労働は外国人にやらせ、戦争はアメリカにやらせ、生活はベーシックインカムで

労働は外国人にやらせ、戦争はアメリカにやらせ、生活はベーシックインカムで

帝国の国民は衆愚主義に染まって堕落する。衆愚の「愚」は、もちろん「愚か」であることを意味している。「パンとサーカス」を与えるのが衆愚政策であり、それで皮肉にも政治が安定し、文化は爛熟して芸術も花開く。しかし、その爛熟は崩壊の兆しでもある。では、現代人はローマ帝国やら大英帝国の教訓から学んで「パンとサーカス」にうつつを抜かさない人生を送っているのだろうか。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

労働は奴隷、戦争は傭兵、娯楽は自分

ローマ帝国は世界最強の帝国だった。しかし、この強大な帝国も自壊していった。なぜか。国民が豊かさに酔い、傲慢になり、苦労や苦痛を避け、食べることと遊ぶことだけに夢中になっていったからだ。

ローマ帝国の市民たちは、国が強大になるにつれて、次第に働くことも戦うことも嫌うようになった。労働はつらい。戦争はもっとつらい。誰もつらいことをしたくない。そこで、その「つらいこと」をアウトソーシングするようになった。

具体的に言えば、面倒くさい「労働」はすべて奴隷にやらせた。そして戦争は傭兵にさせた。そして自分たちは、たらふく食って与えられた娯楽で楽しんで贅沢三昧に人生を過ごしていたのである。

「たらふく食う」というのは比喩でも何でもない。貴族階級はたらくふ食うために宴会に6時間以上もかけていた。

世界中から掻き集めた奇妙な珍味を集めて食べて食べて食べまくり、食べきれなくなったら嘔吐してまた食べるのが通例となった。嘔吐するための道具すらも最初から用意されていた。上から下までそれくらい「たらふく食っていた」のである。

労働は奴隷に。
戦争は傭兵に。
娯楽は自分に。
生活費は政府に。

この娯楽は「サーカス」と評された。コロッセオでは猛獣同士を死ぬまで戦わせたり、猛獣や犯罪者と剣闘士(グラディエーター)を戦わせたり、奴隷同士を死ぬまで戦わせたりしていた。

あるいは、犯罪者の公開処刑も「娯楽」として開催されていた。それは、食って寝るだけで何もしないローマ帝国の市民たちの暇つぶしだったのだ。朝から晩まで、いろんな「催し」があって、ローマ市民はそれを見て喜んでいた。

もちろん、売春も大っぴらでフォークやナイフや容器もセックスの絵で満ち溢れ、売春宿のマークは男性器だった。

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栄華もすべて消え去って歴史の藻屑に

この享楽的なライフスタイルが蔓延することによって、強大だったはずのローマ帝国は次第に軍事費や贅沢な施設の維持費で莫大な財政赤字を計上するようになり弱体化するようになる。

しかし、ローマ帝国は延々と市民に社会保障を与えていた。そうすれば、国民は政治のことなど考えず、自分たちの地位は永遠に安泰だったからだ。それは今で言うところの「ベーシックインカム」に近い。

これはもちろんローマ帝国の財政を蝕んでいく元凶と化した。しかし、ローマ市民は膨れ上がる財政赤字にも危機感を抱かなかった。「パンとサーカス」で忙しくて、誰も国がどうなるのか考えていなかったからである。

支配者が与えてくれた「パンとサーカス」で、完全に人間としての資質を台なしにされてしまっていた。もはや、食べて、遊んで、セックスに狂って、寝ることくらいしか関心がなくなっていたのだ。

結局、どうなったのか。

強大だったはずのローマ帝国は没落して東から台頭してきたオスマン帝国に占領され、国は分裂し、贅沢三昧は吹き飛び、栄華もすべて消え去って歴史の藻屑と化した。何もかもなくなった。

オスマン帝国は武装集団だった。自ら馬に乗って戦い、ローマ帝国の領土をどんどん侵食していった。ローマ帝国の兵士は傭兵だったが、傭兵は金で雇われているので形成が不利になったらすぐに戦場を放棄して逃げる。自国の防衛を傭兵で固めたローマ帝国が勝てるはずもない。

支配者層が国民の歓心を得るために「パンとサーカス」を与え、それを支えるために財政赤字が膨らみ、労働や防衛という大切なものも他にアウトソーシングするようになったら、もうその国は終わりだということになる。

労働を避け、遊ぶことしか考えず、ベーシックインカムみたいなもので国から養ってもらうのが当たり前みたいな考え方をし、労働みたいなものは他所から連れてきた奴隷(移民)にやらせる。

