地球沸騰化。今後「米が買えない」レベルを超えた食糧難と食料価格値上げがくる

地球沸騰化。今後「米が買えない」レベルを超えた食糧難と食料価格値上げがくる

今後は「米が買えなかった、米が高い」とか、そんな悠長なことをいっている場合ではないくらいの食糧難と食料価格値上げがくるだろう。下手したら、先進国で餓死する人が続出してもおかしくない事態と化す。私たちは今、それくらいの危機に直面している。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

地球沸騰化。もはや「温暖化」では語れない危機

国連のアントニオ・グテーレス事務総長が「地球沸騰化(global boiling)の時代が到来した」と発言したのた2023年7月のことだった。この言葉は、世界中に衝撃を与えた。もはや「温暖化」という言葉では、地球の危機的状況を表現できなくなったのだ。

その言葉を裏づけるように、2023年も2024年も猛暑の年となった。ヨーロッパでは40度を超える熱波が襲来し、アスファルトが溶け、線路がゆがんだ。アフリカでは50度を超える地域も現れ、多くの人々が熱中症で倒れた。

日本でも35度を超える猛暑日が続き、各地で40度を記録している。熱中症による救急搬送者数が過去最高を記録した。信じられないかもしれないが、このまま推移すると、今後は日本で50度を記録する場所も出てくるだろう。

高温だけが問題ではない。豪雨による洪水、長期の干ばつ、巨大台風の襲来など、極端な気象現象が世界中で頻発している。パキスタンでは2022年に国土の3分の1が水没し、1,730人以上が死亡した。カリフォルニアでは毎年のように大規模な山火事が頻発しており、街全体が焼失するケースも出ている。

これらの異常気象は、もはや「異常」と呼べないほど日常化した。気象庁の定義では、30年に1度の現象を「異常気象」と呼ぶのだが、現在では毎年のように記録的な気象現象が発生しているのだ。

気候変動の脅威は、もはや遠い未来の話ではない。それは今、目の前で起きていることなのだ。最悪なのは、その悪影響が年々深刻化し、私たちは「地球沸騰化」という新たな地獄に突入していくことである。

人類にできることは、おそらく限られている。

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極端な気象現象の頻度や強度が大幅に増加する

気候変動の深刻さを理解するには、具体的な数字を見る必要があるかもしれない。世界気象機関(WMO)の発表によると、2024年における世界の平均気温は観測史上もっとも高いものだった。

日本においても、2024年の年平均気温は統計開始以来もっとも高い値を記録している。具体的には、過去100年あたりで日本の年平均気温は1.30度上昇している。これは世界平均の0.74度を大きく上まわる数字である。

この温度上昇は、一見わずかに思えるかもしれない。しかし、地球全体で考えると、その影響は甚大である。IPCCの報告によると、気温上昇が1.5度を超えると、極端な気象現象の頻度や強度が大幅に増加すると予測されている。

たとえば、10年に一度の「熱波」の発生頻度は、気温上昇が1.5度の場合4.1倍、2.0度の場合5.6倍、4.0度の場合9.4倍に増加すると予測される。

また、気象災害の発生件数も急増している。WMOの報告によると、暴風雨や洪水、干ばつといった気象災害の発生件数は、1970年から2019年の50年間で5倍近くに増加している。

これらの異常気象は、人命にも大きな影響を与えている。2022年には、南アジア及びその周辺で発生した大雨により、合計で4,510人以上が死亡した。日本でも、2022年2月の記録的大雪により、除雪作業中の死亡事故が相次いだ。

気候変動は、自然災害だけでなく、私たちの日常生活にも影響を及ぼしている。気温上昇や干ばつによる食料不足、水資源不足、水産・農業生産減少、生態系への影響、感染症の増加など、その影響は多岐にわたる。

とくに食料生産への影響は深刻だ。2023年は世界各地で異常高温が発生し、その影響で農作物の不作が深刻化した。これにより、食料価格の高騰が世界中で問題となっている。今年も食料価格の値上げが深刻で、日本では米不足も起きた。

米不足の原因はいくつも不運が重なっているのだが、「台風」と「猛暑」も大きな要因であった。地球沸騰化がカタチとして現れているのだ。これは一過性ではない。今後はもっと悪化すると考えたほうがいい。

これらの数字は、気候変動が単なる環境問題ではなく、人類の生存にかかわる重大な問題であることを示している。そして、その影響はすでに私たち日本人の日常生活にも及んでいるのだ。

