無能な政治で「貧困化させられる」社会になったので考えなければならないこと

無能な政治で「貧困化させられる」社会になったので考えなければならないこと

貧困は静かに人々の人生を破壊する「がん」のような存在でもある。悪いことに、今の日本では慢性的に貧困が広がり、経済格差が拡大していこうとしている。社会の分断も進む。無能な国会議員に期待しても助けてくれない。彼らが国民を貧困化している元凶なので期待するだけ無駄だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

人口にして約1930万人が相対的貧困の社会

日本の相対的貧困率は2021年の段階で15.4%となっている。相対的貧困とは、国民の所得を順に並べた際の中央値の半分未満の所得で生活する状態を指す。​2021年の貧困線は年収127万円であり、これを下回る所得の世帯が相対的貧困に該当する。

15.4%を人口に換算すると、約1930万人が相対的貧困であるということになる。これはG7でも最悪の状況である。相対的貧困に陥りやすいのが65歳以上のひとり暮らしの女性と、ひとり親世帯である。

65歳以上のひとり暮らしの女性は44.1%、ひとり親世帯は44.5%が相対的貧困となっている。つまり、ひとり親世帯の子供は、2人に1人が貧困にある。

ひとり親といえば死別もあるのだが、ほとんどは離婚だ。その中で、母親に引き取られた子供が貧困化しやすい。母親が就労していたとしても非正規雇用である割合が高く、収入が不安定かつ低水準であることが多いからだ。

保育所や学童保育の不足、長時間労働との両立困難などから、フルタイムで働けない事情も多い。さらに、父親からの養育費の支払いが実際には履行されていないケースが多く、制度的な強制力も弱い。

行政支援も十分とは言いがたい。シングルマザーの中には、住宅や教育、医療など基本的な生活費の確保すら困難な家庭も存在する。こうした状況が、母子家庭の子供の貧困リスクを高めている。

べつに、こうした事実は最近わかったわけではない。もう10年も20年も前からわかっている。にもかかわらず、日本社会はまったく何の対策も取らないまま、困窮する母子家庭を放置してきたのだ。

貧困家庭で育った子供は、そうでない家庭の子供と比べて、IQ(知能指数)や言語能力、空間認識、記憶力、認知制御、短期記憶などの認知機能が低い傾向があることが、複数の研究で明らかにされている。全員がそうだというわけではないが、そうなりやりやすい。

つまり、貧困であるがゆえに知的能力を上げることができないという問題はたしかに存在する。

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約7人に1人の子供が貧しい状態で暮らしている

貧困はただ「生活するためのカネがない」というだけではない。適切な食事や住まい、医療を受けられないなど、必要な教育など、人間に必要な基本的なものが満たされない状態になる。その結果として認知能力や非認知能力の低下につながるのだ。

貧困の中で、情報を得ることが制限されたりすることもあれば、自分の能力を伸ばしたり社会に参加したりする機会も失う。そして、それが長く続くと、社会から取り残されていくことになる。

厚生労働省がおこなった調査で、日本の子供の約7人に1人の子供が貧しい状態で暮らしているとされている。

そうした貧困の子供たちが増えれば、当然のことながら国の中から将来の優秀な頭脳が消失してしまう。そして、いったんそうした社会になれば、貧困が次の世代にも続いていく「貧困の連鎖」も生まれてくる。

今の日本で子供の貧困率が上がっていることや、教育の格差が広がっていることは、将来に大きな禍根を残すことになるだろう。

本来であれば、政治によってこうした貧困を断ち切り、国が経済成長していけるようにリーダーシップが発揮されなければならない。

ところが今の国会議員は、30年以上も日本を停滞させて浮上させることすらもできない無能な人間の集まりなので何も期待することはできない。先進国の中で、日本は一番精彩を欠いている。

貧困は知的レベルを下げるリスクが高い。そして、知的レベルが下がると現代社会では貧困になる確率も高い。つまり、貧困と知的レベルは、負のスパイラルを形成する関係にある。

もちろん、貧困であっても驚異的な知的能力を発揮する子供もいたりする。それはそれで素晴らしいことだ。だが、大半の子供はきちんと教育で伸ばせば伸びる素地があっても、それが貧困で伸ばせないと能力は眠ったままとなる。