ローマ帝国はそれをやって国を滅ぼした。

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国民を馬鹿に仕立て上げる

国民が政府の与えてくれる福祉に寄りかかり、政府が国民の人生の「揺りかごから墓場まで」面倒を見るようになって衰退していく例は「7つの海を支配した」と言われる強大な大英帝国も同様だ。

支配者層は自分たちの権力基盤を強化するために、「国民の歓心を得て、同時に政治を忘れさせる」という方策を取る必要がある。そのために何が効果的なのかは、すでにローマ帝国が手本を示している。

国民には「たらふく食わせ、娯楽を与える」ことで自分たちの支配基盤を高めるのである。

これを「衆愚政策」という。

為政者にとっては、自分たちの権力や政治に目を光らせて不正や汚職を批判してくる「聡明な国民」は邪魔なだけである。政治に関心を持って、不正を許さない反骨精神を持った市民は脅威なのだ。

だから、自分たちの権力を維持するためには「国民が馬鹿な方が都合がよい」という発想になる。自分たちに刃向かわないように働かなくても飢え死にしないようにして、後は娯楽で腑抜けにさせていく。

この発想に基づいて、国民を「積極的に馬鹿に仕立て上げる」のが衆愚政策だった。馬鹿は統治しやすい。そういう意味だったのである。

人間は時に気晴らしが必要だし、たまには暴飲暴食もしたくなれば、おいしいものも食べたくなる。しかし、連日連夜のようにグルメにうつつ抜かし、娯楽にまみれていると、それが人間の資質を破壊してしまうのはよく知られている。

さらに働かなくても福祉やらベーシックインカムなんかで食べていけるというのであれば、なおさら人間が駄目になる。

ローマ帝国は為政者が国民の歓心を買うためにそれをやったのだが、馬鹿げたことに大英帝国もまた最終的には同じことをやって国を衰退させた。

働かないで、何でもかんでも国に面倒を見てもらう「怠けた国民、だらけた国民」を増やすことによって国は滅びていった。

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愚かさが忍び寄って操られる

ろくに仕事をせず、娯楽ばかり追い求め、生活も社会保障もみんな国におんぶに抱っこで自分は何もしない。為政者も国民が政治に不満を持って暴動やら抗議を起こさないようにひたすら国民を甘やかす。

だから、帝国の国民は衆愚主義に染まって堕落する。衆愚の「愚」は、もちろん「愚か」であることを意味している。

「パンとサーカス」を与えるのが衆愚政策であり、それで皮肉にも政治が安定し、文化は爛熟して芸術も花開く。しかし、その爛熟は崩壊の兆しでもある。

では、現代人はローマ帝国やら大英帝国の教訓から学んで「パンとサーカス」にうつつを抜かさない人生を送っているのだろうか。

私たちはグルメだ、遊びだと、騒いでいないだろうか。現代の衆愚政策は「3S」で成し遂げられると言われている。3Sとは「スポーツ、セックス、スクリーン」のことだが、スクリーンというのは「映し出されるもの」の象徴だ。

映し出されるものは、映画であったりテレビであったりゲームであったりスマートフォンだったりするのだが、それはすべてディスプレイやモニターを介して手に入れる娯楽である。

朝から晩までテレビの前に座って痴呆化していく老人を見ても分かる通り、スクリーンは実に強烈な衆愚政策の道具となりやすい。テレビなどはまさに現代のサーカスであるとも言える。私たちはこんなものに溺れていないだろうか。

社会は多くの「パンとサーカス」、すなわち贅沢やら娯楽を提供してくれており、それはとても魅惑的に見えるのかもしれない。自分を夢中にしてくれるかもしれない。

しかし、「パンとサーカス」にどっぷりと溺れて抜けられなくなっていくと、やがては愚かさが忍び寄って操られるだけの人間になっていく。「パンとサーカス」は罪のない顔をしてやってくる。

しかし、それに浸ると、ドラッグ依存症の患者のように人生を破壊されていく。それは、罠だったのである。

日本はどうだろうか。キツい労働は外国人の移民にやらせ、軍事は「戦争反対」とか言ってアメリカにやらせ、自分たちは「政府はベーシックインカムを実現しろ」とか言って娯楽に狂っていないだろうか?

労働は外国人にやらせる。
戦争はアメリカにやらせる。
娯楽は自分が楽しむ。
生活費はベーシックインカムで。

もし、そういう社会を実現しているのであれば、日本の将来はかなり暗いことになるのではないのだろうか?

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