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経済、社会、政治など、あらゆる分野に悪影響を及ぼす

気候変動の影響は、専門家の予測をはるかに超えるスピードで進行している。その最たる例が、北極圏の氷の融解である。

北極圏の海氷面積は、1979年の観測開始以来、急速に縮小している。2012年9月には観測史上最小を記録し、その後も回復の兆しは見られない。この海氷の減少は、単に北極圏の生態系を破壊するだけでなく、地球全体の気候システムに大きな影響を与えている。

海氷の減少は、アルベド効果(太陽光の反射率)を低下させ、さらなる温暖化を加速させる。また、永久凍土の融解によってメタンガスが大量に放出され、温室効果をさらに増大させている。これが、気候変動を加速度的に進行させる要因ともなる。

さらに、気候変動は予期せぬ形で私たちの生活に影響を与えている。たとえば、気温上昇によって感染症を媒介する蚊の生息域が拡大し、マラリアやデング熱などの熱帯病が温帯地域でも発生するようになっている。

また、海水温の上昇は、台風の強大化をもたらしている。2023年には、日本近海で観測史上もっとも高い海面水温が記録された。これにより、台風がより強力になり、被害が甚大化する傾向にある。

気候変動は、生態系にも深刻な影響を与えている。サンゴ礁の白化現象は年々深刻化しており、世界遺産にも登録されているグレートバリアリーフでは、サンゴの半分以上が死滅した。

さらに、気候変動は社会的な問題も引き起こしている。干ばつや洪水による農業被害は、食料価格の高騰を招き、とくに発展途上国の貧困層に深刻な影響を与えている。また、「気候難民」と呼ばれる、気候変動の影響で住む場所を追われる人々も増加しているのだ。

これらの問題は、単に環境の問題ではなく、経済、社会、政治など、あらゆる分野に影響を及ぼす複合的な問題となっている。そして、その悪影響は予測を超えるスピードで拡大しているのだ。

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けっして遠い未来の話ではないのが恐ろしい

気候変動の影響は、今後さらに深刻化することが予測されている。IPCCの最新の報告書によると、現在のペースで温室効果ガスの排出が続けば、21世紀末までに地球の平均気温は最大4.8度上昇する可能性がある。

この温度上昇は、私たちの想像を超える影響をもたらす。海面上昇により、世界の沿岸都市の多くが水没の危機に直面する。すでにバングラデシュでは国土の沈没が深刻な問題となっているのだが、今後は国土の17%が水没し、2,000万人以上が住む場所を失うと予測されている。

また、極端な気象現象はさらに頻発し、強大化する。熱波の発生頻度は現在の9倍以上になり、干ばつや豪雨の頻度も大幅に増加する。これにより、農業生産は大きな打撃を受け、世界的な食料危機が発生する可能性がある。

生態系への影響も深刻化する。現在のペースで温暖化が進めば、地球上の生物種の最大40%が絶滅の危機に瀕する可能性がある。これは、地球の生態系全体のバランスを崩し、予測不可能な連鎖反応を引き起こす。

気候変動は、人類の健康にも直接的な影響を与える。熱中症や感染症の増加、大気汚染の悪化などにより、世界中で数百万人の命が失われるだろう。とくに、高齢者や子供、慢性疾患を持つ人々など、脆弱な立場にある人々への影響が懸念されている。

さらに、気候変動は社会的な不安定さをもたらす。水や食料をめぐる紛争が増加し、気候難民の数も爆発的に増加する。これにより、国際社会の安定が脅かされる可能性がある。

経済的な影響も甚大となる。世界銀行の報告によると、気候変動対策がうまく機能しなかった場合、2050年までに世界のGDPは最大20%減少する可能性があるという。これは、世界大恐慌以来最大の経済危機をもたらす可能性がある。

これらの予測は、けっして遠い未来の話ではないのが恐ろしい。すでに、その兆候は世界中で見られている。今年観測された記録的な高温や、頻発する異常気象は、まさにその予兆である。

気候変動は、もはや「環境問題」の枠を超えた、私たちの存続にかかわる重大な危機となっている。今後は「米が買えなかった、米が高い」とか、そんな悠長なことをいっている場合ではないくらいの食糧難と食料価格の値上げがくるだろう。

下手したら日本でも、食料が買えず、食料が手に入らず、餓死する人が続出してもおかしくない事態と化す。私たちは今、それくらいの危機に直面し、過酷な未来に向かっているのだが、これを理解している日本人があまりいないのが奇妙ではある。

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