それが長期的に続くともう能力そのものが退化して消えてしまう。使っていない筋肉が退化したら消えてなくなるように、知的能力も磨かれないで放置されると消えて発揮できなくなる。貧困が、それをもたらす。

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慢性的なストレスや不安、うつ状態のリスク

個人の自尊心や社会的つながりにも悪影響を及ぼし、精神的な健康の問題にもつながりかねない。なぜ、貧困が最終的に精神の健康を害するのかは、すでに答えが出されている。

貧困状態にある人は、周囲と自分を比較して「自分はだめな人間だ」「経済的にも社会的にも人間的にも劣っている」「価値がない」と感じやすく、自己肯定感や自尊心が低下しやすい。

経済的な制約から社会的な活動への参加が難しくなり、人間関係が希薄になりやすい。そうすると、慢性的なストレスや不安、うつ状態のリスクが高まる。それが、精神的な問題へとつながっていくのだ。

寿命の格差すらもある。貧困層は、健康的な食事や十分な医療へのアクセスが制限されるので当然かもしれない。日本国内でも、所得の低い層ほど平均寿命が短いことが厚生労働省の統計などで示されている。

医師に聞いた話だが、貧困層は糖尿病や心臓病の兆候を身体の異変で感じても、完全に手遅れになるまで病院には来ないのだという。なぜなら、医療費のほうが心配で、カネがかかるなら放置してやり過ごすことを選択するからだ。

冠動脈が狭窄して破れるかどうかの瀬戸際で痛みに苦しんで救急車がきても「カネがないから病院に連れて行かないでくれ」と言う人もいるのだという。病気が治っても生活費もないので、そのまま死んだ方がマシだと思うのだろうか。

貧困は静かに人々の人生を破壊する「がん」のような存在でもある。

悪いことに、今の日本では慢性的に貧困が広がり、経済格差が拡大していこうとしている。今の傾向が続けば、貧困層と富裕層の差はさらに広がり、社会の分断が進む可能性がある。

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すでに「その段階」を過ぎたのかもしれない

労働環境は悪化していく。すでに今の日本では、非正規雇用の増加と実質賃金の低迷により、働いていても生活が成り立たない若者の姿が定着しつつある。最近は物価が異様に上昇しているのだが、賃金はそれに追いついていない。

一方で、富裕層は資産運用や事業所得を通じて資産をさらに拡大させており、彼らの子供は高水準の教育や医療を受け、国際的な競争にも対応できる環境にある。資産がある人間は、ますます資産を増やせるし、配当も手に入れることができるので生活は余裕だ。

困窮していく貧困層と、その上で別世界の生活をするごく少数の富裕層。

まさに分断された日本である。このような状況が続けば、貧困層は努力しても報われないという絶望感に支配され、社会への信頼や連帯感は失われていく。もう、すでにその段階を過ぎたのかもしれない。

今、若者たちが闇バイトに吸い寄せられているのだが、普通の日雇いで一日必死で働いて1万円と、闇バイトで強盗で1回で50万円から100万円と言われたら、ハイリスクを取ろうと思う若者が出てきても不思議ではない。

「金持ちはうまくやってるのに、自分は最底辺に蹴落とされて這い上がれない」という屈折した気持ちがあったら、イチかバチかの気持ちにもなる。

治安の悪化や政治的不信が深まり、ポピュリズムや極端な思想が支持を集める土壌も生まれるだろう。社会全体が分断され、互いの生活を理解し合えない断絶した国へと進んでしまう。

こうした分断は、社会の裏側で静かに進む。ただ日々の不安と不平等の中でゆっくりと、だが確実に進行している。未来の日本が不信と憎悪に満ちた閉塞社会へと変貌することは、けっして空想ではなく、すでに予兆を見せている現実でもある。

「日本が不信と憎悪に満ちた閉塞社会になる」というのは、私にとっては意外なことではない。意外どころか、「こうなるのだろう」と思っていたことが次々と現実化して答え合わせを見ているような気持ちだ。

私は今の日本に何も期待していない。社会はもっと悪化すると思っている。そのため、これからは無能な国会議員どもに道連れにされないように、いかに自己防衛するのかに焦点を移している。

無能な政治家によって「貧困化させられる」社会なのだから、すべての日本人はそうすべきであると思っている。

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