インドネシア領バタム島も緑は多かったが、ビンタン島の緑はバタムよりもはるかに濃いように見えたのは気のせいかもしれない。
激しい雨音で目が覚めて、カーテンを開けると窓から見える外の緑が雨に打たれて揺れていた。
リアウ諸島はよく雨が降る。さすがに熱帯地方だけあって、一度降り出すと雨足は強い。
雨に打たれる木々は枝を激しく揺らして、まるで緑の焔(ほのお)が燃えているかのように見えた。
時は5月。この地域で雨がもっとも激しく降るのは12月前後であり5月は年間を通して見ると雨が少ない方に入る。
しかしインドネシア・リアウ諸島には乾期らしきものがないので、タイやカンボジアの乾期を知っていると、この地域はしきりに雨が降っているように感じる。
旅行者にとっては迷惑な雨であるが、ホテルの窓から見る雨に打たれ続ける緑は思わずうっとりと見つめてしまうほど美しかった。
雨の中を押して外に出るのも億劫なので、部屋で惰眠を貪ることにする。
湿った部屋の匂い、ほのかな熱気、滲む汗が惰眠には心地良い。アジアの気怠い空気は雨期に湿った部屋にこそ漂っているような気がする。
次に起きたときは、もう雨がやんでいた。
それどころか、雨が降っていたのは嘘のように、どこまでも蒼く濃い空が澄み渡っている始末である。
これが熱帯雨林の素晴らしいところだ。雨が降るとは言っても一日中降り続いているわけではなく、一時間もしないうちにやんで晴天になる。
外に出ると全体的に寂れた町並みが目に入る。雨に濡れたアスファルトの道は、早くも熱帯の太陽に焦がされて乾こうとしているところだった。
(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきたカンボジア売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インドネシア編』にて、全文をお読み下さい)
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