの脅威になろうとしている。アメリカは数々の戦争で実戦経験を積んでいるのだが、中国軍はほとんど大規模な実戦経験がない。

そのため、中国の軍事力など実戦では機能しない「張りぼて」になるという意見もあるのだが、そうだろうか。

2019年の段階で、中国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)も、中距離弾道ミサイル(IRBM)も、準中距離弾道ミサイル(MRBM)も、短距離弾道ミサイル(SRBM)も、対地巡航ミサイル(LACM)も、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も保有しており、核弾頭も約320個を保有していると米国科学者連盟は想定している。

2020年9月1日、米国防総省は今後10年間で少なくとも400個近く保有することになるのではないかとも推測している。

さらに2021年2月28日、アメリカは『中国軍が内モンゴル自治区で大陸間弾道ミサイル(ICBM)用とみられる発射施設少なくとも16基の新設を進めている可能性が高い』というのも発表している。

しかも、中国は刻々と能力向上を目指している。

戦争はミサイルだけで行うものではないので、いくら中国がミサイルや核弾頭を増やしたところで、それが有効に機能するかどうかは別問題ではあるが、追い詰められた中国が保有する核ミサイルを方々に飛ばしたら、現代文明は壊滅的ダメージを受けることになるのは間違いない。

米中が軍事的に大激突することはあるのだろうか。

もし正面衝突が起こったら文明が破壊される前に全世界の経済が先に破壊されることになる。それは米中どちらの指導者も絶対に、何が何でも避けたいことなので、この経済が戦争の抑止力になる可能性は非常に強い。

しかし、世の中は何が起こり得るのか分からない。常に、偶発的な「何か」が起こるのが世の常である。現代に、まさか世界規模のパンデミックが起こるなど、2020年1月まで誰も想定しなかったように、今後も不意に世界を巻き込む何かが起こってもまったく不思議ではない。

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アメリカ軍は、「実戦で使える核兵器」をすでに配備している

核兵器は「拡散」されている。そのため、米中の直接的な激突はなくても、どこかの地域《エリア》で代理戦争が起こって、それが核兵器の使用にまで行ったとしても何ら不思議なことではない。

「いや、核拡散防止条約があるではないか。核兵器が拡散されないように、そして核戦争が起きないように努力がされている」

このように考える人もいる。しかし、1970年に発効された核拡散防止条約はもはや形骸化しており、実際には機能していない。条約ではアメリカ・中国・イギリス・フランス・ロシアの5ヵ国に核軍縮せよと義務付けているのだが、実際にどうなのか。

中国は脇目もふらずに核弾頭を増やしているし、それを見て危機感を持ったアメリカも核兵器の近代化を宣言した。さらに危惧されるのは、アメリカは「実際に使える核兵器」である低出力の核弾頭の配備にも踏み切っていることだ。

2020年2月4日、アメリカ国防総省は「W76-2を実戦配備した」と全世界に向けて発表したのだが、これが「実戦で使える核兵器」「低出力の核弾頭」なのである。

私たちの常識は「核兵器は実戦では使えない」で止まっているのだが、もう2020年2月4日から軍事の常識は変わったのだ。すでにアメリカは「限定核戦争」を行える体勢をさっさと整えていたのだ。

W76-2(実戦で使える核兵器)は今後、大陸間弾道ミサイル(ICBM)にも、中距離弾道ミサイル(IRBM)にも、極超音速滑空ミサイルにも搭載されることになるだろう。

そうすると、アメリカは世界中の好きなところに素早く「実戦で使える核兵器」を落とすことも可能になる。アメリカ軍がそのような体勢を整えたのであれば、中国軍もまたそのような体勢を整えてくる。

そうすると、「米中の直接的な激突はなくても、どこかの地域《エリア》で代理戦争が起こって、それが核兵器の使用にまで行ったとしても何ら不思議なことではない」というシナリオも考えられる。

また、こうした「実戦で使える核兵器」「低出力の核弾頭」が拡散していくと、ならず者国家が手に入れて、それを使う危機も生まれてくる。「ある種の核兵器」というのは、実戦で使える核兵器を指しているのだが、こうした核兵器をならず者国家が持つというのは危険極まりない事態でもある。

「核兵器は実戦では使えない」は過去の常識である。
核兵器は、実戦で使えるようになったのだ。

改めて、「核戦争は起こり得るだろうか?」と考えてみて欲しい。人類はそれほど賢明ではないので、いずれ起こり得るというのが私の見解だ。米中対立のフロント(最前線)は台湾になるかもしれないし、我が日本になるかもしれない。これらの国が限定核戦争の舞台となり、実戦で使える核兵器が落ちるかもしれない。

あなたはどう考えるだろうか?

『広島・長崎―原子爆弾の記録』

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